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9話 暇人間の考察…

 いやぁ~イヌワシとの旅は思った以上に快適な旅になり、最初はシャボン玉が爪で割れそうで気が気でなかったのに、一旦大丈夫だって認識出来れば突風で上下に煽られることは無いわ、一定のスピードで飛んでくれるわ…シャボン玉の感触は高級ソファ並みに快適だわで…





 ……爆睡してました。




 誰かに見られたら、どこぞの鳥獣愛護団体に訴えられそうなほどイヌワシだけに労働を強いているという何たる状況。


 どれぐらい寝てたのか…腕時計を見てびっくりした。


 「げっ!3時間も寝てた」


 疲労困憊だったと言い訳は通じるだろうか?それにしても3時間飛びっぱなしのイヌワシ…


 「………イヌワシ。ありがとう…」


 けっして口の涎をぬぐいながら言う言葉ではないかもしれないが、感謝の気持ちは多大にあるのだよ…多分


 「ぎゃ?ぎゃぎゃ~♪」


 せめてもの救いはイヌワシがご機嫌そうに飛んでいることだけだろう…たまに口から火が出てるのは愛嬌で受け入れていいのか?


 

 「…ところでこれってどこに向かって飛んでるの?」


 聞いて普通に返事が返ってくるわけはないけれど…言葉喋れないし。でも聞いちゃうのは沈黙がなんというか耐えられないというか…


 「ぎゃ!ぎゃ〜!」


 うん…聞いたあたしが悪かったから、こっちに向けて火を吐くのはやめて。シャボン玉で守られてるとはいえ、視覚的に怖いから


 …でもなんだろ?今までの鳴き方と違ってる気がする。


 「…目的地は近い…の?」

 「ぎゃお〜♪」


 …正解らしい。


 「…ま、あの寝室じゃなかったらどこでもいいよ。」


 …殺されかけるのは二度とゴメンだしね。しいて言うなら生活水準がちょっとでも高いところが希望だけど…贅沢は言えない


 「…それでも、生活水準が中世とかはゴメンだな〜」


 いや…元世界のライトノベルではよくある定番じゃない?異世界トリップしました…中世の生活水準でした!みたいな…そこから主人公が現代知識を使ってのし上がる!みたいな…高校生の現代知識なんてもので変えられるその異世界の方があたしにはびっくりだ。少なくともあたしはここの生活水準が中世であったとしてもそれを変えれるような知識はないし、「郷に入れば郷に従え」だと思うんで全力で馴染みますよ!


 …うん?「長い物には巻かれろ」だろって?……汚れた大人ですから。


 「睡眠不足、解消されると、暇ばかり……字余り」


 それにしても、こんな下らない俳句もどきをしてしまうほど暇だ。


 …そして暇になると考えてしまうのは、自分の境遇と後ろ向き事なばかりで生産性がゼロな事ばっかで……

 

 「ダメだ。現状を把握してみよう…」


 まず…この世界はあたしが居た世界ではない…次元的な意味でも。こんな魔法世界は机上の空論どころか単なるあははっうふふっの空想の世界であったはずのレベル。

 つまり元世界で参考になるような文献が……ライトノベル。



 …悲し過ぎる。帰れそうな気がしない。


 「ダメだ!後向きに考えちゃ!」


 少なくとも……ライトノベルの知識のお陰で魔法は使える気がする…少なくとも火は作れる………今後の応用を考えても出来れば水が欲しかった。水があれば生き残る希望があるけど火だけあっても人間死んじゃうよ。


 「………」


 ……ココロが重傷だ。


 「おぉ〜い。イヌワシ…このままじゃ私のメンタルはズタボロなんだけど…目的地はまだかい?」

 「ぎゃ?」


 イヌワシよ…何が?みたいな視線でも…メンタルはごりごり削られるんだよ?




 「ぎゃぁぁぁ!!」

 「なにっ!?」


 

 突然のイヌワシの咆哮があたりに響き渡った。

 そして気がついたら、今まで視界に無かったものでシャボン玉が囲われてた…


 「何なの…これ?」


 地上からまっすぐに何本も伸びるそれは光が反射してきらめいている。


 「…こおり?」


 氷柱にまるで檻のように囲われてる……地上に人が居て話が出来るとしても、悪い事もしてないのにこんな捕縛みたいなやり方をするのはどうかと思う。…うん、シャボン玉が怪しいのはこの際置いとこう。


 「……イヌワシお願いがあるんだけど、これ炎で溶かせる?」

 「ぎゃう〜♪」


 イヌワシはあたしの願いを聞いて大きく胸に息を吸い込んだ……


 「いや…そんなに息溜め込まなくても……」

 「がぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


 イヌワシの口から……火炎放射もビックリの火柱が放たれる



 「ちょっっ!!イヌワシ!!!っあぁぁっつぅぅぅ!!!」





 …鳥脳に願い事を頼む時は充分に注意しましょう。

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