【第一章3月】1話春の訪れ
梅の花は冬の終わりを迎えようと雪のように真っ白な花弁がひらひらと舞い落ちる急ぐように舞い落ちる。
桜の花は春の訪れを祝うようにポツポツとつぼみを枝にめぐらせる。
そしてこれらの木の下で春の陽気に誘われてきた花達に水をやる母。
そしてそれらを暗い自室から眺める自分。
毎年同じ……いつも通り刺激のない人生の中、人を異常なほどに怯え家族にまで迷惑をかけ自らを守ろうとする……じぶんながら情けないないなぁと思う。
僕はなぜこんなにも人を恐れ嫌うようになったのだろうか?それは自分でも分からない。
いじめ?あっていたがさほど気にしなかった。
『こいつらは自分が弱いからそれよりも弱そうなやつを貶めて自分の心を守っているのか。』程度にしか思っていない。僕は口が達者なほうだったから口論だけでねじ伏せられたし。
とまぁこのように原因が全くわからないのだ。
ああ、もうあの時間か。
さあっと風が吹き抜ける庭に出る。
母が部屋に引きこもる僕を心配して一日一回は家から出るというルールを立てた。特にこのルールに文句はない、ありがたいぐらいだ。
だけど毎日人の目に触れるところに出るのは限界がある。そのためとりあえず庭に出てることにしている。
僕の家は割と都会の方にあるが庭には果物、紅葉、桜、梅の花の木や、花々が植えられ落ち着く場所になっている。
落ちつく……部屋よりも。
春だからか鳥のさえずりが聞こえたり花に集う虫達がいたり。
美しい森にいる気分だ。
ん?なんだあの蝶……何か…近づいてみよう。
真っ白な羽には少し桃色がかった模様が入っている。何か、どこかが懐かしい不思議な蝶だ。
「……………………あ…れ?」
涙がこぼれてくる、頭痛がする「うっあっ…」そのうち僕の意識はまぶたとともに落ちていった。