↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR

更生した元悪役令嬢の二度目の婚約破棄、なぜか逆ハーレム状態に!?~幼馴染・騎士・文官が証拠を持って乱入、断罪劇は一瞬でざまあに転落に!~

作者: しろ
掲載日:2026/08/30

「フェリシア・オルグレン公爵令嬢」


 謁見の間に、やけに他人行儀な声が響いた。婚約者――第一王子ヴィンセントの声だ。心なしか、震えている。


「本日をもって、私との婚約を破棄させてもらう!」


「.......かしこまりました」


 わたしは即座に頭を下げた。慣れたものである。何せこれで、婚約破棄されるのは人生で二度目だ。一度目は身から出た錆、今回はどうやら違うらしいが。


「え.....ちょま、待ってくれ.......!もう少し、こう……驚いてくれても……」


「あら、驚いておりますわ。殿下がこんなに気まずそうな顔で婚約破棄を言い渡すなんて、初めて見ましたもの」


 正直な感想だった。壇上のヴィンセントは、まるで借りてきた猫のように縮こまっている。台本を読み上げているような棒読み具合で、目も合わせようとしない。


「その、これは私の意思というより……父上と、オルグレン公爵家に対抗したい派閥の方々の……」


「政治のご都合、ということですわね。存じておりますわ」


 三年前のわたしなら、こんな理不尽に黙って頷いたりしなかっただろう。癇癪を起こし、扇を叩き割り、周囲を怒鳴りつけていたに違いない。


 だが今は違う。あの一年間――身分を奪われ、平民として市場で野菜を売っていた日々を思い出す。あの時知った理不尽さに比べれば、今回のことなど可愛いものだ。


「殿下.......婚約破棄の件、謹んでお受けいたします。ただ一つよろしいでしょうか」


「な、なんだ」


「殿下自身は、本当にこの婚約破棄をお望みですの?」


 ヴィンセントは言葉に詰まった。図星のようだ。


「.......っ!? わ、私は……!」


 その時、講堂の扉が勢いよく開いた。


「待った......!」


 現れたのは、見慣れた金髪の青年――幼馴染のオーウェンだった。息を切らして駆け込んでくる姿に、周囲がざわめく。


「オーウェン、あなた息が随分と上がっておりますわよ」


「当たり前だろ! 君が断罪されるって聞いて全力で走ってきたんだから!」


「断罪ではなく婚約破棄ですわ。それに、そんなに慌てて来なくても」


「慌てるに決まってる! 三年前、君が謝罪に土下座しかけた時も、平民時代に大根一本のために殴り合いしかけた時も、僕がいつも止めてきただろ!」


「そ、その話は.....!? ぜ、絶対今する必要なかったですよね!? やめてくださいよ......!!」


 会場が笑いに包まれる。あの頃の黒歴史を蒸し返されて、思わず顔が熱くなった。


「オーウェン殿……!? なぜあなたがここに......」


「僕は彼女の幼馴染ですから。それに殿下、この婚約破棄が政治的な圧力によるものだと、僕は最初から知ってましたよ。あなたの派閥の連中、随分と分かりやすく動いてましたから」


「な……!?」


 さらに扉の外から、鎧の音が近づいてきた。


「フェリシア様!」


 現れたのは、近衛騎士のカイル。無骨な鎧姿で、剣に手をかけたまま駆け込んでくる。


「カイル卿まで……!?」


「殿下.......この婚約破棄、王家として本当に正式な手続きを踏んでいるのですか? 僕が確認した限り、オルグレン公爵家への根回しが一切ありませんでしたが」


「そ、それは……!」


「一年前、身分を隠していた彼女が市場で暴漢に絡まれていたのを助けたのは僕です。あの時、彼女は自分の身分より、隣にいた老婆をかばうことを優先していました」


「え、その話も今する必要ーーー」


「あります。殿下がどれだけ彼女を誤解しているか、はっきりさせておくべきですから」


 会場のざわめきが大きくなる。ヴィンセントは完全に押され気味だった。


 そして最後に、静かな足音とともに、文官服姿の青年が現れた。宮廷書記官のセドリック。眼鏡を押し上げながら、手元の書類に目を落としている。


「セドリック殿まで……」


「殿下......今回の婚約破棄、裏でオルグレン公爵家の領地利権を狙う第三派閥が絡んでいることは、既に調査済みです。証拠書類がここに」


 セドリックが差し出した書類を、ヴィンセントは震える手で受け取った。


「これは……」


「あなたが婚約破棄を強要された経緯、すべて記録に残っています。殿下、あなた自身は本当は何も悪くない。悪いのは、あなたを操ろうとした周囲の大人たちですよ」


「セドリック殿……!」


 会場が完全に静まり返った。三人の男が、それぞれ違う立場から、同じ一人の令嬢を庇っている。壮観と言えば壮観だが、正直こちらとしては少々居心地が悪い。


「あの、皆様......」


 わたしはおずおずと口を挟んだ。


「お気持ちは大変嬉しいのですけれど、三人がかりで庇われますと、なんだか大袈裟な気が……」


「大袈裟なくらいでちょうどいい」


 オーウェンが即答した。


 「君、昔は一人で無双してたんだから、たまには僕らに頼ってくれ」


「昔の話は蒸し返さないでくださいまし……!」


「フェリシア様が困っているんです。三人がかりでも足りないくらいですよ」


 カイルが真顔で言う。


「僕は事実を述べているだけです」セドリックが眼鏡を光らせながら涼しい顔で言った。


 なぜだろう。庇われているはずなのに、じわじわと恥ずかしさが込み上げてくる。


「こほん! .......殿下」


 わたしは仕切り直すように、ヴィンセントに向き直った。


「先ほどのご質問にお答えいたしますわ。殿下ご自身のご意思でないのなら、この婚約破棄、無効にしていただいても構いません。ですが......」


「ですが......?」


「わたくし個人としては、正直この婚約、そろそろ潮時だと思っておりましたの。殿下、いつも書類仕事を後回しにして、わたくしにこっそり肩代わりさせておりましたでしょう」


「そ、それは……!」


「三年間、把握しておりましたわよ。ちなみに肩代わり分の報酬、そろそろ請求させていただきますわ」


 会場から小さな笑いが漏れる。ヴィンセントは真っ赤になって俯いた。


「殿下、これでよろしいかしら? 婚約は解消。ただし、この件を仕組んだ第三派閥については、セドリック殿の証拠を元に正式に処分していただきますわね」


「わ、分かった……いや、分かりました。フェリシア嬢、今まで、その.......本当に、すまなかった」


「あら、素直で結構ですこと。反省なさったなら、次からはご自分の意思で動かれることをお勧めしますわ」


 深々と一礼し、わたしは踵を返す。三人が当然のようについてくる気配がした。


「それにしても......」


 講堂を出たところで、思わずため息をついた。


 「まさか三人揃って飛び込んでくるとは思いませんでしたわ」


「当然だろ?」オーウェンが肩をすくめる。


「当然です!」カイルが真顔で頷く。


「......当然ですね」セドリックが眼鏡を押し上げながら同意する。


 三人揃って同じ言葉を繰り返すその様子に、思わず吹き出してしまった。


「皆様、示し合わせておりませんの?」


「してない」「してません」「していません」


 見事に声が揃った。もはや笑うしかない。


「昔のわたくしが今の状況を見たら、卒倒しますわね。悪役令嬢だった頃、殿方に頭を下げられこそすれ、こんな風に庇われたことなど一度もございませんでしたもの」


「それは君が誰にも頼らせてくれなかったからだろ」


 オーウェンが苦笑する。


「今は違うだろ、フェリシア」


 その一言に、なぜか胸の奥がじんわりと温かくなった。


 ――こうして、二度目の婚約破棄は、思いがけず賑やかな幕引きとなったのだった。


 だが、平穏な日々はそう長くは続かない。第三派閥の処分を巡り、新たな騒動が動き出そうとしていることを、この時のわたしはまだ知らなかった。

 最後まで読んでいただき、ありがとうございます!


 もし少しでもスカッとしたり、ニヤッとしたりしていただけましたら、評価ポイントとブックマークをいただけると、次の話を書く一番の励みになります!


 感想コメントもお待ちしております!

 

 三人とフェリシアの今後など、まだまだ書きたいことがございます。よろしければ作者フォローもしていただけると幸いです!


 それでは、また次のお話でお会いしましょう!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。