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19話 うましっ!!

途中からメルフォス視点です。


案内された部屋は広さ的には8畳ぐらいのベッドとちょっとした応接家具のある部屋だった。「好きなところに座っていいよ」と言われて応接家具のソファに座った。メルフォスさんは一度部屋から出て行くと大きなトレイを持って戻ってきた。


「わぁ~」


トレイからテーブルにどんどん移されていく料理と飲み物に思わず声が出てしまった。


「あの玉の中にどれぐらいいたのかわからないけど、食事もまともにとれてなかったんじゃないかと思ってね」


メルフォスさん貴方はあたしの神様です。さっきのお腹の音はあたしじゃないけれど、この世界に来てからまともなご飯食べてなくてホントは倒れそうなぐらいお腹空いてたんです!


「さ、ライザが用意したうち自慢の食事だよ。どうぞ召し上がれ」

「い、い、いただきます」


特にマナー的な事を言われる環境ではなさそうだけど、やっぱりなんとなくメイン料理よりは前菜みたいな物から食してしまう。


「おっおっおっおいしぃぃぃぃです」


驚くぐらいすごい美味しい。前菜の魚?のマリネの味付けが酸味と塩加減が絶妙すぎて涙が出そう。前菜だけをずっと食べ続けても全然大丈夫…むしろそれをお願いしたいぐらいだ……だけど悲しい事に一皿分をすぐに食べ終わってしまう……。


「はぅぅぅぅ」


他の料理があるのにこれをお替わりとかは失礼すぎて出来ない。なんて考えてたあたしをぶっ飛ばしたいぐらい全部の料理がミラクルに美味しかった。


「ぐふ…ご、ご馳走様でした」

「いやぁ~お腹空いてたんだね。見事な食べっぷりでライザも喜ぶよ」


メルフォスさん……お腹いっぱいで上手く喋れません。でもね心の中で言わせて貰うと確かに今空腹でしたけど、お腹空いてなくてもこの料理ならぺろっと完食してしまいますよ……ぽっこりお腹にカロリーの心配は今更やってきてますけど……


「じゃあ、紅茶を飲みながらいくつか質問いていいかな?」


はいと返事したいのに……どうしよう。満腹すぎて思考回路が正常に働きません……脳は睡眠という即時休息を求めているようです。ま、まぶたが……


「………アサ?」

「メルフォスさ……ん。すみま……せ……」


あたしは言葉を全部喋る前に視界がブラックアウトした………あぁ…紅茶が飲みたかった。



◇◆sideメルフォス◆◇


「……アサ?」


ソファの背もたれに凭れてた状態からコロンと横になったアサのまぶたはすでに完全に閉じていて、穏やかな寝息が聞こえてきた。


「うん……まさか目の前で寝てしまうとは思わなかった」


精神的には大人のような考え方が出来るアサだけど、成人しているようには見えない顔に幼さの残る彼女。何か事情があったとはいえ、あの玉のような拘束魔法で捕らえられてどこかから逃げ出してきたのだと思うと、子供にそのような無体をした者に怒りがわいてくる。


アサは話し方やマナーを見ても多分どこかの国の上流階級に属しているのだろう。食事も無造作に置いてみたがきちんと前菜から食べていた……。アサの食事方法を見て涙が出そうだった……貴族の食事からしたら多少華やかさが見劣りする料理(愛しのライザの味が負けるわけがない)にもきちんとフォークナイフを使いこなし、一品一品に感動していた様子と手足のありえない細さからまともな食事をとっていなかったようだと推測出来る。


「……こんな子供になんて酷い事を」


食後すぐ眠ってしまったのも張り詰めた緊張の糸が解けたせいだろう……気持ちよさそうに寝ているアサをベッドに移そうか思案している時に軽く扉がノックされてすぐ開いた。


「あんた…紅茶持ってき…おや?寝ちゃったのかい?」


ライザが頼んでいた食後の紅茶を持ってきてくれたようだったが、言葉の途中でアサの様子に気づいて声の音量を落としてくれた。


「食事を食べてすぐにね……すごくライザの料理を喜んでいたよ」

「へぇ~いいとこのお嬢のお口に合うか心配だったけど杞憂だったみたいだね」

「ライザの食事に勝る食事なんてないさ……それに胃に優しい料理にしてくれただろう?」


ライザが視線を僕から避けて誤魔化すのを見て苦笑がもれる。


「それにしてもソファなんかじゃ疲れがとれるわけないよっ。さっさとベッドに運んでおやりよっ!」


そう言いながらライザがベッドの上掛けを捲ってくれる。


「ライザ…ありがとう」


いつも愛しているが、こんな時はいい嫁を貰ったと実感する。そっとアサをソファから抱えあげるとあの量の食事をしたのに、抱えたその軽さに驚いてしまう。


「………軽すぎる」

「……あんた」


ライザも長い付き合いから僕が何に驚いたか察してくれたんだろう……少し目元を潤ませながらアサの頭をそっと撫でた。


アサの眠りが深いのか自分達を信用してくれているのか、動かしても起きる気配もなくベッドに下ろすと自分達に背中を向けるように寝返りをうった。


「あんた……この子どうするんだい?」

「………本人から事情を聞いてみないとなんとも言えないけど、少なくとも元いた場所に無理に帰そうとは思わないんだ」


そう言った瞬間のライザの表情がわかりやすく喜んでいた。


「ならっ!うちの子になるって選択肢も考えといておくれっ!」


…突然旦那が連れてきた素性もわからない女の子に対してこの行動はどうなんだろう?とライザの危機管理をちょっと心配しないでもないが……ライザの直感はギフトかと思われるぐらい優れているのでライザの選択肢も頭の中に入れておく。


「アサ………ゆっくり休みなさい。スリーピング・メロディ」


出来れば悪夢は見ないように……子供にかけるおまじないのような魔式をアサにかけてライザと部屋を後にした。



昨日の更新がなかったのでちょっとだけ長め

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