真実
「どうしてこの封筒がここにあるの?」
「この封筒は、僕の分なんだ」
「赤車くんに渡した本にはさんでいたのが、君の分だったんだ。」
「僕の分?」
「あれは一体何なの?」
「その封筒の中身はなんなの?」
「まあ、落ち着いてよ。」
「今日、そのことを話そうと思って呼んだんだよ・・・」
「・・・・・」
「赤車くんは、運命って信じる?」
「運命?・・・あまりそんなこと考えたこと無いから・・」
「普通は考えないよね。運命っていうのは、予め決められた事が順番に進むってこと。
言ってみれば、プログラムされたとおりに物事が進むって事なんだ。
今までに、自分の意思と関係なく物事が進むと感じたことは無い?」
「あのとき、こうしていればとか、もし、これをしたらどうなるのか?
とか、考えたことがあるよね?でも実際には、そうやって考えても
実際に起こることが予め決まっているとしたら・・・」
「決まってたら、みんな考えたり、悩んだりしないんじゃ?」
「確かに・・・
もしもだよ。その考えること事態も、もともと決められていて
個人の意思など存在しないとしたら、どうする?」
「そんなこと、ありえないよ。だって、学校でみんなと話したり、
親といろんなことを話したり・・・、悩んだり、考えたりしてるじゃないか?」
「それは、赤車くんのことだよね?」
「もし、周りはそうでなかったら、どうするんだい?」
「ん~、そこまで考えたこと無いし・・・
それと、運命とどう関係あるの?」
あきらくんは、おもむろに赤い封筒を手にとって
封を破った・・・
中からは、CDのようなメディアが1枚覗いていた。
「このディスクを見れば、何が起こっているのかわかると思うよ。」
あきらくんは、破った封筒を僕に手渡した。
「これを、どうするの?」
と、聞き返すのと同じくらいに、あきらくんは、パソコンの電源を入れていた。
「パソコンが立ち上がったら、そのディスクを入れてみて。」
チチチ・・・ パソコンが起動してきた。
画面は真っ黒で、ログイン画面のようなものが表示されている。
「さぁ、ディスクを!」
「うっ、うん。」
ディスクをパソコンにセットすると、自動的にログイン処理のようなものが進みだした。
しばらくすると、画面に「Logged in」と表示された。
画面には6つのボタンが表示されて、それぞれにマークのようなものが表示されていた。
あきらくんは、人が2人重なっているようなマークのボタンをクリックした。
画面は一瞬真っ白になり、次の瞬間真っ黒の画面になって
白文字で、ずらずらっと文字が流れていった・・・。
白文字の中にところどころ、赤い文字で表示されている部分がある・・。
その中に、自分の名前もあった。
「ぼっ、僕の名前があるじゃないか。」
よく見てみると、白文字でかかれているところ以外は
僕や、あきらくん、後数名の名前だけだった。
「これって、一体?」
「このデータは、アカシックプログラムといって、ここで、起こりえるすべてが書いているんだ。
運命って言うのは、必然で、このプログラムによって制御されているんだ。」
「赤い文字の名前は、コーダーといって、このプログラムを作成、改編できる者。
白い文字の名前は、プログラムで動いているだけの、意思を持たない物なんだ。」
「僕たちは、意思を持つコーダーっていうことなんだよ。」
「でっ、でも、僕たちって・・
僕はそんな風に何かを作ったりしたことなんて、一度も無いし
それに、意思を持たない物って言っても・・・学校の友達や、家族もそうだってことなの?」
「両親がいて、僕が生まれて・・・ やっぱり、そんなの、おかしいよ。」
「それは、アカシックプログラム、この世界ではアカシックレコードって呼ばれている、
仮想空間のルールが、その記憶そのものも書き換えてしまっているのかもしれない。」
「かっ、仮想空間? って、一体どういうことなの?」
「うーん。」
あきらくんは、大きくため息をついて
「本当に記憶を無くしているんだね。」
と、ちいさく呟いた。