FILE6; 折れた歯車
「昨日殺されたのは梶山純一。国立病院の医者だ。この男は保険金殺害の手助けのため手術ミスをするが、違う親族から告発されそうだったようだ。」
真央と話した次の日。樋上は真央を追うのを諦め病院へ行ってみると確かにそこで梶山純一が死んでいた。
その後真央の家に行くとすでに誰も居なかった。
「そして俺があるルートから受け取った資料はこれだ。」
刑事全員に資料がいきわたる。そして刑事全員が驚愕する。
その資料に写っていた写真とは・・・・・・
「現警視総監。神崎忠明。現総理大臣。三浦大吾。この2人だ。この2人を二班に別けて護衛する事になった各自気を抜くな!!」
刑事が一斉に散らばった・・・・・・
「真央、刑事に正体が知れたって本当か?」
「ああ、おまけに資料を盗まれた。だからターゲットはもう向こうに知れてるな。」
真央が銃を慣れた手つきで組み立てる。
隣には小柄な少女。腰までに伸びた髪は風に揺れ、目は少し垂れている。
真央の隣に寄り添い離れようとしない。
「ねぇ、真央。これで私たち本当に生きられるの?」
「ああ、そうだ雛。俺たちはこれで『存在』を手に入れるんだ。」
擦り寄ってくる雛子を真央は優しく抱きしめる。
愛しい相手を抱きしめるかのごとく、真央は暫く雛子を離さなかった。
暫くして雛子を離した真央は立ち上がり周りを見た。
「俺たちは『存在』を手に入れるんだ。三浦大吾は来夏、真紀菜、雛葉。神崎忠明は俺と優喜、文香、真理だ。このチームで俺たちのターゲットを沈める。みんな、頼んだぞ・・・・・・」
七人はそこで別れた。
警視庁。の最上階。そのに警視総監の部屋があった。
警視総監神崎忠明。42歳と言う若さで警視総監の地位に上りつけた男。ひょろりとした体格で口ひげを蓄えている姿は妙な威圧感を放っていた。
「Exclude Children対策本部の樋上警部補であります。」
樋上を含め10人の刑事が警視総監に敬礼する。
「今回の話は聞いている。Exclude Childrenが私を狙っているのらしいな。各員、警戒を怠らないようにしてくれ。」
神崎の言葉を聞き、一同は再度敬礼をした。その後刑事たちは銃を片手に外の配置についていった。
樋上を残して。
「警視総監殿。聞きたいことがあります。」
「なんだ?樋上警部補。」
一人だけ配置に着かなかった樋上に警視総監は不審な目を向ける。
「Exclude Childrenは親に『存在』を奪われた子供の集まりです。そしてその子供たちはいままで自分の親しか殺していません。となるとあなたは何故狙われているのか。と言う疑問が浮かび上がる。それはあなたも自分の子供から『存在』を奪ったからじゃないですか?」
「貴様!警視総監に向かって失礼であろう!」
隣に立っている警視監が樋上を怒鳴り散らす。
しかし樋上もそんな事には怯まず、一枚の紙を警視総監に手渡す。
それは一枚の死亡報告書・・・・・・名前は神崎優喜。
それを見た神崎は怪訝な顔をする。
「この少年がExclude Childrenのリーダーをやっている事はもう調べは着いています。そしてここに今あなたとの関係も証明された。」
「よく・・・・・・調べたな。そうだ、神崎優喜は私の息子。8年前、私が―――」
神崎が何かを言おうとした。しかしその声は轟音と共にかき消される。
警視庁は大きく揺れ、部屋に居た3人は床に倒れこんだ。
「な、何があった!報告しろ。」
樋上が置いてあった無線に向かって怒鳴り散らす。
無線の方からは雑音が大きく、声が聞き取りにくかった。
「こちら、警視庁1階。一般市民を非難させた直後何者かが仕掛けた爆弾が爆発。重傷者18人。辺りは黒煙で視界が悪く犯人の確保は難しいとされています。」
続けて3階からも無線が入る。
「こちら警視庁3階銃を持った少年が2人、こちらに向かって発砲中。すでに刑事7人が重傷。至急応援を―――」
銃声と共に無線がきれる。そして下の階からは再び爆発音。しかもドンドン近づいてくる。
樋上は部屋から出るとそこにはもう2人の少年が立っていた。1人は真央。もう1人は優喜。そして2人の足元にはピクリとも動かない仲間の刑事たちが横たわっていた。
反射的に樋上は懐から銃を取り出して撃つ。
しかしその弾丸は真央と優喜には届かず。立てかけてある机に当たる。
「とうとう来たか。真央、優喜。」
「その口ぶりだと俺の事も調べ終わったんですか?樋上刑事さん。」
机越しに二人の声が交差する。
「俺たちは『存在』を手に入れる。そのためにはもう犠牲は構わない。」
真央が机から飛び出した。
樋上はその真央に向かって銃を乱射する。
1発、肩に当たり貫通する。しかし真央は止まらない。
2発、今度は太股に貫通。しかし真央は止まらない。
まるで真理のように痛みを感じないからこそ出来る動きのようだ。
真央が銃を構える。
「死ね!」
一発の銃声音。弾丸は真っ直ぐ樋上に向かって伸びる。
避けられない、真央は勝利を確信し、気が緩んだ。
ドン
重い音。樋上の頭から血が垂れる。手には銃。しかし大型のショットガン。自分で持ち出したのだろうか?
その弾は真央の腹を深々と抉っていた。
「がっ!?」
真央が声をあげ吐血する。
撃たれた腹からは鮮血な血が限り無く流れていた。
「真央!」
気を抜いた優喜。机から飛び出して真央に駆け寄る。
ドン
再び重く大きな音。今度は優喜の腹を抉る弾。
樋上の目はもはや見えていない。真央が撃った弾は樋上の目をかすめ左目からは血が雪崩れのように垂れていた。
優喜は持っていた銃を取りこぼし、その場に膝を着く。
「まだ、だ。俺はまだ『存在』を手に入れていない。俺から『存在』を奪ったアイツを殺してないんだ。」
足に力が入らない。血を多く流しすぎたのだろう。霞む目を擦りながら優喜は部屋のドアへと手を掛ける。
中には2人の男性。
1人は知らない。もう1人は・・・・・・
バン
一発の銃声。
構えているのは神崎忠明。撃たれたのは優喜。
「オヤ・・・・・・ジ」
警視庁はその一発の銃声で静寂に包まれた・・・・・・
総理官邸。そこも銃撃戦に見舞われていた。数で言うと圧倒的な差があった。たった3人で、武装、厳重体制で待っている総理官邸に突撃するなんて自殺行為だ。しかし現状はその3人が押していた。
他の部屋はもはや血の海。官邸の中で生きているのは来夏たち三人と、総理大臣三浦大吾。3人は銃を構え三浦を包囲していた。
「三浦大吾。俺たちの復讐の対象外だったが次の世界の為に死んでもらうぞ。」
来夏はそう三浦に言い次の瞬間三浦の頭を躊躇無く打ちぬいた・・・・・・
3人は三浦を殺害した後警視庁に向かい、文香たちと合流した。しかし真央たちと連絡が取れない事を知り来夏は無線を手に取る。
「こちら来夏。真央、優喜、聞こえるか?」
「久慈来夏か?」
来夏の使っている無線から樋上の声がする。
「!何故お前が!?2人はどうした?」
「真央は重傷、優喜は殺した。」
その言葉に5人は驚きを隠せない。
荒れ果てた警視庁の1階。けが人はすでに病院に運ばれているので、残っていた刑事たちはみんな死んでいる。
5人は慌てて警視総監の居る部屋に向かう。
「真央!優喜!」
勢い良く開けたそこには・・・・・・
「そこまでだ、Exclude Children。」
樋上を中心とした刑事たち数十人が5人を取り囲む。
「樋上。やはりあの時殺しておけばよかったのか。」
来夏は苦虫を噛み潰したように落胆する。
真紀菜は怯える雛子を胸に抱え文香と真理は銃を構え警戒態勢をとる。
「もう抵抗はやめろ。この状況ではお前たちに勝ち目は――――――」
「俺たちは最初から勝ち目なんてあると思っちゃいねえ、だが神崎を殺すまで俺たちは死ぬ訳には行かないんだよ。優喜の為にも、俺たちのためにもな!」
来夏が銃を構える。
だが発砲したのは周りの刑事たちであった・・・・・・
その銃声で事件は幕を閉じた・・・・・・
狂った7つの歯車は逆回転を初め、やがて負荷がかかり、呆気なく折れて壊れてしまった・・・・・・
つ、疲れた。目がつぶれそうなぐらい痛いです。
でも頑張ります。。。