10話 青髪のおじさん?
イヌワシの火柱が炸裂する中、あたしは地上に視線を向けてみたんだけど、そこには人影らしきものはなく…
「…これって罠系?」
氷柱が串刺しみたいな攻撃じゃなくて、囲いになってる時点で捕獲対象になってる事は間違いないと思うんだけど
「…殺されないって感じならその場に留まった方がいいのかも?」
…うぅん。まだこの世界の常識がわからないから対処方法に困る。
「取りあえずこの檻からは出て、何かしらの反応を待った方がいいかな?」
そろそろイヌワシの火柱が氷柱の檻を破壊しそうだし…
「イヌワシ〜!この檻の外でちょっと待機したいから、地上に降りてくれる?」
「ぎゃ〜!」
イヌワシが返事と同時に氷柱の崩壊した所から檻の外に出て、ゆっくりと降下を始めたので、きっと返事は「ラジャー!」みたいな感じだったんだと思う。
***
降下して久々の地上付近に近づいたのはいいんだけど…
「さてさて、ここで問題です。このシャボン玉をどうすればいいのか…」
きっとシャボン玉に干渉した方法で消し去る事はすぐ出来ると思う…ただ改めて作るとなるときっと無理。でもこのままシャボン玉に乗って人を待つのは不審極まりない。
つまり、ここでこの快適な移動手段を捨てるか否か…悩む。
「ぎゃっぎゃっ」
うん…ただ快適さを保つにはイヌワシの協力が絶対条件なんだけどね…
「うぅーーーん。どうしよ」
これで視覚で町なんかが見えればいいんだけど…それらしき物はない。
「…こんなところになんで罠があるのさ?」
一瞬狩り?なんて思ったけど、どう見ても鳥を狩るにしても地の獣を捕獲するにしても氷柱の檻なんて大げさすぎるわ。
用途もわからない罠なのだから、ここに人が来る可能性も少ないかもしれない。捕獲なんだし1週間に1度ぐらいしか見回りに来ないかも…それならまだまだこのシャボン玉で町の近くまでは飛んでいきたい。
「もぅ!!悩むんですけど!!!」
「…お悩み中申し訳ないんだけどね」
「そうなんですよ…悩んで……る」
…会話にあたし以外の声が混じってる。もちろん「ぎゃぎゃ」しか言わないイヌワシな訳がない。
「…え?」
「え?って言われても…ね」
いつのまにかシャボン玉の向こうに青髪の人が見えるんですけど!
「えぇ!?いっ居ませんでしたよね?」
「……?」
地上に降りて来た時点では周りに人なんか居なかったのは確実だし、どっかから現れた様な気配もなかったんですけど!?
すでに彼はシャボン玉のすぐ側に居て、こちらの様子を伺ってるみたいに見える。今の所攻撃をされそうな気配は無いんだけど…
青髪の人に見えないように上空にいるイヌワシに手で下がるように合図をおくる
「ぎゃう」
イヌワシが理解してくれるかは賭けだったけど、青髪の人と30cmなかった間を1mぐらいまで空けてくれたからわかったんだと思う
「…?お嬢ちゃん?」
青髪の人が首を傾げてこちらを見て来たけど、この世界で初対面の人にいきなり気を許せる様な歓迎された事ないんでこれも許して欲しい。
青髪の人も無理に間を詰めるような事はしないでその距離から話しかけてきてくれる
「捕獲されたイグニスのお嬢ちゃん、テリサン村に何か用なのかな?」
ん?捕獲されたお嬢ちゃんっていうのは…あたしの事?
やっぱりこのシャボン玉は捕獲系の魔法なんだろう…
「………」
「あぁ、あの設置魔法が怖かったのかな?怯えなくても大丈夫だよ。君の連れてるイグニスバードが村の魔力探知に引っかかってしまっただけだからね」
魔力探知…イグニスバード……イヌワシ、氷柱はお前のせいだったのか…
突然現れた人に動揺して上手く考えを纏められないし、青髪の人が喋る事を受入れるのでちょっと精一杯かも…
「それにしても小さな子をこんな魔術を使って放置するとは…」
…んん?小さな子?放置?
あたしに聞こえるか聞こえないかの音量で喋られる言葉になにやら誤解が生じてるみたいなんですけど…
「いや…えっとですね」
「もう大丈夫だよ。おじさんが助けてあげるからね」
助けて貰えるのはとてもありがたいのですが…ね。
誤解をどうやって説けばいいのか、お嬢ちゃんから訂正すべきなのか、でもこのまま誤解されて保護された方が命の危険は少ない気がする。
「おじさんには…とても見えません」
ならば…青年に見える彼が自分でおじさんと名乗ってる事を突っ込めばいいのか?
微妙な空気が二人を包んだのだった