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予言の紅星2 予言の子  作者: 杵築しゅん
予言の子  編
6/56

イツキのオーラ

 そして、黒い煙みたいなものが、イツキを抱いている男を包み始めた。


 その時、検査官が「お供の方も神父様でしょうか?」と尋ねた。


「はい、そうで・・・く、苦しい・・・」


男はイツキを抱いたまま、突然苦しみ出した。

 俺はその様子を見て、直ぐさまイツキを奪い返す。

 イツキが男の腕から離れたとたん、黒い煙みたいなものが消えていった。

 

 今のはイツキの能力なのか?

 黒い煙みたいなものに包まれた後、苦しみ出したということは、一種の攻撃能力だろうか?

 俺に抱っこされて、泣き止んだと思ったら、イツキの銀色のオーラも消えていく。


 2色のオーラを持つ者がいるなんて!

 イツキを抱く手が、思わず小さく震えてしまう……常識の範疇を越えている……


 これは何の能力だろうか?強いて言えば、自己防衛能力なのか……?

 俺は混乱する気持ちを抑えて、目の前の現実に戻る。


「ハビテ様、大丈夫ですか?」


検査官が声を掛けてきて、俺の目を見て頷く。俺も検査官の目を見て頷いた。


「よし!この2人を捕らえろ」


急に態度を変えて、自分を捕らえようとする検査官に驚く2人。


「何をする!私は神父だぞ。無礼者!」


ナイフ男は暴れながら抵抗するが、数人の検査官が2人を縛ろうとする。

 ナイフ男は訳が分からず暴れているが、とうとう完全に縛られてしまう。もう一人は、呆然と為すがままだった。


「何故だー?」とナイフ男は、俺と検査官を見て叫ぶ。


「あのなー、お前が神父であるわけがない。さっきお前はこちらのハビテ様に、神父と言っただろう。一般神父ごときが、ファリス(高位神父)様に対して、その様な言い方をするはずがない」


「それから付け加えると、一般神父は馬車に乗れない決まりだ」


検査官の説明の後で、俺は何も知らないナイフ男にダメ押しをしておいた。


 男達が連行された後、俺は検査官であり友である、イザクと握手をしていた。


「お前が担当で運が良かったよ」


上級学校時代の友であるイザクとは、レガート国に行く前にも、ここで会っていたのだ。


「俺もお前のファリス(高位神父)姿が見れて良かったさ。で、いつの間に子供作ったんだ?」

「俺の子じゃあない!」


俺たちは笑顔で握手をして抱き合い、検問所でイザクと昼食をご馳走になった。


 昼食後、すやすや眠るイツキを抱いて、再び馬車でミリダ国を後にした。




 やっとハキ神国へと入国できたが、今度は入国審査が待っている。


 そうそう、あの時馬車に居た気弱そうな男は、やはり貴族だった。

 気弱そうな男によると、昨年ギラ新教という宗教に入信しが、奥さんが熱心なブルーノア教徒で、「産まれたこの子を、異教徒にするなら別れる」とケンカになったらしい。

 そこで信者を辞めたいと、ギラ新教団に申し出たところ、無理矢理連行され、抵抗したら斬られて、後はさっきの顛末となったそうだ。


 

【 ギラ新教 】・・・これからイツキが戦うことになる、相手の名前である。




 ◇  ◇  ◇ 


 ハキ神国への入国は、ファリス(高位神父)の衣装と、教会の紋章が入った馬車のお陰で、あっさりと通過できた。


 少し急げば、ハキ神国で5番目に大きな街、ヤダガに宿泊できそうだ。

 ヤダガは、ランドル山脈に近く、木材や薬草、野菜等の栽培が盛んな街で、ここでしか育たない薬草や野菜作りに、人々は誇りを持っていた。


 ちょこちょこと休憩を取りながらの旅だったが、明日には首都シバに入れそうだと安堵する。

 イツキも疲れを見せず、始終ご機嫌なので、おおいに助かった。


 今夜は、ヤダガ正教会の【教会の離れ】に宿泊できたので、イツキを御者のバーデルさんに預け、平服に着替えた後、久し振りに薬草の買い出しに出掛けることにした。

 バーデルさんもイツキにメロメロで、休憩の度に抱っこして「あー癒される」が口癖のようになっていた。


【薬草】と大きく書いた看板の店に入ると、夕方にも関わらず、店内は随分と客が多いのに驚いた。

 様子を見ると、行商人達のようだが、皆が同じ薬を求めている。


「何か病が流行っているのかい?」


俺は忙しそうな店主ではなく、若い販売員の女の子に声を掛けてみる。


「いいえ、そうじゃないんです。何でもダルーン王国で、また新しい病が発生したらしく、その患者がヤダガの雪根草の根を飲んで、回復したそうなんです」


俺の質問に、嫌な顔もせず明るい笑顔で答えてくれたのは、17歳くらいの金髪で利発そうな女の子だった。


 行商人たちは、ダルーン王国に持って行けば、確実に売れるという算段なのだろう。

『新しい病というのが気になるが……』


「子供用の薬を一通り用意してくれ。それから赤ん坊だと、どの位の量が適量かも、書いてくれると助かるんだが」


俺はちょうど手が空いていそうな女の子に、イツキ用の薬を注文することにした。


「かしこまりました。ご予算を教えてください。上質な物から一般的な物まで色々ですが?」


女の子は薬の一覧表を見ながら、ハキハキと手際よく質問してくる。


「じゃあ、上質な方で頼むよ。支払いはこれで」


俺はそう言いながら、ファリス(高位神父)専用の身分証を見せた。

 すると販売員の娘は、店主の元に走って行ってしまった。あれ?俺何か間違えた?


 なにぶんファリスになって間もないし、身分証で買い物するのも初めてだ。

 ファリスの権限の中に、買い物は教会払いというものがある。身分証を見せて、サインをすれば良かったはずだが……


「これはファリス様、店主のナグラでございます。子供用の薬は、取り扱いも用量・用法も難しく、直ぐにはお作りできません。明日の朝お届けしますので、どちらにお持ちしましょう?」


「では【教会の離れ】に。8時に出発だが大丈夫だろうか?それと、雪根草の根も入れておいてくれ」


 親切な店主で良かったなぁ。そうか、子供用は大変なんだな。サインは商品が届いた時で良いと言われ、俺は【教会の離れ】に帰ることにした。


【教会の離れ】に帰ると、ヤダガ正教会のファリス(高位神父)ムーデ様が待っていた。


「薬を買いに行かれたとか。上手く買えましたかな?」


ムーデ様は茶髪に金の瞳、いかにも温厚そうな50歳位のベテラン神父様だった。


「はい。明日の朝持って来てくれるそうです」


俺は質問にニコニコしながら答える。薬屋に行ったことはお見通しだった。


「はっはっ、やはりそうでしたか。ハビテ君それは、こんな若いファリスが居る筈ないと、疑われたんですよ」


大声で笑いながら、ムーデ様は俺の肩を優しくポンポンと叩いた。

 御者のバーデルさんまで、イツキを抱いている肩が震えてる。きっと笑ってるな……


「きっとこれからも、いろいろ大変でしょう。でも、私は期待しています。ハビテ君は必ず使命を果たし、《六聖人》が大陸を救うと」


ムーデ様のありがたい言葉に、俺は胸が熱くなった。俺に期待してくれている人が居たのだ。



 翌朝、ファリスの服を着て、ムーデ様と薬屋を待っていた。

 やって来た薬屋は、2人のファリスの姿を見て驚き、恐縮するあまり頭が上げられなかった。


「薬屋、ブルーノア教会で1番若いファリスだ。お前は会えて幸運だったな。いずれシーリス(教聖)様になる逸材だぞ」


そんな大袈裟なムーデ様の言葉に、薬屋は代金は要りませんからと、逃げるように帰って行った。


『なんか悪いことしたかなぁ……』



 また一人、俺は心強い味方を得て、ブルーノア教の本教会がある、首都シバに向け出発した。

いつもお読みいただき、ありがとうございます。

だんだん登場人物が増えてきます。

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