06.その後の二人は
「ユーミラ様、これで準備は整いました」
クマミの声に、ユーミラは振り返る。
彼女とはすっかり仲が良くなり、すでに親友と言える間柄だ。
化粧も盛られた髪も、全部彼女がしてくれた。
「クマミさん、いつもありがとう」
獣人族の王妃の証であるティアラを輝かせながら、ユーミラは立ち上がる。
ベアモンドと結婚し、獣人国で暮らし始めて六年。
オオカミ族とは色々とあったが、人間国と友好協定を結ぶことで彼らも諦め、すっかりおとなしくなった。
クマミとクマオに助けられながら、王子と王子妃として必死に二人で歩んできたのだ。
義妹となるクミンも助けてくれ、ユーミラは獣人国で大変ながらも楽しく暮らしている。
結婚して二年目で女児を、四年目で男児をもうけた。
そして今日は、とうとうユーミラが王妃となる。
そう、つまりベアモンドが、この国の王となるのだ。
人間国とのさらなる交友のために、ベアモンドの即位が妥当だという前王の判断だった。
クマミに促されて部屋を出ると、そこにはベアモンドが二人の子どもを肩に乗せて待っている。
いつも以上の着飾られた姿と、相変わらずの男らしさに、ユーミラはうっとりと愛する夫を見上げた。
「おかあさま、きれー!」
「おかたま、きえいー!」
下の子が、上の子の真似をして太陽のような笑顔を見せてくれる。
ありがとうとお礼を言いながら、もう一度ベアモンドを見上げた。
「ユーミラ……きれいだ」
そう言いながら、ベアモンドの耳がぴょこんと生える。
それだけで気持ちが伝わってきて、ユーミラはふふっと微笑んだ。
「ベアモンド様も素敵です」
「君と結婚できた俺は、世界一の幸せ者だ」
ベアモンドを幸せにしてあげられるのは自分だけだと言い放った、あの日の言葉。
それを実現できたことが、なによりも嬉しい。
「私もベアモンド様と結婚できて、世界一の幸せ者です!」
最高の笑みを見せると、ベアモンドのボタンは今にもはち切れそうで。
「だ、ダメですよ、変身しちゃ!」
「わかっているが……っ! ユーミラがあまりにもかわいすぎて!」
「今まで何着無駄にしたんですか! 怒りますよ!」
「ユーミラは怒ってもかわいい」
「もうっ」
ユーミラがぷくっと口を膨らませた瞬間、服はビリビリと破れ飛んだ。
ベアモンドの戴冠式は大きなクマの姿で、歴代の戴冠式の誰よりも威厳があったと、獣人国で広まっていった。
「もう、職人さんが頑張ってくれてるんですから、二度と破っちゃダメですからね! 服も税金で作られているんですよ!」
「はい……」
そんな夫婦の会話があったことを、国民たちは知らない。
──END──
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