捜索と模索
沙耶
「なんだか…そばに居ると怖い…。」
女子生徒A
「うそ、マジで?」
沙耶
「けどね、私はそばに居たい。そう思っているの。」
女子生徒B
「もしかして…、佳山君のこと好きなの?」
沙耶
「そんなんじゃないよ!」
まさか…こんな事になるなんて…。
隆一
「…それじゃ。」
隆一は玄関を開けて外に出て行った。
私は追いかけようとしたが、閉まる扉の音が私を拒んでいるかのように聞こえた。
沙耶
「違う…、違うのに…。」
その場に座り込み、涙が流れた。
沙耶
「私はただ…。」
隆一はたぶん、話の途中までしか聞いてない。なら…。
沙耶
「探さなきゃ!」
私は隆一を追いかけた。
隆一
「ここかな?」
俺は女の子が最後にカメラに写っていた場所に来た。
隆一
「確かこの路地裏に入って、行方不明になったんだよな。」
いくら監視体制がよくてもカメラには死角がある。
その一つが路地裏。ここにはカメラが設置されていない。けど代わりに警備ロボットが巡回しているが、巡回ルートは決まっているとクラスの誰かが言っていた。
隆一
「とりあえず行くか。」
俺は路地裏に入り女の子を探した。
隆一
「うわ…。」
少し奥の方に行くと、壁の至るところに落書きがしてあった。
俺は警備ロボットを警戒しつつ捜索を続けた。
隆一
「…あれは?」
名札のような物が落ちていた。
隆一
「…『羽鳥雪』」
俺は先生から渡された、女の子の簡単なプロフィールを見た。
隆一
「間違いないようだな。」
俺は周りを見渡し、怪しい所を探した。
隆一
「この壁…偽物だな。」
触った感触が他の壁とは違い、それに押したら動いた。
隆一
「この中か?」
俺は警戒しつつ中に入り、スタンロッドを手に持った。
隆一
「…眩しい。」
少し奥に進と明かりが一気に点灯して、目が眩んだ。
隆一
「!!」
目がだんだん慣れて、視界が鮮明になると、目の前に女の子が倒れていた。
容姿や背中のリュックサックで羽鳥雪、本人だとわかった。
隆一
「おい!大丈夫か!?」
どうやら彼女は外傷は無いが、気絶しているようだ。
???
「よぉ、兄ちゃんよ〜。ここは立ち入り禁止だぜ〜。」
俺は周りを見た。
隆一
「囲まれてる…。」
人数は四人、しかも手に持っているのは…。
隆一
「…そっちの武器で来るか…。」
ストライクの武器を全員持っていた。
いくら傷が出来ないとはいえ、当たれば痛いし、痛みで気絶することもある。
隆一
「…セットアップ。…断刀、絶ち姫。」
不良A
「こいつ一人で武器を出しやがった。」
不良B
「関係ねぇー。ヤッちまえー。」
四方向から同時に来た。俺は女の子を抱え、正面の不良を斬った。
不良A
「ぐぁぁぁー。」
不良を武器ごと斬って、彼女を奥に置いた。
不良C
「なんだアイツ…、強いぞ。」
不良D
「ま、マグレだ。ほら行くぞ!」
前から3人来た。
俺は端の一人を斬ったが…。
隆一
「…あれ?」
普通に武器で防がれた。
咄嗟に後ろにステップして後退した。
隆一
「…何でだ?」
最初は一撃で武器ごと斬れたのに、二回目からはそれが無い。
俺は絶ち姫を見た。
隆一
「まさか…。」
絶ち姫の刀身に最初はあった線が短くなっていた。
俺は端の一人に連続で攻撃した。
不良B
「舐めるなー。」
反撃されたが、武器で防ぎつつ後退、絶ち姫を確認した。
隆一
「…やっぱり。」
刀身の線は最初と同じ長さに戻っていた。
俺はこの状態で再び端の一人を斬った。
不良B
「な!?ぐぁぁぁ。」
こんどは武器ごと斬れた。すぐに刀身を見ると線が完全に消えていた。
俺は絶ち姫の能力を理解した。おそらく刀身の線はゲージのようなもので、ゲージが溜まると、一撃で相手を倒せるのだろう。
俺は残り2人も同じように連撃して、ゲージが溜まると一撃で倒した。
隆一
「さてと今のうちに…。」
俺は女の子を抱えて、その場から離れた。
女の子
「あれ…私…。」
隆一
「お、気がついたか?」
俺は女の子を公園まで運び、ベンチに寝かせていた。
女の子
「!、あの人たちは!」
急に周りを警戒しだした。あの人たちとは、たぶん路地裏の不良たちのことだろう。
隆一
「まだ気絶してると思うよ。」
女の子
「あ、そうですか…。ところであなたは誰ですか?」
隆一
「先生に依頼されて君を助けた、一般生徒。」
女の子
「あ、そうですか…、ってそうじゃなくて名前です。」
隆一
「俺は佳山隆一、覚えなくてもいいから。」
女の子
「佳山隆一さん…。私は羽鳥雪です。気軽に雪とか雪ちゃんって呼んで下さい。」
隆一
「ところで羽鳥さんは…。」
雪
「雪。」
隆一
「羽鳥は…」
雪
「雪ちゃんです。」
隆一
「…雪は何で路地裏に居たんだ?」
雪の顔が一気に明るくなった。意外と頑固なのかもしれない。
雪
「それはですね。あの路地裏を抜けると寮が近いからです。」
隆一
「…二度とあの路地裏を通るなよ。また不良どもに襲われるかもしれないからな。」
雪
「いえ、もう使う理由も無くなりました。」
隆一
「え?」
雪が近づいて、俺のブレスレットのクリスタルに自分のネックレスのクリスタルを当てた。
雪
「これから宜しくお願いします。」
隆一
「マジかよ…。」
沙耶
「あ!いたーー!!」
隆一
「え?ぬわ!?」
雪と自分の部屋に帰る途中、沙耶がいきなり飛んできた。俺は耐えきれず、地面に倒された。
沙耶
「やっと見つけた。探したんだから!」
隆一
「え?いや俺は…。」
沙耶
「私はね、隆一の側に居たいの!」
隆一
「え?えぇぇ!!」
沙耶からいきなり告白された…。
沙耶
「あ、こここ告白じゃないんだから!幼馴染みとして側に居たいだけだからね!勘違いしないでよ!」
隆一
「…そうなんだ。」
残念なのか安心したのかよくわからん。
雪
「あわあわあわあわあわ…。」
隆一
「どうした雪?顔を真っ赤にして?」
雪は顔を真っ赤にして、固まっていた。
雪
「あ!隆一さんから離れて下さい!」
顔は真っ赤のままだが、雪は正常に戻った。
沙耶
「ねぇ隆一、誰?あの子?」
俺の両肩を押さえていた沙耶の両手が俺の首に移動した。
隆一
「ちょ、答える前に死ぬ…、ぐぁぁー。」
俺はそのまま気を失った。
雪
「キャー!隆一さん!」
急いで隆一さんの上に乗っていた女の人を横から押して、呼吸を確認した。
雪
「息が無い…。こうゆうときは…、そうだ人工呼吸!」
女の人
「な!それなら私がやるから、あなたはしなくていいわよ!」
雪
「何言ってるんですか!あなたが隆一さんを殺しかけたんですよ!ここは隆一さんの武器として、隆一さんの為にやるんです!」
女の人
「な!?私だって隆一の武器なのよ!」
雪
「けどあなたは隆一さんを殺しかけたんですよ!信用できません!」
隆一
「…げほ!げほ!!」
雪
「隆一さん!」
女の人
「隆一!」
隆一
「…何?」
雪
「誰ですか?この人!」
女の人
「この子誰?」
隆一
「え?」
隆一
「…と言うことだ。2人ともわかった?」
雪
「わかりました。」
沙耶
「わかった。」
俺は自分の部屋に戻り、2人に説明と互いに自己紹介をさせた。
隆一
「とりあえず飯を作るから待ってろ。」
沙耶
「わかった。」
雪
「あ、私も手伝います。」
沙耶
「あんた料理できるの?」
雪
「何言っているんですか?女として当然じゃないですか。」
沙耶
「隆一!私も手伝う!」
隆一
「断る!」
沙耶
「何で?」
隆一
「材料が無駄になる。」
沙耶
「わかった。」
食費だけで家計に余裕はないのに、沙耶に料理させたらさらに家計は苦しくなる。
雪
「林さんは料理が出来ないんですか?」
隆一
「壊滅的な味のする料理を量産するだけだ。」
沙耶
「悪かったわね!」
沙耶はスネてテレビを見始めた。
俺と雪は料理を仕上げて、沙耶と食べた。