復元
「あのコメント、これにコピーしてるんだ」
佐竹と僕は、妙に興奮して
「召二さすが。さすがだ。」と肩をたたいていた。
佐竹は学校のPCでは、同じことがあるといけないから召二の家で見ようということを言い出した。
召二も、二つ返事でOKしたので、その日は、召二の自宅に行くことになった。
召二の家はとてもでかい、庭付きの豪邸だった。
両親は旅行中のため、執事のような人と、お手伝いさんたちが出迎えてくれた。
佐竹は僕に
「召二って、金持ちだったんだ」
と口をこぼした。
召二は、僕たちを自分の部屋に連れて行ってくれた。
部屋に入ると、そこはまるでホテルの一室のように煌びやかで、召二のイメージから想像がつかない絵画などが飾ってあった。
「召二って、絵好きなんだ」
僕は、自然と質問していた。
「親が、ミケランジェロや、レオナルドダビンチが好きで勝手に飾ってるのさ」
「落ち着かないから、嫌なんだけどね」
召二は、そう話しながらパソコンの電源を入れていた。
パソコンが立ち上がる間に僕は、佐竹に話しかけていた
「あのさ、あの赤い封筒のことだけど」
「赤い封筒?」
「ほら、本に挟まっていた赤い封筒だよ」
「何の本だ?」
「BASICの黒い本」
「あの本なら部室にあるだろ?」
最初はからかっているかと思っていたが、こんなやり取りの中で
佐竹は、赤い封筒のことを完全に覚えていないのだと感じた。
自動車と接触した際に、直前の記憶が飛んでしまったのだろうと、そのときは思っていた。
そうこうしているうちに、召二が
「じゃーん、USB挿入します」
と、手を上げて振り返った。
佐竹と僕は
「おおー」と小さく歓声をあげた。
USBを挿すと、テキストデータであのメッセージのファイルが保管されていた。
デスクトップ上に、そのファイルをコピーして、内容を開いてみた。
あと、6名の名前が未来の日付で残っていた。
死亡 4月29日 竹中 文江
死亡 5月 2日 伊藤 猛
死亡 5月 7日 滝 守
死亡 5月 9日 鷹野 安恵
死亡 5月18日 松代 孝次
転落 5月20日 田村 祥子