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【25】海デート#7 我ら、MIRAI島探索隊!

はろはろー!最近吉綾シリーズの小説を読んで陽気な紗来ちゃんです!

ゲイ校25話始まります

前回、蘭果の所有島『MIRAI島』の島めぐりをしていたのですが...



その時、池の中から妙な音が聞こえて振り返った。


「見つけたぞ!もう逃がさない、UMA!」

「なにっ?!」


ずぶぬれになった人影は、バシャバシャと高波を立てて出てくるとつけていたゴーグルを外した。


「その恰好、まさにUMA!」


蘭果を指さしわけのわからないことを言い続ける女は細く目を細めて言い放った。


「まってまって!あなたなに?」


突然のことで慌てて久弥さんが間に入ると、その女は細かった目を大きく開けて嬉しそうに声を上げた。


「クミた~ん!!何でここにいるの?!」

「やだ、その声、来夢?てか、何やってんのはこっちのセリフよ!」

「えっ?」

「人の所有島に勝ってに入って!こらっ!」


こつんっ、とこぶしを振り落とし久弥さんは続けた。


「なんであんたが...」

「何って..撮影だよ、テレビの」


その時、僕たちを囲んでいた叢から大勢のカメラを持った人影が現れた。あるものは「カット!」と言って、あるものは「なにやってんだよ」などとぶつぶつ言っている。


「あなたたち何?こっちは今撮影中なんだけど」

サングラスをしたおおらかな体系をした男が口をとがらせてやってきた。


「おじさん誰?」

「僕は通風テレビのプロデューサーだけども?..ん?だから君たちは何なんだ?」


そこにさっきに女が入ってくると慌てたように身振り手振りをして説明した。


「UMAを探しに来た?」


内容は、この誰も立ち寄ったことのない無人島にUMAと呼ばれる未確認生物がいるのではないかという探索系の番組の撮影に来たいうことだった。


「つまり、来夢はその収録に来たってこと?」

「うん。今日のあたしはUMA探索隊のリーダー!隊長なのだ!」


これはいったいどういうことなのか。蘭果を見ると彼女は眉間にしわを見せて首をかしげていた。


「蘭果、これは一体..」

「知らないのよ私も...。というかおじさまこんなこと一言も言わなかった。」


意を決して僕は彼らに尋ねた。


「すいません、ちょっといいですか?」

「君は?」

「僕はここの所有者の友達で、保野倉茲といいます。あの、許可は誰に?」

「許可なら高台(こうだい)さんにとってありますよ。高台さんのお知り合いで?」


予想通りの展開だった。


「あの、この島の所有者は彼女なんですけど...」

「えっ..このお嬢さんが?」


高台(こうだい)さんと連絡を取りあった結果、やはり予想通り連絡に食い違いがあったことが判明した。蘭果は事情を理解すると、番組の出演者の来夢という女が久弥さんの知り合いということで、今回は特別に撮影することを認める形となった。


「改めて、こちら私の知り合い...というか、はとこの来夢さんです。モデルやってます、はい。」

「ちょっとクミたん!なにそのそっけない紹介!」

「じゃあ自分でしなさいよ」

「むぅ~!けちっ、クミたんのけちっ!...みなさん、グットモーニング!あらためてモデルのraimuことクミたんのはとこの来夢ですっ!よろよろ!」


真っ白いバスタオルを羽織う来夢さんは、さっきからずっと久弥さんの腕をもって放そうとしない。愛弘さんとは似ているようで似ていないことは確かだが、なんだか釣り合わない二人だ。まるで学習机とセットにされている木製の椅子がパイプ椅子に変えられてしまったような。


「蘭果ちゃんっ!今回はありがとうっ!プロデューサーに代わってお礼しとくよぅ!」


来夢さんに手を握れた蘭果はみんなにはわからないように苦笑いしていた。一方の番組プロデューサーというとさっきから池の隅で高台さんと電話をしている。腕を上下に上げて何やら怒っているようだ。


「それで、撮影は終わったの?」

久弥さんが話を振ると来夢さんは困ったように顔をしかめた。


「それがぁ、まだなのよん..。なんでもプロデューサーは見つかるまで帰らないって」

「ありゃ...」


するとずっと黙っていた愛弘さんが口を開いた。


「なら、あたしらで探せばいいんじゃね?」

「愛弘、何言って..」

「そうだね」


言ったのは、彼だった。


「探すって...加月君、ホントに言ってるの?」

「うん。...それで見つからなかったら、それはそれでいいじゃん。この島はUMAなんて住まないきれいな島なんだって言えば」

「加月君...」


彼はよくこんなことを言う。できないならそれでいい。それが自分なんだって。頑張ってみて無理ならそれまで。でも、もしのその先に行きたいなら頑張ってみてトライして達成してみれば。それでいい、そこまでいって僕たちは強くなるのかな。


「そうね」

蘭果が言った。


「それでもし何かいるならそれはそれでこの島に一つ特権ができるもの。新しいMIRAI島の秘密ができる。こんなわくわくすることある?」


さっきまで困り顔だった彼女の表情は軽くなっているように見えた。


「行ってみようか」

「おっ、茲もやる気だな。...よし!みんなで番組を盛り上げよう!」




空に向かって高く腕を伸ばした。




番組が始まり、僕たちは特注で縫ってもらった来夢さんとおそろいの探検服を着てカメラの前に出た。

プロデューサーは最初はそんなに無理だ、の1点張りだったがみんなの説得と神がかりな執事さんたちの腕を見て出演することを認めてくれたのだ。


「UMAって、ホントにいるの?!raimu♪のUMA探索隊ー!」


来夢さんの掛け声で僕らはイェーイ!を手をあげたり、飛び跳ねる。


「テレビの前のみんな、はろはろー!モデルのraimu♪だよ!さてさて、この企画はねぇ、モデルでタレントのあたいraimu♪が日本中にある無人島で未確認生物、UMAを見つけるという企画でございまーす!」


カメラが回る前とは違う芸能人オーラが来夢さんからあふれ出て、一瞬びっくりして僕の顔はひきつった。すごい、これがテレビの中の人。


「今回はこちら!最近発見された静岡にある小さい無人島『MIRAI島』にやってきましたー!」


広~い、なにこれ!などと言っているとカメラが少し傾き来夢さんはこっちを向いた。


「さてさて~、今回は初回から特別なゲストにお越しいただいちゃってます!てかもうここにちらほらいるけども!あははっ、今回のゲストさんはかわいい私の友達、このMIRAI島の所有者さん蘭果さんと不思議な仲間たちです!」


おい、不思議な仲間たちってなんだ。おい


「ちょっと、ちょっと」


思わず突っ込む。


「えーと..んじゃ〜ぁ、人数が多いので自己紹介お願いしますぅ!」


カメラを最初に向けられた蘭果は少し緊張気味に自己紹介をはじめた。


「えっ..と、みなさま初めまして。このMIRAI島のしょゆ..オーナーの美薗蘭果でございます。今回はわたくしの自慢の無人島にお越しいただき光栄でございます」


さすが蘭果。テレビでもなんでも関係なく上品さを保っている。がんばったな。


「えっと..、蘭果さんの友達の楠原久弥(くすはらくみ)です。今日はこの島に遊びに来ました。えっ..と」


めずらしく久弥さんが焦っている。こういう時は強いのかななんて思っていたけれど、やはりテレビは緊張するもんだな。


「...ちなみに来夢さんとは今日初めて会いました。宜しくお願いします」

最後に小声でつぶやくと一歩下がって愛弘さんを前に押し出した。


「ちょ、..あーえっ、どうも!同じく遊びに来た友達です。果たして未確認生物なんているんですかね、まったく..あはは、ハイ次っ」


恥ずかしかったのか、愛弘さんはそそくさと加月君の後ろに隠れた。


「はい、すみません。みんなテレビは初めてので緊張しちゃって」

「おまえのだろ」


愛弘さんの小声の突っ込みは僕以外誰にも届いていなかった。


「こちらの彼女は愛弘さんです!そして同じく蘭果さんの友達で柿の(かきのは)加月(かずき)と言います。UMA発見頑張ります!」


ここまでの中で一番まともな自己紹介だった。次は僕の番。震える手を背中で隠しカメラを見る。


「えっと、蘭果の友達の保野倉茲(ほのくらここ)です。僕もみんなに負けないよう、UMA探索頑張りたいと思います!」


噛めずに言えて一瞬口角が上がる。自己紹介が一通り終わると久弥さんはさっそく来夢さんに、はとこだと告白されて顔を真っ赤にして照れ隠しをしていた。


それからしばらくは島中を回って、蘭果の小屋には触れずちがう道を進んでいった。島の面積は見た目よりやや大きくて浜辺にはごみ一つない。蘭果の話では月に一度上陸した際に掃除をするらしい。そのおかげで島中はきれいでここは本当に島なのか途中で疑いたくなったほどだ。


それにしても、さっきから頭の上にちらついているドローンが気になってしょうがない。


「ネッシーとかいねーかな」

愛弘さんがつぶやいた。


「ずいぶんベタなこと言うね」

久弥さんが拾った。


「あれ、未確認生物ってどんなのがいるんでしたっけ?」


蘭果のその質問で来夢さんが「はーい!ここで豆知識!」と人差し指を立てて言った。


「未確認生物、UMAといえば代表例としてさっき出たネッシーのほかにいっぱいいるの知ってる?」

「うーん、まぁ...」

「じゃあ、わかった人から答えてねぇ♪」


未確認生物と聞いて最初に思い浮かんだのは雪男だった。


「雪男...?」

「そう!雪男、ビックフットだね!」


保野倉君1ポイント!と指さされるとカメラ下のカンペに『ほのくらくん、喜んで』と書いてあったので取り合えず「やったぁ」と言っておいた。


「じゃあほかには?」

「ツチノコ!」


思いついたように愛弘さんが言った。


彼女も1ポイントをもらうとカンペをみて「うっしゃ」と華麗にガッツポーズを決めた。


時間切れのブザーがなり、「終了〜!」と声を上げた。残りの三人は答えられず、来夢さんがまた続ける。


「他には、河童やモスマンなどはいますよ~。クミたん、加月くん、蘭果ちゃん不正解~!次は頑張ってねん」


スタッフから渡されたボードをカメラに向けて着々と進める。残念そうに加月くんはため息をついた。






あたりも暗くなりはじめ、撮影も終盤に近づいていた。


「どこですかー!UMAー!」

海に向かって来夢さんが叫んだ。


「ここにいるかもって聞いてやってきたのにぃ...」

「来夢...、あきらめよ」


崩れ落ちた来夢さんに駆け寄る久弥さん。ここ三時間くらいしかこの仕事に関わっていないのにもうテレビ慣れをしたようだ。


海に落ちてゆく夕日が二人の背中とマッチしてまるで恋愛ドラマの最終回のように見える。オレンジの背景に男女のシルエット。久弥さんのボブヘアがどこか男の子のように見えてならないから。向き合う顔のラインが今にも口づけを交わすように見えてつい加月君に目がいく。


「きれいだね」

隣の蘭果がつぶやいた。


「うん」

蘭果のくいっ、と上がったまつげが遠くにぼんやり見えるヤシの木とうまくマッチして美しい。


「何見てんの?」

二人を見たまま蘭果が言った。


「ううん、別に」

「ふーん..。...えっ...ねぇあれ、みんなあれ!」


さっきまでうっとりとしていた蘭果の眼が一瞬で見開き、蘭果は叫んだ。


「ネッシーじゃない!?」


「えっ」

全員海のほうを見ると、細長く伸びた何かの頭が右を向き次にこっちを向いた。


「おお」

出演者、プロデューサー、スタッフ共にその頭から目が離せない。次第にそれは少し口をパクパクさせると海の底へと消えていった。


ため息が出た。息をしていないことに気づき慌てて息をおもいきり息を吸うと少しむせた。


「今のって..」


久弥さんがつぶやく。


それからしばらく沈黙が流れて僕は少しうれしくなり、「ははっ」と微笑んでいた。




「さて、初回からすごいものを見てしまいましたがいかがでした?」


急に話を振られて焦っていると前に出て彼が言った。


「いやまさか最後に顔を見せるなんて。僕びっくりして腰ぬかしちゃいましたよ」


微笑みつつ答える彼がタレントの様に見えた。


「ということで今回は静岡県のMIRAI島にお邪魔しました!次回は山梨県のあの島にお邪魔しちゃいます!ぜひチェックお願いします!」


「それでは〜、」


来夢さんの合図で言う。


『ばいばーい!』


離れていくドローンを僕らは見送り、カットがかかるまで右腕を振り続けた。





カットがかかり、プロデューサーの「お疲れ様」の合図で僕らは解散となった。陰でずっと見てたのかいつのまにか高台さんがいた。蘭果はすぐさま彼の元へ駆け寄ると何やら起こっているようだった。


「ごめんなさい。私たちまで...」


別荘に戻ると相も変わらずおいしそうな料理の数々が用意されていた。途中来夢さんのマネージャーさんも合流して今夜の朝食は二人を交えてとなった。


「いいのよ、たーんと食べて」

「いっただっきまーす!」

「ちょっと来夢、少しは遠慮しなさいよ」

「何からたべようかなー」

「人の話を聞けー!」


来夢さんは見た目通り元気な人だった。このメンバーで言う誰に似ているのか...。たぶん一番似ているのはさっきからしゅうまいをもぐもぐ食べている高台さんだろう。


「あ~ん」


彼がミートボールをくれた。口の端についたソースをなめると、「おいしい?」と微笑んだ。


「うん、おいひい」

「よかった」


『ごちそうさまでした』


部屋に戻ると、開けっ放しの窓のカーテンが揺れていた。僕はそこから顔を出して真っ暗な空を眺めると小さい星々がキラキラとこちらに輝いていた。

明日は最終日。せっかくだから勉強会でもしようか。


僕はスマホに明かりを灯し、久弥さん宛てにメールを送った。



つづく

最後までお読みいただきありがとうございます

一応あと5話くらいでいったん完結させようかなんて思ってます。

第一章完結的な?wwそんな続けるつもりなかねぇ。

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