FILE1; 取り外された歯車
人一人。時代の波に飲まれてもそれを気にする物。その事実を知る物は少ないであろう。歯車は正常に動いている中。壊れて動かなくなった歯車は取り除かれる。それが常識。誰がそんなことを気にするのであろうか・・・・・・
暗い路地裏、一人の男がいた。身にまとっていたスーツは所々破れているが、そんな事は気にせず男は息を切らしながら走っていた。
「ま、待ってくれ。俺が悪かった。だから・・・・・・殺さないでくれ!」
男は呪文のように何度も何度も言う。良く見ると男の後ろには小さな影がある。男はその影が視角に入ると一層怯える。そして男はゴミ箱に躓きその場に転倒してしまった。
その間に後ろの影は男との距離を詰める。
「ヒィッ!?やめろ・・・・・・殺さないでくれぇ!」
地面に腰をつけながら後ろに下がる。男の腰はもう抜けていて歩けないのであろう。影にもそのことが解ったのか、早歩きだった影はゆっくりとしたペースになりじわじわと男に近づく。
ここからでは逆光で見えないが。影の正体はどうやら子供らしい。
その子供の手には小さな銃が握られている。
そしてその銃を男の額に当てる子供。
「た、頼む!か、金ならいくらでも―――」
パンッ!
乾いた音と共に男の声が消える。その男の声は永遠に閉ざされたのだ。子供は頬についた返り血を拭いながら来た道を戻る。今撃った男の事には見向きもせずにそのまま夜の闇へと消えて行った・・・・・・
二日後。榊原高等学校。
学校内では一昨日の事件で持ちきりであった。
―――おい、聞いたか?うちの校長が一昨日銃殺されたって話。―――ああ、確か新聞に載ってたよな。―――結構面白い校長だったのにな。―――ああ、でもあの校長裏ではヤバイ事やってたみたいでさ、今度もそれ関係で殺されたんじゃないかって話だぜ。
話の内容は一昨日の深夜。帰宅途中だった。榊原一之介。榊原高等学校の校長が銃殺される事件。何でも職場の教師と飲みにいって別れた後殺されたらしく、学校の前にはマスコミの人だかりでいっぱいと言う状態なのだ。
「なあ天竜寺。お前は知ってたか?」
「えっ僕?いや、みんなと同じぐらいのことしか知らないよ。」
いきなり話を振られた少年は戸惑いながらも返答する。
黒くて長い髪をした少年。名前は天竜寺真央。前髪は鼻の辺りまで伸びていて顔は良く見えないが、少し垂れ目で瞳は少し赤黒い。
体躯だけで見ると中学生とも間違われそうなぐらい小さい。が髪の毛を上げると結構整った顔立ちをしておりイケメンの部類に入る。しかし身長のこともあるのか、カッコイイと言うよりはカワイイといったほうがしっくり来る感じもする少年。
「だけど犯人は当分捕まりそうに無いよな。」
「えっ?どうしてなの。」
一人の生徒が新聞を広げながら言った。真央はその事について聞く。
「だって新聞にも書いてあるけど、銃はポケットピストルで処分にはあんまり困んないだろうし、それに犯行現場には子供の指紋があって、事件に関係があると思ったら何と、指紋の該当者がいなかったって話だぜ。」
「ふつー指紋の該当者なんて簡単に見つかるのか?」
隣の男子生徒が首を突っ込む。新聞を広げていた生徒はそれをたたみながらその疑問に答える。
「ばーか。指紋は警察の捜査に重要な手がかりだから、警察のパソコンには住人の指紋は全部突っ込んであんだよ。」
そう。その通りである。しかし今回の事件では指紋の該当者がいなかった。指紋の大きさからして13才から23才ぐらいまでらしいが該当者はいない。となると答えは限られてくる。日本の何処の町にも住民票を出さず。指紋を採取された事の無い人間か、あるいは採取はされたがパソコンから何らかの理由でデータを消したかだ。
「だけど007じゃないしそんな事しなくても手袋すりゃーいい話だよな。」
確かにそうだ。危険を冒してまでデータを消そうなんて思う人間がいるはずが無い。
そんなことを話していると予鈴がなる。それと同時に小太りの教師が入ってきた。
「おい、お前ら大事な話があるから席に着け。」
小太りの教師は額に汗を滲ませながら言う。
生徒達は疎らではあるが教師の言われたとおりに席に着いた。
「えー、何と言うかな。まあみんな知っていると思うが一昨日校長先生が殺害された。今学校で対処しているがしきれていないのも現状だ。とり合えず今日は緊急で学校を閉めたいと思う。みんなは極力、夜の外出には気をつけてくれ。ああ、あとマスコミが来ても何にも喋らない様にしてくれよ。以上だ。」
小太りの教師はそういい残すと足早に教室を出て行ってしまった。
生徒達はヤッパリな。と言いながら帰り支度を始める。真央も例外なく帰り支度を初め、そして帰って行った。
その頃、警視庁。
「おい!一昨日の事件の資料。まとまったか。」
「無理ですよ。現場に残ってるものが少なすぎます。報告書なんてまだ書けませんよ。」
警察は一昨日の事件の事でごった返していた。日本では一般市民の拳銃所持は法律違反である。だからマスコミにとっては願ってもいない大ネタなのだ。その対応により警察の信頼度も変わる。という訳で警察署はごった返していた。
「樋上さん。何なんですかそれは。」
樋上と言われた刑事は振り向く。
ボサボサの髪としており顔は良く見えない。それに加えてタバコをふかしているので見た目は不健康極まりない状態であった。
「これは一昨日の事で調べてたんだ。今知り合いの教授に資料を頼んでおいた。」
説明しているとパソコンの横の機会からFAXが出てくる。樋上は散らかっている机の物を蹴り飛ばしFAXで送られてきた紙を凝視する。
「どうでしたか?」
「ああ、教授は解らないそうだが、知ってそうなやつのホームページを教えてもらった。」
樋上は乱暴にキーボードを叩きアドレスを打っていく。そのとき。
ブツンッ!
「はぁっ!?」
パソコンが音を立てて切れた。
「ちょっ!待てよ、俺は何にも―――」
樋上がびっくりしていると
再起動したパソコンに文字が映し出される。
マウスを動かすがこっちの命令を受け付けない。
「なんですか!これは。」
「た、多分。誰かがこのパソコンをハッキングしてるんだな。」
パソコンの画面に言葉が記される。
「何だこれ?『親愛なる警察諸君。我々はExclude Children。一昨日の事件は私達が行った物だ。我々は目的を成すべくこれからも人を殺め続けるであろう。止められる物なら止めてみろ。我々は決して屈しない。この腐敗した日本を変えるまでは・・・・・・』・・・・・・なんじゃこりゃ。宣戦布告か?」
「Exclude Children。『存在しない子供たち』って意味ですか?」
「ああ、そうだと思う。よし!とり合えずこれを報告書として出しとけ。俺はやる事が出来た。」
「はい、わかりました」
樋上は重い腰を上げタバコを灰皿に押し付ける。そしてごった返している部屋から出て行った・・・・・・
深夜一時。
一人の少年が誰かと電話をしている。
「いいのか優喜。警察にあんなの送って。」
暗闇に包まれているせいで顔が良く見えない。
「いいんだよ。Exclude Children。の事をもっと教えないとな、明日はマスコミにでも送ろうかな。」
電話をしている少年が薄く笑う。
「まあ、こっちとしてもあのクソジジイを殺せただけありがたいけどな。」
「どうせ明日も休校だろ。こっちを手伝ってくれよ―――」
ホテル街のネオンが少年の顔を照らす。
「―――頼んだぜ真央。」
「ああ、聖戦の始まりだ―――」
気付いた時には壊れていたはずの歯車は他の歯車とは反対に回り始めた・・・・・・
どうも竣慎です。今回の小説をどうして書こうかと思ったかと言うと何となくシリアス展開と言うか、銃器を使った感じの小説を書きたかったんですね。
今ガンダムSEEDとかコードギアスとかの二次小説も五話ぐらい書いてあるんですけど機体の戦闘の表現が難しくて大変で困ってます。
誰か教えてくれる人がいれば幸いです。
竣慎でした。。。