日曜日
三題噺もどき―はっぴゃくろくじゅうなな。
日曜日。
うららかな日差し。
ほんの少しの冷たい風。
「……」
暇な休日を過ごすには持ってこいの、いい場所。
人々は手元に夢中になり、周りの事など気にしていない。
時折騒がしい声が聞こえるけれど、それもすべてどうでもいい。
「……」
柔らかな床を歩く、小さな足音。
からからと音を立てながら進むカート。
遠くで聞こえる秒針の刻まれる音。
「……」
紙をめくる音。
本と本がこすれる音。
本がいくつも重なる音。
「……」
なんだかんだ、日曜日に図書館に来たのって久しぶりかもしれない。
学生という立場になってから、学校に図書室というモノがあるから、大抵そこで済ませてしまう。行くとしても、学校の帰りに寄ることが多かったから。
「……」
今日は母の用事で、図書館に来ている。
仕事柄、季節ごとの絵本や紙芝居を図書館に借りくることがたまにあるのだ。
大抵は持っているものをつかうらしいのだけど、たまに大型のものとかを借りに来るのだ。
「……」
その母は別の場所で絵本を探している。
私は生憎、絵本に興味はないので、自分に興味ある本棚の前に立っている。
たまには違うジャンルの物も読んでみたいと思わなくもないが、面白いと分かっているものの方が読みたいと思うのはだれしもそうだと……勝手に思っている。過言かな。
「……」
その本棚の中から手元に引き出したのは、文庫本と呼ばれるサイズの物。
手に収まって、軽くて、立って読んでいても疲れることがない。
もちろん、ハードカバーの物も好きだけれど、読みやすさはこちらが圧倒的な気がする。
今日はどれだけここに入れるか分からないし、借りるかどうかも正直微妙なところなので。ハードカバーまでは見れないだろうな。
「……」
表紙に薔薇のイラストが描かれている。
なんとなくタイトルに惹かれて手にとっては見たものの、どうだろう……あまり絵が好きではないかもしれない。あまりこういう判断はしたくないが、見た目って大事だよね。
「……」
軽くあらすじを読んでみるが……うーん。
花と毒薬、小さな謎と二人の関係……って感じ?
面白そうではあるんだけどなぁ、シリーズ物なのか。
図書室では見たことがないから、そう簡単に読むことは出来なさそうだ。
頻繁に図書館に来るわけでもないので……。
「……、」
あぁでも、そういえば。
この作者の名前に聞き覚えがあると思ったら……あの子が好きだと言っていた本を書いている名前だ。どうりで。
もしかしたら、読んでいるのかもしれない。あの子が。
「……」
そう思うと、俄然興味が湧いてくるあたり、我ながらな感じだが。
一番のおすすめだというモノは読ませてもらったことがあったが、アレは確かに面白かったんだよな。出版社が違うから、表紙は別の人だろう。
「……」
なるほどなるほど。
一巻だけ借りていくのもいいかもしれない……母が借りるかどうか次第でもあるが。
まぁ、自分のカードがあるわけだし、今までどおり帰りに返しにくればいいだけだし。
勉強をするくらいなら本を読んでいた方がましだと思うし。
「……」
一応、これでも受験生の身なのだけど。
今更だが。
進路も何も決まってない……決まっているようで決まっていないと言うか。
もう何もしたいこともないから、推薦でいいところって感じ。
「……」
よし。借りて行こう。
一端2巻くらいで。
母も丁度いいのを見つけたようだ。少々離れた位置で、きょろきょろとしているのが見えた。
「……」
明日、あの子に聞いてみよう。
お題:毒薬・薔薇・図書館




