金木犀の歌
かの有名な人参の丘に飛び立った彼らは
果たして地球の内殻へとたどり着けたのだろうか。
通り雲丹だけが知っている
通り雲丹だけが見ていた
通り雲丹だけが証言者なのだ。
「果たしてそれは事実と言えるのだろうか。今どきの通り雲丹なんて何の意思ももってやしないじゃあないか。
現にここには君と僕としかいない。岩陰に隠れる庭師も、金木犀の帳の裏の縫い目の間の星たちも、オレンジの人差し指だって今や呆けてしまっている。」
どこまでいっても砂しか無い。
立ち止まって
地面を見ると
真っ赤な影が落ちていた。
「おいでなすったな!さぁお立ち会い!西はガンガラ街道から、東はむき出しトンネルまで!ずずずーっとのびたその胴体!このあたくしが、粉微塵にしてみせましょう!!」
「おい!お前ちょっとうるさいぞ!こっちはやっと二人っきりなんだ!邪魔しないでおくれよ!」
「コレだけの観客眼の前に『二人っきり』とは業が深い!」
「お前が叫ぶから灯台に灯がついちまった!」
「あれまぁ。逃げるしか無いのかねぇ。」
「当たり前さ!庭師がやってくる!」
ザンバラザンバラ、ザンバラザンバラ
ザンバラザンバラ、ザンバラザンバラ
「切っても切っても後から後から伸びてくる。全部全部切ってしまいましょうねぇ!」
「もうあんなところまで来ていやがるじゃあないかよ!」
「あれまぁ。お船に乗って逃げましょうねぇ。」
「そうしよう!!」
星星の荒波を手漕ぎボートで変えていった。
森の姿へ変えていった。
森を抜けて、かの有名なうさぎたちが見え始めた頃
ついに船の底が抜けてしまった。
「あれまぁ。やっぱり貰い物の船だねぇ。」
「やいうさぎたち!俺達を匿え!」
「誰?何故??」
「庭師の野郎に追われてる!」
「嫌!!」
「じゃぁさぁ、安全なところは無いかぇ?」
「西!!!」
「西と言えば、あっちだあっちだ!」
「さぁ、飛び出すぞ!!!!」
ざぶんと漕ぎ出した。
「しめた!ここはちょうど滝が逆になってやがる!!
さぁ漕ぎ出すぞ!もっと内側へ!もっと内側へ!」
それにしたってアイツはしつこく追ってきた。
二人は船の縁に掴まり滝を上へと真っ逆さまに落ちていく。
「おい掴まっているか」
「しっかりとつかまっているよぉ」
「はなすんじゃぁねぇぞ」
「わかっているさね。どうしたって話すもんか。」
ザンバラザンバラ、ザンバラザンバラ
ザンバラザンバラ、ザンバラザンバラ
「あいつはどうしたって諦めるつもりがないらしい!」
「こうなりゃやけだよ!アイツにコイツをぶつけてやろうよ!」
「そりゃぁいい!おい!せーので行くぞ、せーのー!」
掛け声とともに船を後ろへとおいやった!
ザンバラザンバラ、ザンバラザンバラ
ザンバラザンバラ、バラバラバラバラ
庭師は船と共に上へと沈んでいった。
「滝壺の少し後ろ、ちょうどそこに金木犀が咲いているはずさね!」
「ちょうどいい!花びら目当てにそこまで、そこまで、そこまでーー!」
金木犀が咲いているよ
小さな花に毒を塗り
小さな花に虫つけて
根本に彼女の乳歯をのせて
おしろいつけた姉さん方の
後ろをテトテト金木犀
気がつきゃ居場所は滝の裏
匂いにつられて男と女
歩く姿が滑稽だ
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