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予言の紅星2 予言の子  作者: 杵築しゅん
予言の子  編
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イツキの危機

 カイの街は、隣国ミリダに一番近い大きな街だが、国境までは馬車で半日かかる。

 国境では、いろいろと厳しい検査があり、最低でも半日の時間を取られてしまう為、今夜は国境の宿に泊まることにした。


 このランドル大陸には六つの国がある。それぞれの国と国との国境の入国口は、大体2箇所で、国境の両側に国境警備隊と検問所、国境の宿が設置されている。


 ランドル大陸の地図を見ると、その中心にハキ神国があり、ハキ神国をぐるりと囲むように他の5国がある。

 西のレガート国は、大陸の中でも治安が良く住み易い。歴史と伝統もあり、大国ゆえ発言権もある。


 レガート国の下、南西に小国ミリダがある。ミリダ国は工業に力を入れており、技術は優れているが、治安はあまり良くない。


 レガート国の北東側であり大陸の北には、小国カルートがある。レガート国とは同盟国である。


 大陸の東には大国ダルーン王国があり、なにかと揉め事の多い国であり、何故か伝染病の発生し易い国である。


 大陸の南東にはイントラ連合がある。商業が盛んで、国王制ではなく豪商の中から代表を決めている。


 大陸の中心にある大国ハキ神国は、ブルーノア教の聖地であることから、神国を名乗っている。



 レガート国は、ハキ神国と隣接はしているものの、3,000メートルから5,000メートルの山々が連なる、ランドル山脈を境にしているため、直接入国することはできない。

 よって国境の入国口が無いため、ハキ神国にある本教会に行くためには、隣国ミリダ国から南ルートで入国するか、もう一つの隣国カルート国から北ルートで、迂回して入国するしか方法はなかった。


 レガート国とミリダ国は友好国である。

 しかし、ミリダ国は、最近ハキ神国から突然侵攻され、国境の港街アールを失った。

 ハキ神国は、海に面してなかったので、海上航路を確保するため侵攻したのだ。

 緊張状態にあるミリダ国は、厳戒体制で検問に当たっている為、入国は出来ても、目的地がハキ神国の場合、審査にかなりの時間を要するだろう。

 まあ、俺は教会の人間なので、疑われることはないだろうが・・・




  俺は国境の宿で夕食を取り、イツキにヤックの乳を飲ませて一段落したところで、《予言の書》について考えていた。

 トーマ様から聞いた《予言の書》には、『1070年以降大陸は、混乱と戦乱の時代に突入する』と、記してあるらしい。

  確かに、2年前(1082年)のハキ神国のミリダ国侵攻から始まり、昨年(1083年)は、レガート国のクーデターで、現在も内乱状態だ。

 俺はあまり覚えていないが、1072年からダルーン王国では、原因不明の疫病が流行り、2万人以上の人が亡くなったそうだ。


 そう考えると、つい先日まで、何の手掛かりも無く《予言の子》や《六聖人》を探せと言われて、納得いかない思いでいたが、結局《予言の書》に記載してある通り、こうしてイツキに出会えた。

 

 イツキが本当に《予言の子》なのかは、本教会でリーバ(天聖)様の判断を仰がなければ、はっきりしないのだが、何故か俺には確信がある。

 リーバ(天聖)様の言うところの、俺が《予言の子》や《六聖人》を探し出す使命を持つ《予言の旅人》であるならば、イツキとの出会いは運命であり、必然であるはず。


 これからも俺は《六聖人》を探して、大陸中を旅して回ることだろう。

 そして俺の能力【能力者のオーラが見えること。能力者の持っている力が、色によって判別できること】を以て、《予言の旅人》たる使命を果たさなければならない。

 イツキに出会えたと言うことは、使命を果たすことが出来ると言うことだろう。


 では、《予言の子》であるイツキの使命とは何なのだろう?


 この混沌の時代に生まれ、《六聖人》を助けて、大陸を平和へと導くのか?

 イツキの持つオーラの色は金色だ。

 水は青、火は赤、風は白色、土は茶色、怪力や念動力は黄色、心に直接働き掛ける力は紫、植物系は緑、文字を使う者は灰色、その他の能力者には、まだ会っていないので色は不明だが、恐らくイツキの金色は、唯一無二だと思われる。


 俺にはイツキの金色のオーラの、力の意味が分からない・・・

 もう少し大きくなったら、自分の意思で力を発揮するだろうから、その時知るしかないだろう。

 ただ、イツキが自分の能力に気付かず、知らぬ間に力を使い、回りを混乱させることも、考慮すべきだろう。




 翌朝、無事に国境を越えた俺達は、ミリダ国で2番目に大きな街ダリに1泊して、3日目の夕方に、問題のハキ神国との国境に到着した。

 4日目の朝、国境の宿を出て検問所に向かおうとした時、イツキが急に激しく泣き出した。


 さっきまで、ご機嫌で笑っていたのに……?

 すると、馬車が急停車し、ドアが乱暴に開かれた。


「騒ぐな!俺達をこの馬車に乗せて、検問所へ行け。今から俺達は教会の神父だ。神父の服は無いのか?」

そう言いながら、2人の男が馬車に乗り込んで来た。


 1人は剣を手にした、小柄ながらもどこか機敏で隙のない、金髪で30歳くらいの男。

 もう1人は、華奢で顔色が悪く、おどおどした感じの、銀髪で18歳くらいの男。

 この大陸で銀髪なのは、殆ど貴族や王族である。この気弱そうな男も恐らく貴族だろう。


 御者のバーデルさんが慌てて御者台から降りてき「大丈夫ですかハビテ様?」と声を掛けてくる。


「大丈夫だ。騒ぐな。荷台から俺の荷物を降ろしてくれ。服を出す」


ひとまず騒ぎにならないよう、声を掛け指示を出す。


「ただの神父で若造のくせして、偉そうに馬車かよ!いい気なもんだな」


神父に対して敬意の欠片もないナイフを持った男は、どうやらブルーノア教徒ではないようだ。


 相手の目的が判るまでは、時間を稼ぎながら、イツキの身の安全を第一に考えなければならない。

 御者が荷物を渡そうと、馬車のドアを開けた。その時、もう一人の男がドアに近付こうとする。


「逃げたら殺すぞ!」


 気弱そうな銀髪の男が、ドアの方に一歩踏み出しかけて、剣を突き付けられていた。


「こいつは犯罪者で、ハキ神国に連行するところだ。俺は役人だから、お前達が静かに命令に従えば、赤ん坊の命共々危険な目に遭わすことは無い」


低く脅す声は、役人とは違う胡散臭い感じがした。役人がナイフで脅す訳がない。

 どうやらこの2人は、仲間同士ではなかったようだ。脅された男の方は顔面蒼白になっている。  


「荷物を開けるから、この子を抱いていてくれ」


イツキを気弱そうな男に渡し、俺は荷物の中から服を探す振りをする。

 今まで泣いていたイツキが、泣き止んだところをみると、意外とあやすのに慣れているのかもしれない。


「すまない。予備の服を入れ忘れたようだ。しかし、私の連れだと言えば大丈夫だと思うが……とにかく、ハキ神国に入国できれば良いのだろう?」


荷物を御者に渡し、荷台に積み直したら、馬車を出すよう指示する。


「ああそれから、ここに乗っている者は、私の部下ということで頼むよ」と、御者のバーデルさんに付け加える。



 無言のままで少し走った頃、気弱そうな男の方が、時々顔をしかめて、チラチラと右腕を気にしている。


「怪我でもしているのか?」


 良く見ると、右腕からうっすら血が滲んでいる。もう一人の男に斬られたのだろうか。


「要らない心配などするな。いいな、必要なこと以外を話せば、この子の命はないからな!」


ナイフを持った男は、身勝手なことを言いながら、俺の方を睨み付ける。 

 さっきは、危険な目に遭わさないと言ってたはずだが、どうやら全く信用できない奴らしい。

 男はイツキを気弱そうな男に抱っこさせたまま、イツキに剣を突き付ける。

 どうしたものかと思案していると、とうとう検問所に到着してしまった。


「ブルーノア教会の方々ですね?申し訳ありませんが、形式なので全員一度降りてください」


済まなさそうに説明する検査官に言われて、一同馬車から降りる。


「神父、赤ん坊は私が抱いておきます」


ふん!頭のいい奴め。自称役人を名乗るナイフ男は、イツキを人質に取った。


「う、わーん。うぎゃー」


突然聞いたことの無い異様な大声で、イツキが泣き出した。

 俺は何かされたのではとギョッとしてイツキを見る。そしてナイフ男を睨む。


 するとそこには、信じられない光景があった。


「・・・?」


俺は見間違いかと思い、目を擦った。


「えっ?」


もう一度イツキを見て目を擦る。見間違いではない!!



『何故だ!銀色のオーラが視える!』


いつもお読みいただき、ありがとうございます。

誤字脱字等ありましたら、教えてください。

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