表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/7

FILE4; 小さく無垢な歯車

宮戸真紀菜が自首してから三日。真紀菜は来夏の手によって再びExclude Childrenへと戻されてしまった。

そして監視をしていた佐納文香も行方を暗まし、捜査は難航していた。手がかりと言えば真紀菜が言っていたExclude Childrenは『抹消』された子供がその親に復讐する為に作られた組織。と言う事は現在の被害者は4人と言う事は少なくとも後3人は犠牲になると言う事である。まだ解らない3人の子供の親と連絡できれば護衛を付けることも出来るのだが、Exclude Childrenは何故『抹消』されたかと言うと社会の風当たりなどを気にした親が自分の身を守る為にやった事だ。ましてやターゲットになっている親はまさか自分が狙われているなんて思ってもいないだろう。そう考えるとやはりターゲットの先読みは困難であった。



「おい、その後のExclude Childrenの様子はどうなんだ?」


「この前のことが嘘のようですね。殺人事件一つ起きてません。」


捜査本部で相変わらずタバコをふかしているのは樋上だ。真紀菜に逃げられてからの三日間。捜査本部に泊り込みで資料を集めている。


「俺が頼んであった人には連絡が取れたのか?」

「えっと・・・・・・確か国会議員の田淵真三たぶちしんぞう氏ですね。先ほど連絡が取れて面会も許可が下りました。」

樋上は部下から田淵議員が住んでいる家の地図を受け取り、タバコを灰皿に押し付ける。

何故田淵議員に面会するかと言うと、理由は簡単だ。死亡報告書に田淵議員の息子が乗っていたから。

「俺はこの議院のところに行くから、おまえは引き続き資料を集めてくれ。」


樋上はそう言うと捜査本部を後にした。








車で向かう途中樋上は再度資料を読み直していた。


―――田淵真三67歳。8年前議員に立候補する話が持ち上がっていた矢先、息子の田淵真理たぶちしんり。当時4歳の子供が病死、息子の為にと言い議員に立候補。見事当選したが当選してから数ヶ月の間同情を引く為に息子を殺したのではないかと言う噂も飛び交っていた。

しかしそんなものただの推測でしかなく、8年経つ今は民事党みんじとうの中心人物として活躍している。



だがこの息子の死亡は少し引っかかる点があり前の日まで元気だった息子が次の日急に死んでいた。しかも田淵家のお手伝いさんは誰一人その遺体を見ておらず発見したのは父親、田淵真三。その後は救急車も呼ばず自分の車でわざわざ遠い病院の主治医に息子を見せに行くなどと不可解な行動が多かった、まるで息子を見られてはいけないかのように・・・・・・



そんなことを考えていたらあっという間に田淵議員の家に着いた。

玄関が開き樋上は応接室に呼び出された。



「この度はお時間をとっていただきありがとうございます。私はExclude Children対策本部の樋上と言います。」

畳の部屋。机を間に置き田淵と樋上が向かえ合わせになる。


「いやいや、それで刑事さんが私になんのようですか?」


「今回、Exclude Childrenと呼ばれる組織は親に『抹消』された子供たちがその親に復讐すると言う経緯で動いています。それで我々警察本部に田淵議員の命を狙うと言う情報がありまして我々警察をどうか刑事に付けていただけないかと・・・・・・」


もちろん田淵の命を狙っている奴なんて嘘だ。しかし息子がExclude Childrenである可能性は十分ある。そこで嘘をつき刑事を付けさせる事で動向を探るつもりなのだ。



「ムムム・・・・・・」


田淵は暫く黙っていたが、重い口をあけ


「そう言う訳なら仕方が無い。こちらからも警護をお願いします。」

田淵はあっさりと樋上の要求を受入れた。これは樋上にとっても少し拍子抜けであった。

樋上が思うに田淵はきっぱりと断り話は長期戦になる事を考えていたのだ。



「おっとそれでは警護は今日の夜からで良いですかな?私はこの後他の議員と会う約束がありますのでこれで失礼させていただきます。」










その夜。樋上は三人の刑事を連れて再び田淵家へを来ていた。

Exclude Childrenが来るかはまだ不明だが来る可能性は十分ある。その為樋上たち四人は防弾チョッキに銃を装備しここに来たのだ。

「いや〜この度はどうも私の警備に来てくださり恐縮です。」

部屋では田淵が待っておりそこには豪華な料理が所狭しと並べられていた。

「いや、田淵議員、我々はあくまで護衛なのでこんな料理は・・・・・・」


「いえいえ、護衛と言っても私にとっては客人でもある。それに命を守ってもらうんだ。これぐらいしてもバチは当たりませんよ。」

田淵は四人を座らせると食べるように勧めた。最初は遠慮していた4人ではあったが田淵の押しに負けそのまま料理を食べてしまった・・・・・・







「樋上さん。Exclude Childrenと言うのはやはり私に恨みを持っているのでしょうか?」

食べ初めてから一時間他の刑事はすでに食べ終わり部屋から出て行った。樋上はすっかり酔ってしまった田淵の面倒を見るハメになった。

だが勤務中なので酒を勧められても飲まなかったので4人とも酔ってはいない。その点ではまだ良かったであろう。


「私はいろいろな物を犠牲にしすぎた。息子を亡くし、残った妻の為にもと必死に仕事をしてきた。しかしそれが逆に妻を一人にさせてしまっていたらしい。妻は3年前に他界。良く考えたらもう何年も話していなかったんですよ。」

田淵は酒が入った勢いもあったせいか、涙を流しながら樋上に愚痴を零す。


「失礼します。そろそろ就寝の時間ですが・・・・・・」


お手伝いさんが入ってきて時刻を伝える。良く見たらもう11時を過ぎていた。

田淵によると明日は朝から大事な人と会う約束があるらしい。そのため就寝は早めにしていたのだ。


「いやはや、長話をしてしまいましたな。樋上刑事。どうもありがとうございました。それではよろしくお願いします。」


田淵はそういい残すと自室に入っていった。









時刻は深夜2時。樋上たちは2人が外でもう2人は田淵の部屋の前に居た。樋上は田淵の部屋の前にいたがここ二週間ろくに寝ていないのが祟ったのかコクリコクリと首を揺らし寝息を立てていた。

隣の刑事は起きてはいるがこちらも眠そうである。多分田淵に勧められ夕食を多く取りすぎて眠気が襲っているのだろう。

そして二人の緊張が切れたその時。




パンパンパン




乾いた銃声が3発。樋上と刑事は慌てて飛び起き樋上はドアを蹴破ろうとする。もう一人は銃を構え小声で外にいる刑事に応援を呼ぶ。

「クソッ!今度からはもっと柔な扉にしろ!」

大きな音と共に樋上と刑事がなだれ込む。窓が開いている。少し肌寒い風が頬を撫で、月明かりに田淵と少年を照らす。


「田淵真理・・・・・・だな。」


少年はゆっくりと樋上の方へと首を動かす。黒い髪が風に揺れ、やけにその顔が目に焼きつく。

頬には返り血がついており、少年の足元には田淵真三が倒れていた。


2人は銃を構える。

「田淵真理。その人から離れろ!さもなければ撃つぞ。」


少年は少し目を細める。が直ぐに田淵に向き直りそして



パンパンパンパン


銃に残っていた弾を全て倒れている人に向かって撃った。


「撃て!!」

樋上の掛け声と共に2人は手や足を撃つ。少年は小さく呻き銃を手から取りこぼす。

そして足元にある血溜まりに倒れこんだ。


「死にましたか?」

銃を構えたままの2人は慎重に近づく。

「いや、息はしているな。」


近づいていくごとに小さく荒い息が聞こえてくる。

「お兄さんが樋上刑事?」


少年の口からそんな言葉が発せられる。

「ああ。」


「今ねお父さんを殺す時。僕に言ったんだ『俺が悪かった。許してくれ』ってね。フフ・・・・・・笑っちゃうよね今まで自分がやってきた事知ってるくせに。」


少年は笑う。そしてゆっくりと立ち上がる。

「なっ!?」


樋上は驚いた。何故立ち上がれる。腕や足に銃弾を喰らってしかも血溜まりができるほど血が出ているのに、しかも相手はまだ12歳の少年だ。大人でも立ち上がれそうに無いこの痛みがどうしてこんな小さな少年に耐えられるのか・・・・・・それが樋上には理解できなかった。



「知ってる?お兄さん。僕は無痛症むつうしょうなんだ。だから撃たれても痛くない。だから撃たれても立ち上がれる。」


カランカラン


目の前に見覚えのある缶が投げつけられる。そうスタングレネード。

「ちっ!耳を―――」


刑事に言おうとしたが途中で声が遮られる。

激しい閃光と大きな轟音で目と耳が使い物にならにならなくなる。

その時、聞こえた気がした。


「僕はこれで生きられるのかな?ねえお兄さん?」





目と耳が回復した時はもうそこには血の跡と火薬の匂いしか残っていなかった・・・・・・











「よくやった。真理。怪我は大丈夫か?」


場所は真央の家。そこには六人のExclude Childrenが集まっていた。


「わかんない、痛くないから。」


「そうか・・・・・・真紀菜。手当てしてやってくれ。文香は輸血の準備。」


「うん、わかった。」


「りょうか〜い」


顔が少しはれている真紀菜。やはりあの後優喜に痛めつけられたのか。真理を連れて奥の部屋に行ってしまった。

もう一人の少女にも見える長い髪をした少年は間の抜けた声で返事をして輸血パックを手に取り準備をしている。


「優喜。あと何人で終わりだ?」


「3人。後たった3人・・・・・・それで俺たちの計画は完成だ。」


優喜は壁に書いてあった顔写真に×印を付けていく。残りは3人。


「俺、そして雛子。そしてその後に1人。」


薄く笑う優喜。

その笑みは最初よりよどんでいた・・・・・・








小さく無垢な歯車。現実を知らぬままに逆回転で回り始めた・・・・・・



二日続けて投稿。始めてかも

まあ頑張ります。。。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ