ニ十九.辿り着いた先は!?
高い空、澄んだ空気。天に向かって伸びる草が微風に揺れる。どうやらレイ達は、どこかの広い平原へ降り立ったらしい。
「ここは……何処だ?」
周囲に魔物や賊の気配はない。警戒にあたっていた精霊陣、ルシアとシルフ。そして、リーズも襲って来る者が居ない事を確認し、警戒を解く。
「どうやら賊は此処へ来て、どこかへ向かったようだな。シルフ」
「はいは~い、ちょっと待ってね~~」
リーズが風精霊の名を呼ぶと、翠色の髪を靡かせ、翠色の風で大事なところを覆ったシルフが顕現し、上空へと舞い上がる。くるりくるりと回転したシルフは高速で移動を開始する。 やがて風となり、周囲を飛行した精霊は、レイ達の下へと帰って来る。
「はい、ここから西へ向かった先に、都市があったわ。聞いて驚くなかれ、そこは間違いなく、水の国の首都――観光都市マーキュリアよ」
「マーキュリアだって?」
土の国から水の国へ……運命の歯車は既に回っているのかもしれない。
「どういう事でしょうか。マーキュリアに魔族が潜んでいるのでしょうか……?」
マーキュリアへ向かう道中、アンが疑問を口にする。なぜドワーフを拉致した連中の移動先が水の国なのか。レイも考えを巡らせていたのだが、彼の仲間である某バニーガールも外套で衣装を隠した状態で何やら考え事をしている様子。
「おい、リーズ」
「ひゃうん!? いきなり呼び掛けるな! 驚くだろう!」
「いや、何か思い当たる節があるんじゃないかと思ってな」
変な声をあげて跳ねる風の勇者。レイの問いかけにようやくリーズが咳払いをして呼吸を整える。
「そうだな。ともかくマーキュリアへついて色々調べてみよう」
どうやらリーズには考えがあるらしい。一行は草原を抜け、マーキュリアへと向かう。
「リーズさん、可愛いです」
「だな」
「か……かわいいだと!?」
アンとレイに可愛いと言われ、兎耳娘の顔が赤く染まった事は言うまでもない。
◆◇◆
水の国の首都――水の都と呼ばれる観光都市マーキュリア。
中央に清き水の流るる運河が流れ、美術館や女神信仰の教会など、立派な建築物も有名な観光都市。ゆったりとした時が流れる運河を渡るゴンドラは、住民の移動手段にも、観光名物にもなっている。
西にはレイの出身地である火の国。東には魔物が蔓延る〝魔の領域〟があり、ちょうど中間地点となるマーキュリアは観光都市としても商業都市としても発展して来た場所となっている。
「レイ様ぁ! 水車ですよー。夕陽が水に反射して綺麗です~」
「だな、アン」
運河の緩やかな流れに回る水車。水面反射する陽光はオレンジ色に煌めき、レイ達を出迎えてくれていた。
「ドワーフ達を追って来たため遅くなってしまったな。あの子達の行方は気になるが、今日は何処か宿に泊まって、明日捜索する事にしよう」
そう提案したのはリーズだ。アンがドワーフの子達の安否を心配するも、リーズは、ポポロンの弟子達があの場で拉致されたとなると、すぐに殺されている可能性は低いと伝える。
レイ達は冒険者ギルド・水の国支部の近くに位置する宿へ泊まる事となる。
宿に併設するレストランにて食事を取る三名。首都マーキュリアの北に位置する港町リファーナで採れた魚と貝をふんだんに使ったシーフードピザとマッシュルームとディーネ貝のオイル煮。この地でしか食べる事の出来ない味を堪能しつつ、明日に備えての作戦会議をしていた。
「はぅう~~、このピザって食べ物、お魚の身がのってて凄く美味しいです~。チーズが伸びます~。このマーキュリア産の白ワインともあいます~」
「アン、明日は本格的に捜索なんだから、あまり飲み過ぎないようにね」
今回は観光で来た訳ではないのだ。いつも飲み過ぎてメロンを押しつけて来るアンへ注意を促すレイ。アンもそのあたりは忘れている訳ではないらしく……。
「わかっていますよ! ドワーフさん達が、心配ですもん」
「明日は手分けして捜索しよう。顔が知られていないレイとアンは冒険者ギルドを当たってくれ。水の都には恐らく水の勇者ロイドも居るだろうから、ギルドで聞けば彼の行方も分かるだろう」
そう進言したのはリーズだ。
「リーズはあの子達の居場所に心当たりがあるのか?」
「いや、居場所までは分からない。だが、あの子達を攫う目的は予想出来る。だからこそ私は明日、外套で身を隠してこの国の闇を探ろうと思う」
商業都市マーキュリアには、ギルドの他に、商人達を束ねる商会もあり、表向きは観光都市の発展に寄与している訳だが、どうやら色々と裏があるらしい。彼女はそこを探るそうだ。
「成程。俺達が表側を探り、リーズが裏側を探るという訳だな」
色々と予測は出来たとしても、攫われた子達の居場所も、敵が何処に潜んでいるかも分からない以上、気をつけて行動しなければならない。こちらの行動がバレてしまえば、あの子達の生命も保証出来なくなってしまう。
「よし、では明日行動開始としよう。何かあればルシアとシルフの意思伝達で連絡を取り合おう」
【ええ、任せといて】
【しょうがないわね、ワタクシ〝シルフちゃん〟の出番って訳ね】
三名の脳内にルシアとシルフの声が響く。こういう時、精霊の力は役に立つものである。
「えへへ~。明日から頑張りましょう~~レイ様~~♡」
「なっ、アン! だから飲み過ぎるなってあれほど……!?」
「お前! えっちぃのは嫌いじゃなかったのか!」
レイの身体にこの後、頬を紅く染めたアンの実った果実による強制メロンダイブが披露された事は言うまでもない ――




