23話 魔石を作ろう!
…さっきの鑑定内容からして、この魔石は多分まだ地球でいう石みたいな不純物や他の色々な物が混じってる状態なんだよね。なので不純物を取り除いて、それぞれ単体化するともっと純度の高いイグニスの魔石という物が出来るんではないだろうか…と…推測だけは出来るんだけど…
「出来るかなぁ…」
でも鑑定的には不純物は無さそうだったから……それぞれを結晶化するだけでいいのかな?
「でもそれよりも先に……イグニスって火の力だよね…暴発が怖い」
これが出来なきゃ実験も出来ない…さて出来るだろうか?この世界では魔法っぽい行為が魔式と言うそうなので………厨二病全開!
「魔式発動…自身中心基点よりx軸2M、y軸2M、z軸2Mの座標空間・絶対不可侵領域を展開。設置外面、絶空気膜を形成し、外部と遮断」
あたしは今自分がいる空間の自由になる広さを大体目算して、出来るかどうかわかんない防御壁っぽい物を展開してみる。
「おぉぉ出来た」
遮断と言った瞬間に、なんとなく自分の居る空間が別の物に変わった感じがわかった。
「けど……一気に疲れた」
疲労がかなり蓄積された気がするから……これは大層な魔式なのかもしれない。
それにしても、絶対不可侵領域なんていうアバウトな物言いでも対応してくれるんだね…この世界。
「では実験開始ー!」
久々の研究という案件に切羽詰った状況だけど、ちょっとワクワクする。手の中にある魔石をちょっと掲げて、魔法使いっぽくするのが厨二病っぽいとか突っ込まないように…
「魔式展開、触れる対象……イグニスだけ抽出せよ……」
おぉぉぉぉぉ…………お?
目の前に赤い流動体のウネウネした物が浮かんでいる。手の中の魔石が空中に浮かんだのかと思いきや、手の中にはしっかり魔石らしきものがあり、その上部に魔石よりも2周りほど小さい円形を保って赤い流動体が存在している。
「…つまり抽出が成功したのかな?」
それにしても……こんな液状の物をオーブンに填められるはずはなく……
「えーーーっと……さてどうしよう?」
なるほどなるほど…イグニスの力だけを抽出すると昨日あたしが鹿に蹴り落とされた場所のような液状=不安定物質になるわけだな……魔石が色々な力を有してたおかげで固形化してたんだねー多分。
液状を固体化させる方法…つまりこのイグニスの液状物体を結晶化、つまり安定させる必要があるわけで、新たな外部からの力を与えて結晶化させるという方法があるけど…どの物質がイグニスの力を結晶化するかもわかんないし……いつかは研究してみたいけど、今は時間がないので無理……
「魔式でどの程度の事が出来るのかなぁ」
作業的には、簡単に言うとイグニスの核を作って…結晶構造を確立して……結晶成長させるっていう実に単純っぽい作業だけど、イグニスの核を作る為に必要な基本構造があたしにはわからないので難しい。
さっき鑑定結果にも構造式までは載ってなかったし…ふむ。
「ま……ちょっとやってみようか」
出来るかどうかはわからないけど、とにかく今出来る事を精一杯やってみよう。
「魔式展開、浮遊体イグニスに照準……結晶化第一段階、イグニス中心部に核を発現」
おぉぉー何かいい感じにイグニスの中心部が渦を巻きだしたよ……ただほんとにこれがいい具合なんだろうか…ちょっと不安だけども…
よし次の段階だ…
「魔式展開、イグニス中心部、核により結晶構造を構築、核を支配的位置に置き、成長させよ、っいたい!!」
この魔式を言った途端頭にピキンと痛みが走った。一瞬あたしの力不足かと思ったけど…目の前のイグニスは何の変化も見せておらず……どうやらあたしの魔式が弾かれたみたい。
「えぇーこの頭痛結構痛い……魔式が失敗した時のバックトラップ的な物なのかー。核形成が出来て…結晶構造を作れないわけないし……結晶成長も出来ると思うんだけど……」
とりあえず……今言った魔式を頭の中で復唱してみる。すると一つ目の魔式を考え終えた段階で目の前のイグニスがまた渦を巻きだした。
「あわわっ!!!!無詠唱とか……今いらない!!詠唱キャンセル!!!!」
核が形成される前に詠唱がキャンセルされたようで、渦は一つのままで済んだ。
「怖いわー。これじゃ下手に魔式の考え事とか出来ないじゃん」
うむむ……
「魔式構築…新たな構築がされるまで魔式は口語のみ展開される」
多分これで大丈夫な……はず……




