魔法使い御用達のファーストフードショップへ入ったら、ハンバーガーが飛んできたんだけど。
またまたコメディ書きました。読んでくれるとうれしいです。
この時代、銃があるというのに魔法使いでもない普通の人間が剣を買うやつは珍しい。のんびりとなにかおもしろいものがないか『風道商店街』を歩く。風の大魔導師は、魔法使いであると同時に経営者でもある。
もっとも大企業というほど誰にでも知られてるわけではなく、あくまで魔法使い専門店という意味合いが強い。別に衣料品や食料品、武器や銃器に兵器に何でもござれというわけではないらしい。
風の魔術により、気温を調整された商店街は今が夏にもかかわらず涼しく快適だった。飛行魔法を込められたアーティファクトで空を飛ぶ子供たちを横目に俺は並んだ店をゆっくりと見ていく。
ふむふむ、そこで俺は一箇所の店に目が止まった。
「ファイヤーショップ『ボルケイノ』?」
見たところどうやらハンバーガーを提供する店のようだ。店の看板には、一流魔術師御用達!と書かれている。ふむ、丁度いい、俺も杖をつい最近買って魔術師デビューしたばかり
ちょっとここで食っていくか。一流魔術師御用達というのにも興味あるしな。
店の前に扉がひとりでに開く。ほう、風魔法で動いているんだな。俺は扉をくぐり店内に入る。すると殺気を感じた。
「来たわね、お客様」
見れば見た目愛らしい少女が、赤と白の制服とエプロンを着て、俺を三白眼で出迎えていた。
え?何この店?
「ようこそ、ファイヤーショップ『ボルケイノ』へ」
なんだこの戦場の武士を前にしたような緊張感は!?
くっ、こりゃ俺みたいな新米ウィザードには早かったかもしれない。飯を食うのに早いも遅いもないはずなのだが、なぜかそう思った。
「ご注文は?」
綺麗な金髪の少女は、厳かに俺に問いかけた。
どうする?ここは一度引き返すか?いやまずは、メニューを見てみよう。俺はメニューを見た。
『ファイヤミートバージョンピッグ』
すると疑問に思った俺に気がついたのか、えへへと笑いながら、
にこやかに一つずつ説明をし始めてくれた。
「これはですね、ファイヤーボールで一気に肉を焼きあげ、熱々の一品をお客様に提供できるようにした料理なんですよ」
「いりません」
無論俺断る。
『ミートサギタバージョンピッグ』
「これはですね、弓の魔法で当店の肉をそのままお客様の口にダイレクトに届けるというスピードを重視した当店自慢のサービスで……」
「結構です」
だが、さらに断る俺を尻目に
「では二つでお会計620円になります、お席に座ってお待ちください」
とんだぼったくりショップだぜ。そう内心嘯きつつ、素直に払う俺。
なんだこの店。
とりあえず食べたらもういかないことにしよう。
俺はテーブルでしばらく待つ。
カウンターの向こうでは先ほどの店員がなにやらあやしげな呪文を唱えていた。
『豚の丸焼き、セット』なにやら不穏な声が聞こえる。いったいなにをしているんだ?
『魔力チャージ、術式構成』
『魔力安定、術式最終チェック完了、』
『発射まで、3,2,1……』
ドひゅん!というまるでミサイルの発射音のような音が聞こえ、なにごとかと俺は、周囲を見渡すと同時に瞬間、豚の丸焼きが天井近くまで飛び上がる。
俺絶句。
『飛べない豚はただの……』
などと意味不明な言葉を呟きそうな豚はそのまま俺の口目掛けて
落ちてくる。
当然、避ける。
「ちょっと!避けないでくださいよ!」
「無茶いうな!」
なぜか店員に怒られる俺。食えというのかあれを?だがそんな気はとても起きない。もういい金は払ったんだ。俺は席を立つ。
が、豚はそのとき俺の近くで落ちる間際見事なインメルマンターンを決め、方向転換し、再度俺の口目掛けて迫ってきた。しかも、いつのまに合流したのか、上下からパンが接近してきている!?
「逃がさないわよ!」
「この店は普通にメシすら食わせてくれないのか!?」
「焼きたてを最速でお届けするのよ、研究職の連中に大人気なんだから!」
「返金するから、これ止めて!」
「だめよ、せっかく来たお客様にうちのハンバーガーを食べてもらえないなんてうちの沽券に
関わるわ」
「客を豚の丸焼きで襲う方が沽券にかかわるような気が……あ」
2、3回避けたが、ついに今度は避けきれず、視界一杯に豚の顔が広がる。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
結論魔法使い御用達のファーストフード店は怖い。
読了ありがとうございました。