14話 町?…いえ村でした。
「わ~すごいっ!」
鰈のギューゼルさんに乗って10分ほどで着いた町は…想像通りというか予想を裏切るというか……いろいろカルチャーショックを受けそうな感じ。
まず町の入口には強そうなおっさんが3人も立ってこちらを威圧してきた気がするし…旅人らしき集団はそこで止められて一人になにやらチェックを受けてるようだった。
まぁ、メルフォスさんは顔パスなのかスルーで通りぬけてたけど…
そして町の中は…まるで東南アジアの国のような露天商が賑わう活気あふれた場所だった。どうも町の中で乗物らしき物がなくて、みんな徒歩なのもなんだか新鮮だった。
もちろんあたし達も村の外でギューゼルさんから降りて歩いて町を歩いてる。メルフォスさんからはぐれないようにするのが大変なほど人が多い。
「す、すごい人ですね」
「あぁ、今は豊穣祭が近いからね。この近くにイミグレーションがあって、外国からの商人なんかが帝都を目指すのにここを中継するんだよ」
「ほぉ…という事はこの町は国境近いんですね…」
イミグレーションとはつまり出入国審査を行う場所で、国境を跨ぐ主要道路なんかには絶対ある施設だったはず……
「そうだね。でもここは町じゃなくて村なんだけどね~」
「え?」
こんなに人が溢れてる村はあたし見たこと無いですけど…
「この人の数は豊穣祭の間の一時的な物なんだよ。外国からの客を狙って国内から商人もかなりの数がこの村に店を出しにくるしね~」
「へぇ~」
「あと10日もすればいつもの静かな村に戻るよ」
…なんだか忙しい時にやってきてしまった。
「すみません。忙しい時期に……なんだかご迷惑を……」
「いやいや、こんな時期だから迷子も犯罪も多いんだよ。それを親元に帰してあげるのも私の仕事だからね」
迷子って……まるで小さな子供のようだけど反論できない今の自分の立場が悲しい。地球の家に帰してもらえるのなら…喜んでお子様になりますけどね……
まぁ犯罪の方は、人が増えると治安が悪くなるのはしょうがないね…あれ?あたしもシャボン玉で捕獲されてたんだからどっちかっていうと迷子より犯罪に関わる方か…
「…すみません」
「心配しなくても大丈夫だよ。一度私の家に行くから軽く事情を聞かせてくれる?」
「はい…」
事情を説明するにあたって、嘘はなるべく少ない方がいいけど……自分自身が把握してない事の方が多い今の状況でどの程度ほんとの話が出来るのか……
異世界トリップが当たり前の世界だったらいいんだけどなぁ~帰るのも簡単に出来そうだし……でも最初の殺されかけた感じでは前途多難な気がする。
「さぁここが私の家だよ」
露天商が並ぶ道からはちょっと離れた場所にある可愛らしい外観の一軒屋?がメルフォスさんが言う自宅だった。
「……ライザの宿?」
立派な門構えに掛けられた看板の文字はもちろん見た事のない文字だったけど……なんでか理解出来た。
「あぁ、私の奥さんがやってる宿場なんだよ。だから奥さんの名前のライザの宿なんだ。そっか、アサはその歳で字が読めるんだね」
はい…読めるみたいですけど…それ以上にメルフォスさんがあたしをいくつだと思っているのかが非常に気になります。
「さ、中に入ろうか」
「はいっ!」
さてここからが正念場。
活かせ自分の営業力!
何としてでも辻褄を合わせて、自分をこの世界に同化させないとっ!