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勇者パーティに裏切られ死に追いやられた劣等騎士、精霊の姫に拾われ《最強》騎士に覚醒する  作者: とんこつ毬藻・銀翼のぞみ
第三章 火の勇者 激突編
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四十三.魔族四柱――青龍のブネリ

「くそっ……また計画の練り直しだ……。あの銀髪のガキといい、風の勇者といい……忌々しい!」


 ランプの灯りのみが照らす薄暗く長い回廊。モノクル男が苦虫を嚙み潰したような表情でぶつぶつと呪詛を吐いている。


 クレメール商会のボス――ビーン。火の国(イグニスフレイア)の麻薬密売組織、水の国(アクアブルーム)のクレメール商会、奴隷市場。〝人間の国〟の裏社会を牛耳って来た男は、こうして今日も魔の住まう地へと足を運ぶ。


 扉を開けた先はいつもの部屋。ソファーに座る褐色肌の男――魔族四柱(デモンズスクエア)がひとり、青龍のブネリであった。


「ビーン。何の用だ? 報告にはまだ早い筈だが……?」


「ブネリ殿、緊急事態だ。あのラウムを倒した銀髪のガキと、風の勇者が組んで、エレイネの館を取り押さえた。ロイドは〝魔水牢〟()き。ワタシのクレメール商会へも法王騎士団の潜入捜査が入ってしまった」


「ほぅ、お前はそんな報告のために余の時間を煩わせるつもりか?」


 刹那、部屋の空気が一変する。圧倒的な重圧――頭上から迫り来る深い闇に押し潰されそうな感覚に陥るビーン。重圧に耐えつつ、モノクル男は必死に言葉を紡ぐ。


「ブネリ殿……そうではない。あのレイとかいう銀髪少年は気をつけた方が……」


「余を誰だと思っているのだ」


 全身の孔という孔から雫が滴り落ち、モノクル男は膝から(くずお)れてしまう。ソファーから立ち上がったブネリは、ゆっくりとビーンの傍へ近づく。そして、鋭く尖った爪でモノクル男の顎をあげ、自らの顔を寄せた。


「その脳味噌は老いて腐ったか? 余は魔族四柱(デモンズスクエア)が一人ぞ? お前は何のために此処へ来た?」


「も、申し訳ございません……今後の計画を……報告に参りました!」


「左様か。ではどう立て直すつもりだ?」


「麻薬密売組織を軸に、新たな闇ルートを展開します。グラシャスとの流通ルートや、スラム街、闇なんぞ何処にでも転がっている。ワタシの持つ全てを失った訳ではない。此処から再び闇を牛耳ってみせますぞ!」


 力強く立ち上がるビーン。色んな雫が出たのか、床には水溜まりが出来ている。ブネリから放たれる重圧(プレッシャー)が無くなった事で、少し安堵の表情となるモノクル男。


「そうか。まぁいい。では、もう一つ問おう。お前は何故、余の居場所を敵に教えるよう(・・・・・・・)仕向けたのだ?」


「は? 一体なんのことを?」


 そうビーンが言った時には既に彼の両腕は斬り裂かれていた。自身の両腕が床で踊っている様子を見、切断面から鮮血が飛散したところでようやく叫声をあげる。


「ぎゃあああああああ! ブ、ブネリ殿ぉおおおおお!」


「お前には魔族とは違う香り(・・)がついている。自身についた闇の香りすら分からぬ者が闇を牛耳るだと? (わら)わせる!」


 悶え苦しむビーンの頭を片手で握るブネリ。魔族長の額にあった紋章が妖しく光った瞬間、ビーンのモノクルが割れ、彼の両眼がぐるんと裏返る。


「あが……あがが……あが!」


「心配せずともお前は使ってやる。来客を出迎える駒としてな」


 ブネリがそう告げた瞬間、ビーンの身につけていた燕尾服が破け、肉体が蠢き、隆起していく。腕が六本となり、下半身は爬虫類のような身体へと変化していく。異形となったビーンは激しく咆哮し、そのまま気を失うのだった。


「グレモリー。居るか?」


「ハッ! 此処に」


 ブネリの呼び掛けに刹那顕現するグレモリーと呼ばれた赤髪の女悪魔。


「どうやら、羽虫にこの場所が知られたようだ。久方振りの客だ。歓迎してやれ! こいつは好きに使っていい」


「ハッ! 仰せのままに」


 異形となったビーンと共に姿を消す女悪魔。一人残った部屋で、ブネリは血に染まった色の赤ワインを口に含む。


「サァ、人間よ。せいぜい余を愉しませてくれ」


 これから始まる宴に思いを巡らせ、魔族長は優雅に嗤う――



 ◆◇◆


 ルシアが突き止めた魔族長の拠点は、水の国(アクアブルーム)北、海を隔てた先にある〝魔の大陸〟と呼ばれる場所にあった。


 風の国(ウイングシルビア)で休息を取った後、レイ、アン、リーズ、そして、ポポロンの四人は、銀翼鷲(シルバーイーグル)の背に乗り、高速移動で目的地へと向かっていた。


 高速で飛行する銀色の翼を持った鷲はリーズのペット――銀次郎。魔族長の拠点を目指し、海を越え、風となる。


「ちょっと待って~! 何も見えないよぉ~~!?」


 ポポロンが叫んだ理由はそれまで眼前に広がっていた蒼穹が突如厚い暗雲へと変化したからだった。異変は魔の大陸が近づいて来た時に起きた。船で向かうと海が荒れ、空から攻めた者は消息を絶つ。魔族が住んでいると言われながらも、誰も近づけなかった理由がそこにあった。


「なんだか、嫌な感じがします……」


 まとわりつく空気の重さを感じ、顔を歪めるアン。レイは冷静に周囲を観察する。


【これは魔族の妖気(オーラ)が大気に溢れているわねぇ~】

【ワタクシが風で吹き飛ばしちゃいましょうか?】


 皆の脳裏に闇精霊ルシアと風精霊シルフの声が響く。どうやらこの暗雲は、魔族の妖気に満ちているとの事であった。


「どうするんだ、レイ?」


「皆、大丈夫だ。俺がやる。ルシア!」


【ええ、準備は出来ているわよ】


 レイの呼び掛けと共に、暗黒神魔鎧(ベルゼアーマー)が銀色から漆黒へと変化し、ルシアの闇闘気に覆われていく。そして、新たな武器――暗黒神魔剣(ベルゼブレイド)を立ち込める暗雲へと向け、精霊術(エレメンタルアーツ)を発動する。


「【死属性スキル】――死喰魔装(サクリファイスローブ)!」


 大気を覆う暗雲が、レイが持つ魔剣へと吸い込まれ、漆黒の軽鎧へと取り込まれていく。視界を遮る程の妖気(オーラ)はあっという間に消滅し、やがて、剥き出しの大地がレイ達の眼下へ姿を現した。


「すごいすごい! あれだけの雲が吸い込まれちゃったよ!」


「レイ様、流石です!」


「これくらい、問題ないさ」


 ポポロンがぴょんぴょんと跳ね、アンがレイの姿にうっとりしている。魔を追う冒険者達が辿り着く事の出来なかった地が、今目の前に広がっていた。


「これが、魔の大陸か」


 岩山に囲まれた赤銅色の大地。枯れ果てた植物。やがて、遠く四方を崖に囲まれた場所、魔族長の拠点らしき城が見えて来た。


【見つからない筈だわ。空間転移を使わないとそう簡単には来られないわね】


【結界が張ってあるわよぉ~~どうするの~~?】


 シルフの行った通り、拠点となる城の周囲は結界が張られていた。レイが自身の力で打ち消そうと考えていたその時、彼の左手人差し指に嵌められた指輪が光る。


【レイよ。妾が力を貸しましょう。魔剣へ妾の力を籠めなさい】


「その声は……ウンディーネか! よし、分かった。ウンディーネ、顕現せよ!」


 指輪が蒼く光った瞬間、暗黒神魔剣(ベルゼブレイド)の柄、精霊石を嵌め込むスロットへと蒼色の宝石が移動する。ウンディーネの声がレイへ響き、優しく、穏やかな水闘気(アクアオーラ)が魔剣を包み込む。


【ウンディーネの優しい気持ちが入って来る……ああ……気持ちいい……】


【さぁ、レイ、今です! 言葉を紡いでください】


 脳裏に入って来るウンディーネの意思と共に、レイが言葉を紡ぐ。


精霊術(エレメンタルアーツ)――【死属性スキル】――消滅の霧雨(ディスペルシャワー)!」


 魔力、闘気を喰らう死属性の力と魔を浄化(・・)させる清き水闘気アクアオーラを融合させた新たなスキル。魔の居城を覆う結界へ浄化の雨が降り注ぐ。やがて、結界は光に包まれ消滅し、レイ達は魔族長ブネリの拠点へと降り立つのであった。


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