表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
竜の少女  作者: よる
第三章 生きること
43/59

恋の駆け引き

でも聞いた女たちは途端に揃って首を傾げている。

「・・・いいつけを守らなかったことから、ガーレルを傷付けたことから、全部・・・」

「傷付いた、誰が?」

「怪我をしたのは、ネーザリンネと、あなたでしょ。あ、ああ。あれのこと?あんなの黒竜さま、自分で食い千切ったんだし、傷的に全然たいしたことないじゃない、もう治っちゃっているわよ」

呆れたように言われたが、アドリィは心配になっている。

「わたしのこと、怒っているのかも・・・」

「だから、なんでよ。あなたが怒るのはわかるけど、黒竜さまが怒ることって何よ、無いわよ?」

「・・・ガーレルを食べた・・・」

「あなた、考え方おかしいわね。食べたじゃない、食べさせられたの」

「そうそう。食べたなんて言ったら反対に怒るんじゃない、何様のつもりだって。あれは黒竜さまが、あなたに自分の体を食べさせた。・・・でも、なぜかしら、ね。罰なんて、馬鹿なこと言わないでね、自分の身を削って罰なんてーーー」

普通はしないけれど、黒竜さまだとよくわからないわねと自信が無くなり眉を顰めたディーメイアなので、言葉が途切れた。

でも普通は罰のために、幾ら黒竜でも、自身の血肉を与えようとは思わないと感じる。

それは馬鹿げたタイプの男の酔狂、それとも黒竜らしい狂気なのかしらともちらっと考えた。

破滅が進んでいるのか?

でも違うと感じた。

ディーメネイアはガーレルの意図をぼんやり理解していた。

この天恵という弱い竜を助けたいと思ってのことなのだろう。

とても小さい女の子。

この子を黒竜は大切にしている。

己の体を与えても、生かし、育てたいのだろう。

でもそれはいったい、何。

同情ーーー冗談!

やっぱり、一つ切りのはずだ。これはーーー。

「うふふふっ。黒竜さまって、やっぱり黒竜さまなのね」

どこか狂っているのかも。

ディーメイアもさすがにそこまでは言葉にはしなかったけれど、ネーザリンネとキリングもほぼ同じことを感じていた。

わざわざそんな相手を選ばなくても。

道のりは、あるのだろうか・・・。あるとしてもかなり険しいわね・・・。

「応援するわよ」

アドリィは驚いて見上げると、三人の女たちは笑顔を浮かべていた。

「敵ではないのですもの」

「面白そうだもの」

ネーザリンネは、一番大きくて一番優しそうな女の人だった。

「いい。あなたが卑屈になる必要はないのよ。黒竜さまの方に非があるわ」

キリングは真ん中に立つ少し控えめな感じの人だった。

「胸を張ってなさいよ。余計に小さく見えるわよ」

ディーメイアは、一番小柄だけど一番激しいことを口にする、力強くてどきどきする人。

「あなたの黒竜さま取ったりしないから、あなたも蒼竜さまに手を出さないでね。そんなことをするとわたし達、敵になるわよ」

「・・・絶対に、手を出したりしないです・・・」

だけど、アドリィには少し気になることがあった。

「蒼竜さまと、スフィジェとはどういう関係なのですか?」

すると女たちの顔付きががらっと変わった。

「あなたがどうしてそれを聞くの?」

「あなたこそ、スフィジェと何か関係があるの?」

「はっきり言いなさい。そっちが先よ」

敵ではないと言ったばかりの三人の顔がとても険しくなっていてアドリィは怯んでしまう。

「・・・スフィジェはわたしの母です・・・その話をしたとき、蒼竜さまは機嫌を悪くされたから」

答えると、三人は一瞬の目配せで意見を一致させた。

「それは駄目ね。蒼竜さまの前で話題に出さない方がいいことよ」

「なぜ、ですか?」

恐る恐る聞いてみた。

「敵なのよ」

アドリィは驚いて目を見張る。

母が敵だとは。

女たちは苦り切った顔で言う。

「そんな語るのも嫌な話を詳しく聞きたいなんて、言い出さないわよね?」

「はいっ、言いません・・・」

とっさにぶるぶる首を振って辞退した。

怖ろしい話を知ってしまった。顔も余り覚えていない母だけど、蒼竜王と敵対しているような存在だったとは。

シルドレイルが自分を見る目が、どこか怖い理由が話たっか気がした。

すべては、アドリィの思い違いであったが・・・。

でもこうして女たち三人は、アドリィが思惑通りに誤解したのを感じた。

けれど、訂正なんかしない。このままでずっと通そうと考えた。

アドリィの大きな勘違いで、事実は全く違う。

詳しく説明していたら、敵というのはシルドレイルでは無く、三人にとっての敵で、命を失った今でも最大の恋敵だということだった。

けれど、女たちは意図的にそこは伏せた。隠したのだ。

シルドレイルが未だに忘れずに思っている、恋しい相手の娘などとアドリィだって聞いても困るだろうし、何より三人はなんだかとても悔しいから。

アドリィはガーレル一筋なのが大きな救いだったが、この話をしていて、シルドレイルの機嫌が悪くなったということは、つまりシルドレイルにとってアドリィは平静でいられない特別な相手だと言うことになる。

腹立たしくて、悲しくて、切なくて、そんな状況に自分が置かれたと考えたら、苦しくなる。

アドリィにとっては眼中にない相手でも、シルドレイルにとってはーーー。

女たちは知っている。シルドレイルにとって、何も終わっていないのだ。

お可哀想なシルドレイルーーー。そしてもっと可哀想な私達・・・。

そう。

これは意地悪ではないはずと考えた。

なぜってアドリィが狙っているのは黒竜なので、シルドレイルの話など知らなくても何ら問題なんて無いはずだからーーー。




第三章終了です。お付き合いありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。



今日もお付き合いいただき、ありがとうございます!(*^_^*)






― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ