遠退く存在
懐かしい光景。
懐かしい2人。
今、俺の目の前には子供の頃の俺と沙耶がいた。
直ぐに夢だとわかった。
隆一
「けど、これって…」
思い出は思い出だけど、これは俺の思い出では無い。たぶん沙耶の思い出だ。
隆一
「……今のは…。」
俺は起き上がり、頭を抱えた。
資料に載っていたから知っていたが、今の夢はシンクロの副産物。
隆一
「ってことは…。」
沙耶も俺の中で一番強い思い出を見ているはず。
けど当の本人はまだ寝てるし…。
時計を見ると、朝の6時50分だった。
二度寝したら確実にダメな時間だ。
俺はそのままベットから立ち上がり、洗面台に向かった。
冷水で顔を洗い、眠気を無くしてから朝食の準備をした。と言っても食材の買い足しはしてないし、元からあった食材は沙耶によって廃棄処分することになったから正直何もない。
ただトーストとジャムはある。けっしてトーストにジャムを塗って、口にくわえて学校に向かう途中の角でぶつかる…とゆう展開は期待してない。
俺はトーストにジャムを塗って普通に食べた。
学校に行く途中に少女とぶつかることは当然無く、普通に登校した。
そう言えば沙耶の様子が変だったな。起きてから一度も俺を見ようとしなかったし、話し掛けても返事がおかしかった。
学校では授業はもちろんある。けど午前中だけ。あとはストライクのパートナー探しか自主練のどっちか。俺は自主練をしようとしたが、沙耶が拒んだ。理由は教えてもらえなかった。
そんな日が数日続き、貯めていたマナが食費で無くなり、食材も尽きたとき、俺は聞いてしまった。沙耶がクラスの女子と話してる内容を…。
女子A
「林さんさ…佳山君と組んでるけど、正直どう思っているの?」
沙耶
「ん〜と、最初は楽しかったよ…、…けど、今はどうかな…。」
女子B
「なにそれ?はっきりしたら?」
沙耶
「なんだか、そばにいると怖い…。」
俺はその場から走って逃げた。沙耶のここ数日様子がおかしかったのは、俺のことが怖かったからと今確信した。けど、沙耶がいないとストライクの試合に出れない。試合に出ないとマナが稼げない。
依頼をするにしても食い繋ぎにすらなら無いものしか回されないと思う。
隆一
「…沙耶、俺何かしたっけ?」
相手が俺のことを怖がっているなら、無理を言うわけにはいかない。
隆一
「他の人と組むしか…、いや無理だな、俺、そうゆうの苦手だし。」
人が嫌がることはなるべくしない。これが俺の心に決めたこと。
そのせいか、他人から嫌われないが距離はそれなりにある状態にしかならない。
つまり、他人とのコミュニケーション能力が極端に低いのだ。沙耶はまだ無邪気だった頃の友達だから普通に接している。
隆一
「……試してみるか…。」
俺はコロシアムに向かった。
女子A
「ねぇ!林さん!佳山君のパートナーって林さん以外にいたっけ?」
沙耶
「え?いないはずだけど…。」
女子A
「じゃあ何で佳山君が試合場にいるの!?てか何で試合に参加できてるの!?」
沙耶
「え!?わかんないよ…。」
隆一に新しいパートナーとなる武器が出来たら、私にも連絡はあるはず…。
女子A
「とにかく!この画面を見て!」
ストライクの試合は学校からでも簡単に見ることができる。
私は言われた通り、画面を見た。
沙耶
「え…、うそ…。」
試合にこれから出る参加者の名前が表示されていて、そこに隆一の名前があった。
沙耶
「え?何で!」
さらにおかしいのは、隆一のパートナーの名前が無いことだ。そこは空欄になっていた。
司会
「おーと、どうゆうことだ?佳山隆一君、パートナーがいないぞー。」
隆一
「大丈夫です。続けて下さい。」
司会
「いや、続けて下さいって…、ん?え〜と…、OK!それじゃあ試合を開始するぜ〜!レディー…!」
対戦相手はもちろん、観客の人たちも動揺している。理由は今、俺にはパートナーがいないからだ。
本来ストライクは2人一組でしかできない。けど、俺なら一人で2人分の役割を果たせる。
隆一
「セットアップ!」
ブレスレットを着けている右手を前に出すと、ネックレスのクリスタルと反応して光り、光が収まると格好は制服のままだが、右手には黒く歪な形をした剣を握っていた。
隆一
「…断刀、絶ち姫。」
頭に浮かんだ言葉をそねまま言ってしまった…。
司会
「ゴー!!!」
開始の合図と共に、相手に接近して、横に一振りした。一振りだけした…はず。
当然相手はガードしているが…。
対戦相手
「嘘だろおい…。」
相手が持っていた武器は二つに割れていて、なおかつ相手のライフはゼロになっていた。
まさしく一瞬でこの試合は終わった。
隆一
「ただいま〜。」
俺は買い物袋を持った状態で自分の部屋に戻った。
ソファーには沙耶が座っていたが、無視して買ってきた食材を冷蔵庫に詰めた。
沙耶
「…ねぇ隆一、何でパートナー無しに武器を出せるの?」
突然沙耶が聞いてきた。
俺は首に架けていたネックレスを外し、沙耶に投げた。
沙耶
「イタッ!…ってネックレス?え!」
ネックレスについているクリスタルを見て沙耶は驚いていた。
隆一
「…とゆうことだ。」
俺は沙耶からネックレスを取り上げて、つけ直した。
沙耶
「…じゃあ、何で私に黙って試合に出たの?」
隆一
「お前が嫌がると思ったから。」
沙耶
「何で!」
沙耶は勢いよく立ち上がり、俺の近くに来た。表情は怒っているように見えた。
隆一
「何でって…、沙耶は俺のことが怖いんだろ。」
思わず冷蔵庫の扉を力まかせに閉めた。
沙耶
「え…それは…。」
隆一
「ここ数日、俺と距離をとっていたみたいだし、それに…すまん、お前がクラスの女子と話ているのを聞いた。」
沙耶
「えっ!…それは…」
隆一
「すまんな。気づいてやれなくて…、それじゃ。」
俺は玄関の扉を開けて、外に出た。
沙耶
「…違う、違うのに…。」
沙耶の言葉は俺に届くことはなかった。
部屋を出た俺は学校に戻り、依頼を取った。
依頼内容は人探し、依頼人は先生。行方不明の生徒を探し出して、保護しなければいけない。
隆一
「これは出来れば使いたくないな…。」
もしものときの護身用として、先生からスタンロッドを渡された。スイッチ一つで、刀身に電流で流れる代物だ。
隆一
「で、この子が行方不明の…。」
写真を取り出し、確認した。
容姿は幼く見え、特徴が背中のリュックサック、小顔で目が大きい、っとこんなところかな?
隆一
「さっそく調べるか。」
最後に目撃された場所に向かって走った。