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FILE3; 直り掛けた歯車

「おい、二人の容態はどうなんだ?」


病院の待合室。樋上は手術をし終わった医師に聞く。


「ええ、身体には二人とも1発ずつ。しかし両方とも臓器は傷つけていません。運が良かったのか幸い大事な血管にも当たらず、肉だけを貫通していったようです。他には手の甲や太股などですがこれも大事には至りませんでした。暫く入院していただければ治りますよ。」

医師はそう言うとマスクを取り出て行った。


「良かったですね、樋上さん。二人とも運が良かったんでしょうね。」


「いや・・・・・・偶然じゃないな。」


樋上はポツリと言う。

昨日の来夏の目は獣だった。しかし理性は最低限残されていた。だから二人は死なず、樋上も花瓶による切り傷だけで済んだのだ。もしなんのためらいも無く撃たれていたら今頃三人とも死んでいた。

樋上はそう思うと背筋がゾクッとするのがわかった。



あの後来夏は失踪した。保護者は架空の人物で家の住所もでたらめであった。そうなると事実上逃げられたという事になる。一応指名手配はしてあるが、Exclude Childrenの行動範囲を考えるとまず捕まらないであろう。


「樋上さん。これは如何しますか。」


部下から受け取ったのは残された現場から採取された指紋と樋上が見つけた死亡報告書でヒットした人を集めた資料。

「何人ヒットしたんだ?」


「久慈来夏をあわせると三人です。」


部下は端からその資料を読み上げていく。


「最初は久慈来夏。4人目の被害者、久慈智明の息子で8歳の時に死亡報告されていました。2人目は佐納文香さのうふみか。性別は男。2人目の被害者、佐納貴文さのうたかふみの息子で6歳で死亡報告が出されています。現在は14歳。榊原付属中学に佐納友宏さのうともひろと名乗り通っています。最後は宮戸真紀菜みやとまきな。性別は女。3人目の被害者、宮戸大二郎みやとだいじろうの一人娘。この子も6歳で死亡報告が出されており現在14歳。榊原付属中学に名前を変えずに通っています。」



一通りの説明が終わる。これで解った事が増えた。一つは全員が被害者の子供。そして全員が死亡扱いになっている。

二つ目は全員が榊原関係の学校に通っていると言う事。

三つ目は全員死亡報告されたのは10歳より前と言う事。


「待て。そうなると一番最初の被害者の子供はどうなんだ。」

「榊原一之介は2人子供がいたそうです。しかし事故でその2人と妻を亡くしています。ちなみにその2人の子供はまだ2歳前後だったので指紋の採取などの資料は見つけられませんでした。」


「そうかそれじゃ―――」

「樋上さん!大変です。」


樋上の声が打ち切られる。入ってきたのは対策本部の刑事。

「如何したんだ。そんなに慌てて」

刑事は息を切らしていた。そこまで大変な事態とはなんなのだろうか。もしかしたら5人目の被害者が出たのか?

「Exclude Children を名乗る少女が捕まりました」


「・・・・・・今何処にいる。」

内心の驚きを抑え、先に必要な事を聞く。


「第三取調室にいます」


そう聞くと樋上は全力で走っていった・・・・・・







「君は本当にExclude Childrenなのか?」


第三取調室、そこで取調べが行われていた。樋上と向き合っているのは少女。黒い髪を腰まで下ろして、落ち着いた雰囲気ではあるが今の少女は何処か落ち着きが無い。


「わ、私はExclude Childrenの一人でコードネームはシックスです。本名は宮戸真紀菜。3人目の被害者を殺しました。」


真紀菜はそう言う。しかし言葉に覇気がないやはり何かに怯えているのだろうか。


「どうした?何に怯えている。」


樋上が少女に聞く。が少女は肩をビクつかせただけで何も答えない。

本当にこの少女が被害者を殺したのかは樋上にはどうしても思えなかった。来夏の時もそう思っていたが来夏はまだ自信や余裕があった。しかしこの真紀菜は自身どころか、ここに居る事すら怖がっている。そんな状態で人を殺す事が出来るのかが樋上にはどうしても納得できなかった。


「わ、私怖いんです。自分が。」


消え入りそうな声で言う少女。

「お父さん殺しちゃったのに真央君や優喜君にまだついていってる自分が・・・・・・」


「『真央』と『優喜』って言うのは誰だ?Exclude Childrenのリーダーか?」


真紀菜は静かに頷く。もっと詳しい事を聞こうとするが、真紀菜は仲間の事はあまり教えたくないと言い口を閉ざしてしまう。


「じゃあ質問を変えよう。Exclude Childrenは何人いる?」


「実行部隊は私を入れて7人。資金面で助けてくれる人が3人。実行部隊の人は私も数人しか会った事なくて知っているのは人数だけです。」


真紀菜は少しずつではあるがExclude Childrenの秘密を教えてくれる。後もう少しでもっと内部の事を聞きだせそうであった。

「じゃあその『真央』と『優喜』、そして君と来夏で4人なんだね。」

真紀菜は一瞬答えを渋ったが直ぐに小さく頷く。




それから30分。樋上は真紀菜からExclude Childrenの情報を聞き出していった。


「Exclude Childrenは親に『抹消』された人が集まってその親に復讐する為に作られた組織です。私もお父さんに『抹消』されました。」


真紀菜の身体は小刻みに震えていてあまり多くの情報を聞き出すのは困難であった。


「来夏君は銃器を扱うのが上手くていらない殺しが出来た時はいつも来夏君が殺っていました。」


「そうかじゃあ最後に―――」



カランカラン




「ん?」



樋上の言葉が何かの音で遮られる。窓から何か缶のような物が投げ込まれたのだ。付き添いの警官がそれを拾うとそれは・・・・・・


「捨てろ!?スタングレネードだ!」


スタングレネードとは相手を傷つける事がないように音と光のみを発する手榴弾で人質などを救出する時などや相手をかく乱する時に使われる物である。




大きな音と共に閃光が取調室を包む。部屋に居た3人(樋上、警官、真紀菜)はモロに喰らってしまい目を押さえる。とその時窓が割れる音が同時にする。


「真紀菜!こっちだ。」


爆発の瞬間咄嗟に耳を塞いでいた樋上は耳だけは聞こえていた。そう、その声は・・・・・・


「久慈来夏か!」


「悪いが刑事さん真紀菜は返してもらう。」


「待って来夏君、私は―――」


再びスタングレネードの爆発音がする。その音で樋上と警官は完全に気絶した。











深夜の廃ビル。


そこには真紀菜と来夏。そして真央と優喜の4人が集まっていた。


「真紀菜。何で自首した。」


優喜が問う、その顔にはいつもの含んだ笑みは無い。

「ごめんなさい優喜君。私、もう―――」



パンッ


「いたっ!?―――」


乾いた音と共に真紀菜の悲鳴が聞こえる。優喜が真紀菜の頬を叩いたのだ。


「おまえのせいで俺と真央が8年掛けて作った計画が崩れる所だったんだぞ!如何責任取るつもりだ真紀菜!?」


真紀菜を柱に押しつけ胸倉を掴む優喜。


「―――ゴメン――なさ――い」


「つっ―――――ふざけるな!?」


優喜が真紀菜の衣服を破く。

そして真紀菜の白い肩が見えて来た。


「身体に教え込まないと解らないらしいな。こっちは今なら簡単にお前を殺せるんだぞ。」


優喜は破った衣服を捨てると再度真紀菜に殴りかかろうとする。


「待て!?優喜。それ以上やったら死んじまう。真紀菜がいなけりゃ、それこそ計画が崩れちまう。だからおまえも来夏に助けに行かせたんだろ。


真央に止められ優喜は掴んでいた真紀菜を話す。掴まれていたことでバランスを取っていた真紀菜は力無く地面に倒れこんだ。

「ごめんなさい―――優喜君ゴメンナサイ―――」

真紀菜はそう何度も繰り返しては目から大粒の涙を零した。


「今度あんなことしたら殺すぞ。わかったな。」





優喜はそう言い残すと廃ビルから出て行った・・・・・・











「来夏。真紀菜の様子は?」


優喜が出て行った後、真紀菜を真央の自宅に運び寝かせたのだ。


「優喜に怒られたのが相当聞いてるみたいだな。寝言でずっと俺たちに謝ってる。」


「そうか・・・・・・悪かったな指名手配されてるのに警察に乗り込ませて。」


真央が申し訳無さそうに言う。


「大丈夫スイッチ入れ替えれば大事な事以外は覚えないから。ああ、それよりも文香もこっちに来させた方がいいかも知れない。あの樋上とか言う刑事、もう実行部隊の3人は知ってる。それにおまえと優喜のことにも近づいてるみたいだ。」


「それならもう大丈夫だ。廃ビルから出る時文香には連絡入れておいたから、もう直ぐ着くはずだ。それに・・・樋上だっけ?その刑事。俺と優喜の情報は何一つ残ってないんだ。それにExclude Childrenの計画にも無理はあった。計画が済めば俺たちは死刑でも良い。それがルールだ。覚悟は出来ているさ。」





「そう・・・・・・だな俺たちはまだやることが残ってるんだからな・・・」









一つの歯車が戻りかけた・・・・・・しかしそのことを許さなかった大きな歯車は戻りかけた歯車を再度逆回転で回し始めた・・・・・・



何かスラスラ掛けちゃうんすけど・・・なんででしょうか?まあ好調な時はいっぱい書いた方が得だと思うので頑張って投稿しますです。

余談ですがR15指定にした割にはあんまりそういう要素は出てきませんね。。。

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