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18話 初めまして

フォーリさんはあたしから何かを食し、『後でね~♪』とご機嫌に消えてくれた。…特に食べられた?後も自身の体調に変化なく……


「……何食べたの?」


謎は謎のまま、後で会った時に聞くしかない。


「アサ?もう祈りはいいのかな?」

「あっ!!すみません……あたしの故郷では立派な木はご神木といって神さまに通ずる木なものですから…」


…嘘も方便。あの精霊が神さまだとは言いがたいけれど、メルフォスさんも奥さんも嬉しそうなので良しとしよう。


「あんた見た目あるね!この木が気に入ったからここに宿を建てたんだよ!」


そう…元の世界で大黒柱というと加工された木材を思い浮かべるけど、このお宿の大黒柱はまんま木なのである。上手く木を内装に取り入れて自然な感じのロビーにしてるのだ。外装だけじゃ木が生い茂っててわからなかったけど…外から見えた木がまさか庭木じゃなくて屋内から煙突のように屋根を突き破ってるなんて普通思わないよね。


「…はい。いい木ですね…」


…あの精霊がそんないいものかどうかは全くもって別の話だけれど。


「さて!じゃあ今度こそ部屋に行こうか」

「あ、はい」

「あんた、鍵だよ」

「ライザありがとう」


どうやら奥さんはライザさんと言うらしい…そういえば精霊の鑑定をした時に概要にライザのお宿大黒柱の精霊とか載ってたのを思い出した。


…それにしても、この世界では自己紹介とか無いんだろうか?宿で出会った人全部名前も予測でしかないし、相手を紹介してもらえないから自己紹介する機会も無いんですけど……礼儀を重んじる日本人として、非常に気持ち悪いのでとりあえず…


「初めまして安佐水あさみず 日和ひよりです。突然お邪魔してご迷惑をおかけしてすみません」


といって頭を下げる。菓子折りが無いのが申し訳ないぐらい…


「おや…まぁご丁寧に……ありがとね。あたしはそこのヒョロい男の嫁でこの宿のオーナーのライザだよ。色々事情はありそうだけど、ゆっくりしてきな」

「ライザさん……ありがとうございます」


挨拶も終わったしメルフォスさんについて行こうと思ったら、そのメルフォスさんが受付に持たれて苦笑してる。


「……?」

「アサは……上流家庭で育ったみたいだねぇ」


……まぁ家は開業医だし貧乏では無かったけど、そんな上流家庭と言われるような由緒正しい華族とかでは無い…あくまで普通の一般家庭だと認識してるのだけど……


「えっと……ごく一般家庭で育ったんですが……」

「へぇ……それならばご両親がよほどしっかりとされてるご家庭なんだろうね。普通宿に来てそんな低姿勢で挨拶するお客なんていないよ」

「あ…でもあたし…お客ってわけじゃないですし…」


うん、客なんて名乗る事の出来ない無一文です。いや、日本円は持ってるけど使えるとは思えないからね。


「うん…まぁ詳しくは部屋で聞くね。じゃあ行こうか」


メルフォスさんが受付奥にあった階段へ向って進んでいく。


う~ん。日常的な事も色々取り違えられて受け入れられそうなこの世界であたしはどうやって生きていけばいいのか…

思わず考えこんでいたら、メルフォスさんが階段前で振り返って「アサ?ついてきてね」と言われてしまった。


「あっ!はい」


自分でも未だ信じられない異世界トリップを…どうやって説明すればいいのか……前途多難である。

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