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五十四.火の王との謁見

 勇者グラシャスと聖女マーサ、そして、弓使いのルン。三人の身柄が国へ引き渡された数日後、レイ達は魔族長ブネリ討伐の報告をするため、仲間達と火の国(イグニスフレイア)の中心に位置するイグニシア城へ招かれていた。


 イグニシア城、謁見の間。中央に王様と大臣らしき人物。謁見の間、右側に貴族らしき者達が右腕を心臓の当たりに添えた姿勢で、一列に並んで立っていた。


「わしは、現火の国(イグニスフレイア) 国王。アイゼン・イグニスロード・オリンピアであーる。偉いのであーる」


 自慢の白髭が地面まで伸びている。冠を被り、豪華な宝石が埋め込まれた杖――王笏(おうしゃく)をついた王を前に、皆が(かしず)いている。


「レイ様……なんか近所のおじいちゃんって感じですね……」


「いやアン、これでも王様なんだから、そんな事言ったらだめだぞ」


 下を向いたまま、アンがレイへと小声で話し掛けたため、レイがそれを窘める。


 火の勇者グラシャスが魔族と繋がっていたという、俄かには信じがたい事実。しかし、顔の広い風の勇者リーズが風の王や火の国の冒険者ギルドへ事前に根回しをしていた事と、何よりグラシャス本人が罪を認め、自白した事で、国も重大な事実を認めざるを得なくなったのである。


 水の国の一件で、〝黒の英雄〟という通り名は既に火の国(イグニスフレイア)にも広まっていたらしく、無事にレイ達は火の国の王とも謁見を果たす事となったのだ。


「大臣、進めるのであーる」


 王の合図と共に、一度敬礼した大臣が一歩前へと出る。


「ハッ。〝黒の英雄〟レイよ。報告は聞いた。火の勇者グラシャスに代わり、そなたが魔族長ブネリを討伐したと言うのは本当であるな?」


「ああ。魔族長ブネリは俺がこの手で倒した。グラシャスはブネリと繋がっていた。全て事実だ」


 改めてレイが報告した事により、貴族達からどよめきが起こる。長きに渡り、火の国を苦しめていた魔族長の討伐。それは嬉しいニュースであった。しかし、討伐した者は、突如現れた銀髪の少年。元々火の国の英雄であった勇者ではなかったのだ。


 納得がいかないのか、貴族として招かれていた者の一人から声があがった。


「御言葉ですが、大臣、そして、王よ。こいつが魔族長を殺したという証拠がない。それに、グラシャス殿が魔族長と繋がっていたという証拠もです」


「そうだの。証拠が無ければ罠かもしれぬ。グラシャスに成り代わり、勇者として国家を乗っ取ろうとする、こいつらの謀略かもしれぬぞ」


(どこの国にも自分達の権威と欲にしか目がいかない奴は居るもんだな)


 心の中でそう思いつつ、レイは自身の前に漆黒の渦を顕現させる。渦の中から黒光りする角と鋭い魔族の爪が出現する。 


「証拠ならありますよ?」


 それはレイが戦闘中、闇収納顕現(カオスストレージ)によって収納しておいた魔族長の角と爪だった。脇に控えていた学者らしき男がゆっくりと近づき、虫眼鏡を通して角と爪を見ていく。


「解析してみないと分かりませんが、かつての魔族長の目撃情報と一致する。恐らく魔族四柱(デモンズスクエア)――青龍のブネリ〟魔族長の角と爪で間違いないかと思われます」


 学者の報告を受け、満足そうに頷く王様。


「これで魔族長討伐は証明されたのであーる。そして、魔族長との繋がりも、火の勇者グラシャスとその仲間であるマーサとルン。二人が証言している。これも事実で間違いないな」


「嗚呼。麻薬の密売。奴隷の斡旋。全ては火の勇者グラシャスが密売組織の長であったビーンと共に行って来たこと。ただし、魔族長の闇に彼等は呑まれていた。そして、マーサやルンは利用されていただけ。そこは恩赦してやって欲しい」


 レイの発言に驚いたのはアンだった。レイはアンの気持ちを汲んで、王へ自ら進言したのだ。鋭く真実を見抜く眼光。透き通るような銀髪。死の淵を経験した少年は、以前よりも更に逞しくなっているように見えた。


「それについては此処で判断する訳にはいかないのであーる。後日、査問委員会にかけたあと、決めるのであーる。もちろん、結果はお主へ伝えようぞ」


 貴族社会のこの国で、レイの言葉を譲歩してくれる保証はないが、何も言わないよりは効果的だっただろう。 レイの報告を終え、王が大臣へと告げる。


「〝黒の英雄〟レイ、エルフのアン、風の勇者リーズ、土の勇者ポポロン。此度の活躍、ご苦労であった。本日の報告を受け、褒美については、また改めて伝えるのであーる」


 王が締めの言葉を述べ、王の謁見は無事に終わる事となった。





 この後、レイは火の国(イグニスフレイア)の王より〝黒の英雄〟の称号を認められ、レイ・アーテル卿準男爵位の爵位を与えられる。領地を持つ訳ではないが、国としてレイを認めた形となったのだ。


 グラシャスが闇で繋がっていた組織は全て暴かれ、その恩恵を受けていた一部の貴族も身を潜める事となる。


 レイは報酬により貰った資金で、新たに拠点となる家を構える事にする。今までグラシャスと生活していた家だと、どうしても過去を振り返ってしまうためだ。


「此処は土の勇者、ポポロンの出番だねっ!」


 土精霊ノームの力により、一日で家が完成した日には、レイもアンも唖然としていた。ルシアの転移魔法陣で水の国(アクアブルーム)の別荘と繋ぐ事も忘れない。これで冒険に疲れた時には、別荘の温泉へ入り放題となる訳だ。


「レイ様と温泉入り放題温泉入り放題温泉入り放題……(ぶつぶつ)」


「アン……心の声が表に出ているぞ」


 顔を真っ赤にさせて口角をあげた状態でぶつぶつ呟くエルフの姿に、ある意味恐怖を覚えるリーズなのである。



 そして……。

 レイ達は火の国とある取引(・・・・)を終えた後、マーキュリアの別荘へあの女性二人を呼び出すのだった。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 何とも頼りにならなさそうな王候貴族達だなぁ(笑)
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