四章
今、私たちは屋根裏部屋のドアの前にいる。
いったんかがまないと入れないほどの小さいドアだ。
「あるとしたら、ここしかないよね。」
重々しく、肩にほこりをのせた莉愛が言う。
「そうだよね。もしなかったらお手上げだよ。」
本当にお手上げをしながら言う百華。
「うん。箱の見つかった物置になくて、お店のお庭にもなくて、倉庫のダンボールにもなくて。…大変だったよね。」
ため息まじりに言うと、みんな深くうなずいている。
そう、さっき私が言ったように、どこにも見つからず、手がかりも全然なかった。
最初に、人形の見つかった物置に行ってみた。
やっぱり、見つかったところの近くにあるのでは?という莉愛の考えから。ともかく暑いだけの物置には、放置されたままの大工道具と、古くなったいすだけしかなかった。
次に、百華の考えで庭を探した。
と言っても、全面を掘り返したり、草むしりをするわけにもいかない。手分けして、影になっているところだけを集中的に探した。
一番の計算外は、蚊の大軍だった。
何も見つからない代わりに、大量の虫刺され痕だけが残った。(一番多く刺されたのが自分だった気がする…なんか悔しいな…)
そして、私と妙さんの考えで、商品の在庫がしまってある二階の部屋に行った。
新しいダンボール箱も、古くてよれっとしているダンボール箱もごちゃごちゃにおいてある。
「なんか…すっごく大変そうだね…」
「うん…」
そのまま、何気なくダンボールの山に百華が手を置いた。
あっという間もなく、ぐらりと山が傾き、私たちの上に倒れてきた。
「利穂、百華、危ないっ!」
バタン!ドサドサ・・・ゴトッ!ザスザスザス・・・ばきっ
とっさに莉愛が私と百華の手を引いてくれなかったら、箱の中で生き埋めになっていただろう。
改めて崩れた山を見る。最初よりもっとひどいことになってしまった。
私が小さなドアを見つけたのはそんな時だった。みんなで崩れたダンボールの山を片付けている時だった。突然山の影からドアが現れた。開けたくなる衝動を抑えて、みんなを呼ぶ。
「確かに、妙なドアね。」
「中に何があるのかな?」
「速く開けてみようよ。」
―というわけで、ここまでたどり着いた。
妙さんがドアノブに手をかけ、押し開ける。錆びついていたのか、変な耳障りな音を立てて、ドアは開いた。中からほこりっぽい空気がじわりと流れ出てくる。
そこにあったのは、図面を書くための台といす、そして、いくつかの空の木箱以外は何もない、殺風景な部屋だった。
上にはほこりがベールのように薄く積もっている。
「なんだか、拍子抜けしちゃったね。」
苦笑いしながら百華が言った。
「うん…期待しすぎだったかな。ちょっと悲しい。」
莉愛まで気持ちが下がっている。
うん?台の上に何か置いてあるような?
「ねぇ、待ってよ、莉愛、百華。台の上に何か乗ってるよ。妙さん、この部屋は入ってもいいですか?」
妙さんがうなずいたのを確認して、中に足を踏み入れる。
そーっと近づいてみると、紙?いや、封筒だ。しかも茶色の。そして、封筒にはこうに書いてあった。
「妙へ 星一朗」