二十六.ロリっ子ドワーフ、ポポロン登場
職人街の外れにあるポポロンの工房はお店とひと続きになっているらしく、武器と防具の看板が掲げられたお店の中へ入ると、珍しい鉱石や精霊石を用いた武器が飾られていた。
「ポポロンは居るか……って、誰も居ないな。店に居ないという事は、やはり奥の工房だろうな」
ポポロンは工房に居るという前情報通り、リーズの呼び掛けに反応がない。それに、店番の者も居ないようだ。
「凄いです~。珍しい武器や防具がいっぱいですねぇ~」
「この剣……ミスリル鉱石と精霊石を錬金している。どれも希少価値の高いものばかりだな」
各精霊の力が籠められた精霊石は、採掘出来る場所も限られている。それをふんだんに使っている時点で、希少かつ強力な剣だと言えるのだ。
細く長い廊下を進んでいくと、洞窟のような場所へ出る。奥から聞こえて来る規則正しい金属を叩くような音。音がする方向へ向かうと、背の低いドワーフの女の子が、ゴーグルをつけた状態でハンマーを持ち、剣を打っていた。
「お、居たぞ。ポポロン! 私だ、リーズだ」
「ん? わぁ、リーズだぁ~! 久しぶりぃ~!」
作業をしていた手を止めたポポロンは、ゴーグルを頭へ乗せたまま立ち上がり、リーズの傍へ駆け寄って来る。 全身褐色肌の可愛らしいドワーフ。濃い茶色の髪の上で二つのお団子が揺れている。
「久し振りだな。元気そうで何よりだ」
「うんうん。ボクはいつでも元気いっぱいだよっ! ところで、こちらのお二人は? お友達?」
地面をぴょんぴょん跳ねつつ、リーズへ尋ねるポポロン。リーズが土の勇者へレイとアンの二人を紹介する。
「紹介するよ。騎士のレイとエルフのアン。訳あって、私は彼等と同じ、パーティのメンバーになったんだよ」
「初めまして、騎士のレイだ。土の勇者に逢えて光栄だ。よろしく頼む」
「アンです。よろしくお願いします、ポポロンさん!」
一瞬驚いたような表情をした彼女は、笑顔でペコリとお辞儀をする。
「ボクは土の勇者のポポロンだよっ! 気軽にポポロンって呼んでいいよっ! よろしくねっ!」
レイとアンと順番に握手をしたポポロンはやがて、目を輝かせながらレイとアンの周りをクルクルと踊り始める。そして、『うんうん』と頷いたあと、リーズへ向き直り……。
「えーー、えーー。すごいすごい! 一匹狼のリーズがパーティを組むなんて、よっぽどの事あったんだね! あ、もしかして、レイさんが難攻不落なリーズを口説いたの?」
好奇心旺盛な子供のように、質問するポポロン。代わりに答えたのはリーズだ。
「ポポロン、そうではない! 私が仲間になろうと言ったんだ。色々訳ありでな。今日此処を訪ねたのも用件があったのだよ」
「えーー、嘘ーー!? じゃあ、リーズから告白したの? すごいすごい!」
「なっ……告白!? なんてしてない。勘違いするな!」
何やらリーズが頭から蒸気を出している。質問攻めするポポロンと誤解を解こうと必死になるリーズの様子が可笑しくて、アンがクスリと笑う。
「なんだか賑やかな勇者さんですね」
「そうだな」
リーズはポポロンを工房の隅へと連れていき、何やら二人きりで話をしている。ようやく誤解が解けたのか、ポポロンが戻って来る。
「そっか。どうやら訳ありなんだねっ! 今日はお客さんも来ないだろうから、お店を閉めてボクの家で話そっか!」
ポポロンに促され、工房からお店へ続く廊下を歩く。お店の隣にポポロンの家はあるらしく、弟子のドワーフ四名と一緒に暮らしているらしい。
「ちょうどボクの弟子たちが精霊石を採りに行ってて不在なんだよね。だから店番する子も今は居ないんだ」
「ああ。それで誰もお店に居なかったんですね」
「だが、店に誰も居ないのは不用心じゃないか? こんな高価な武器だと盗まれたら大変だろう」
そう尋ねたのはレイ。ポポロンの店の武具は、ひとつひとつが一点ものであり、他の武器防具屋に置いていないような高価なものばかりなのだ。でも『ポポロンは心配ないよ』と答える。
「だいじょうぶっ。そんな盗むような輩なんて居ないからさっ! もし居たとしてもだいじょうだよっ」
「おい、あれ!」
そう言っていると、廊下の向こう、店内に人影が見えた。店に飾られた剣を誰かが持ち去ろうとしているではないか!
「待て!」
「あ、ヤベェ!」
頭巾を被った小柄な男が剣を持ったまま店の外へ飛び出す。しかし、次の瞬間、店外で何やら爆発音が響く。レイ達が外へ出ると、土煙と共に地面に孔が空き、盗賊は吹き飛んだ後だった。
「こ……これは……」
「とってもおおきい穴です……」
「嗚呼……そうか。ポポロンにはコレがあったな」
吹き飛んだ盗賊が穴の中でひくついている。ポポロンが穴の斜面を滑り下り、笑顔で近づくと、盗賊は悔しそうな表情で彼女を睨む。
「ち、ちくしょう……」
「ね、だから言ったじゃん! だいじょうぶだよって。ねぇ、君。この国の人間じゃないでしょう? 国の人間は、ボクのお店の武具を盗むと、精霊石の魔力と呼応して、ボクの土精霊――ノームが仕掛けた罠が爆発するって知ってるんだよねぇ~」
レイとアンが唖然とする中、盗賊は、巡回していたお城の兵士に連行されていく。ポポロンのお店。国の宝物庫なんかの防犯設備よりよっぽど強力なのかもしれない。国の人間はむしろポポロンのお店で盗もうなどと思わないのだろう。
「後でノームに直してもらわないとだねぇー。さっ、お話の続きしよっかっ!」
お店の前に出来た巨大な穴を避けつつ、ポポロンの家へと向かうレイ達なのである。




