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勇者パーティに裏切られ死に追いやられた劣等騎士、精霊の姫に拾われ《最強》騎士に覚醒する  作者: とんこつ毬藻・銀翼のぞみ
第ニ章 水の国 ~陰謀編
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三十九.帰還~新たな仲間

「おぉ! 噂の〝黒の英雄〟ご帰還だねぇ~~。うちの弟子たちを助けてくれてありがとねっ!」


 あの後、数日療養し、ようやく完治したレイはアン、リーズと共に土の国(グランディアース)――ポポロンの工房を訪れていた。工房の奥、弟子を救ったレイ達を歓迎するポポロン。


「礼には及ばないさ、ポポロン。いや、その称号で呼ぶのは止めてくれ。むず痒い」


「まぁ、国を救ったんだから、当然の事だろうな」


 頬を掻くレイの肩を軽く叩き、彼を讃える風の勇者(バニーガール)


 療養した後のレイは大忙しだった。何せ拉致されていた兎耳族(バニー)も救出し、水の国(アクアブルーム)に潜んでいた悪まで暴き出したのだ。ポポロンの弟子も救出した事で、風の王、土の王、そして、水の国(アクアブルーム)の教会の頂点を担う法王にまで認められる事となったのだ。


 〝黒の英雄〟という称号はこの三国に認められた証として、レイに与えられた通り名であった。

 三国の国境を無条件で渡れる他、ギルド直営の宿へ自由に宿泊出来るらしい。更に褒美として、風の国と土の国から金貨百枚ずつ。水の国に至っては、金貨五百枚に加え、失脚した大司祭が持っていたマーキュリアの別荘を侍女と温泉つきで丸々与えられる事となる。


「凄いねっそれ! 温泉入り放題じゃん!」


「いやポポロン、普段は水の都(マーキュリア)へ行く事が中々ないからな」


 瞳をキラキラさせるポポロンに苦笑するレイ。


「レイ様と一緒に温泉入り放題入り放題入り放題……(ぶつぶつ)」


 アンはレイの逞しい姿を妄想し、顔を真っ赤にさせて小声で何やら呟いていた。


「ポポロンそういえば、頼んでいた武器、防具は出来たのか?」


「あ、そうだった! ちゃんと出来てるよっ!」


 ポポロンが手を叩くと、彼女の弟子たちが完成した武具を持って来る。(あか)髪のアプリン、栗色髪のマロン、水色髪のドロップ、翠髪のピューマ。自分達を救った英雄の姿を見るなり、武具を持ったまま駆け寄って来る。


「あ、レイお兄ちゃんだぁ~!」


「助けてくれてありがとう~~!」


「ポポロンおねーちゃがこれ作ったの!」


「お、お前を認めた訳じゃねーぞ?」


 レイの周囲を回る弟子達をポポロンが制止し、武具を受け取る。


「こらこら、戯れはあとあと。さぁ、これが完成品だよ。まずはアンの衣装だよっ。風精霊(シルフ)の力を籠めた精魔糸(せいまし)で出来てるんだ。ボクのこの衣装も土精霊(ノーム)の闘気を籠めてるんだけどねっ。まぁ、名づけるなら、歌姫の聖衣(ディーヴァのローブ)かな?」


「ほえ~~凄く綺麗です~~」


 上質で艶やかな白と薄翠色(エメラルド)。肩と果実を覆う美しい刺繍が施された布地。膝まで覆うスカートは、光を乱反射しそうな光沢を放っている。


「あとはこの杖だねっ。先端の精霊石にシルフの力が籠められていて、簡単な回復スキルと風スキルならアンでも発動出来るよっ! こっちは聖風の杖(ブリーズロッド)だね」


【シルフちゃんも、闘気を籠めるお手伝いしたんだよぉ~?】


「あ、ありがとうございます! ポポロンさん! シルフさん」


 ペコリとお辞儀をするアン。姿を現したシルフは上機嫌だ。ポポロンは続けてレイの新しい装備も紹介する。


「それからレイの軽鎧だね。採掘場で採れた精霊石と霊鉱石(ミスリル)を併せて創ってあるよっ」


「これは……思ったより軽いな」


 レイの銀髪と同じ、銀色(シルバー)に輝く軽鎧。ミスリルは魔族に耐性があって、精霊石との相性もいい。精霊石はまだどの精霊の魔力も受けていない純正らしく、闇精霊ルシアの魔力を覆う事で、より強力な漆黒の軽鎧を創る事も可能だとポポロンが補足してくれた。


「確かにこれなら普段は目立たないし、戦闘時は私の闘気(オーラ)がより馴染むわよ?」


 闇精霊ルシアがその場に顕現し、完成度の高い軽鎧を見て満足そうに頷く。


「名づけて暗黒神魔鎧(ベルゼアーマー)だよっ。続けてこっちが剣だね」


 白金(プラチナ)のように美しく輝く刀身。黒い柄には龍の紋章。幅の広い大剣の中央には二つの孔が空いており、手前の孔には紫宝石(アメジスト)のような宝石が嵌め込まれていた。


「かつて闇と混沌を喰らったという黒龍を象ってるんだ。ちなみに白金(プラチナ)じゃなくて神剛石(オリハルコン)を使ってるからね? 威力は本物だよ?」


「この孔には何か宝石を嵌めるのか?」


「よく気づいたねっ。そこへ特殊な精霊石を嵌め込むんだけど、レイが精霊に認められたなら、五色いずれかの石を嵌め込む事で、それぞれの精霊の力を顕現出来る。ルシア用の精霊石はデフォルトだよっ!」


 紅、蒼、翠、黄色、残り四色の精霊石を渡される。火、水、風、土の四大属性という事だろう。


「だが、認められてなければ使えないんだよな?」


「それには心配及ばないよっ?」


「まぁ、ワタクシシルフちゃんはリーズのものだけど、少しくらいなら手伝ってあげられるわよ?」


 シルフはレイの事を認めてくれたらしい。そして、ルシアとシルフの間、刹那、地面から水流が渦を成して巻き上がり、そこへ水色の髪と顔、美しい羽衣を身につけた精霊が顕現するのである。


「お久し振りですね、ルシア、シルフ」


「ウンディーネ、久し振りね。無事に解放されてよかったわ」


「あらー、ウンディーネじゃない? 元気にしてた……って大変だったわよね」


 水精霊は、優しく微笑んだ後、レイへと向き直る。


「レイ、ルシア。改めてお礼を言わせて下さい。あの時妾を助けてくれてありがとうございます」


「いや、俺は当然の事をしたまでだ」


「礼には及ばないわよ」


 水精霊へ恭しく一礼するレイとウンディーネへ手を振るルシア。すると、これまでのやり取りを見ていたポポロンが剣のスロットの件を補足する。


「実はその二つ目(・・・)のスロットは、ウンディーネに言われて急遽追加したのさっ。何せ彼女は今、契約主が居ないからねっ」


「そうか、ロイドから解放されたからか……」


「レイ、単刀直入に言います。あなたが(・・・・)妾の契約主(マスター)となって下さい」


「なっ!? 俺が? だが、俺は既にルシアと契約しているから」


「そうね。普通にひとつとなる事は不可能ね」


 流石に二つの精霊を身体に宿す事は身体が耐えきれないらしい。それでポポロンが用意した精霊石なんだそう。彼女をあの宝石へ宿す事によってルシアと契約しつつも共存が可能となるのだと。


「分かりやすく言えば、側室(・・)みたいなものね。貴族や王族なら一夫多妻(・・・・)は常識だものね」


「側室……っておい!」


「ブフォッ」


「そく……ゴホッゴホッ」


 ルシアのトンデモ発言へレイが冷静な突っ込みを入れている横で、メロンエルフとバニーガールが二名ほど噴き出していた。優しく微笑むウンディーネは慈愛の表情に満ちている。レイが迷う理由はそこにはなかった。


「あなたは世界を救う英雄になれる。妾の力を正しく導いて下さい」


「ああ。わかった。契約しよう」


 蒼色の精霊石へウンディーネの姿が吸い込まれ、精霊石は渦をなし、やがて、指輪として顕現し、彼の左手――人差し指へと納まるのである。


「普段は指輪になるのさ! 彼女へ呼び掛けたなら、魔剣のスロットへ精霊石が移動するよっ! これがボク特製の魔剣――暗黒神魔剣(ベルゼブレイド)さっ!」


 こうして、アンは聖風の杖(ブリーズロッド)歌姫の聖衣(ディーバのローブ)。 

 レイは暗黒神魔剣(ベルゼブレイド)暗黒神魔鎧(ベルゼアーマー)という新たな武具を手に入れる事となる。そして……。


「なんだか照れちゃいますね」


「だな……」


 せっかくなら着てみてよというポポロンの強い希望により、二人共新しい武具を身につける事となる。


「二人共、似合ってるじゃないか」


「すごい、すごい、ボクの見立ては間違いなかったねっ!」


 今までの漆黒の騎士とは正反対のまるで光の戦士。しかし、ルシアの闘気を纏えば魔を断つ漆黒の騎士となるのだ。新たな魔剣は既にレイの腕に馴染んでいた。


「レイ様、カッコイイです~」


「アンも、似合ってるぞ」


 互いに目を逸らす二人。アンはレイのあまりのカッコよさに。レイは、アンの優しい布地に包まれた果実がより強調されている事に気づいたためだった。


「ふふふ……女神の果実(メロン)はやはり目立たせないとでしょ?」


「……否定はしないさ」


 いつの間にかレイの横に居たポポロンが親指を立てて小声でサインを送る。こうして、新装備の披露も終わったところで、ポポロンが場を締めくくる。


「いま、弟子たちが料理も用意しているんだ。今日はゆっくりしていきなよ? あ、それから、準備はしているから、レイ達のパーティにボクも加えてくれないかな?」


「おぉ!」

「それって!」

「いいのか?」


 リーズ、アン、レイが同時にポポロンを見ると、小柄なドワーフは腰に手をあて、軽く飛び跳ねた。


「もちのロンロン! ボクが作った傑作の性能も見ておきたいし! 旅は道連れ、ドワーフは情け、だよっ!」


「頼もしい仲間が増えたな」

「やりましたね、レイ様」

「だな。よろしく頼む、ポポロン」


 風の勇者リーズに続き、土の勇者ポポロンも仲間になる。


 やがて、〝黒の英雄〟の名前は世界を轟かせるコトになり、レイ率いる二人の勇者を含むパーティも、〝黒の救世主達〟という通り名が広まるようになるのだが、それはもう少し先の話である――


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[一言] 側室って…(笑)
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