Episode 4 私達の休日
「いいのか?学校行かなくて?」
ベッドの上で寝ころんでいる私を見つめながら、イスにと座ったノヴァが、私にと声をかける。私は、ベッドの上からノヴァを見つめながら、小さくため息をついて、時計を握りしめて、それをノヴァにと見せた。
「今何時だと思ってる?」
「12時半だな」
「こんな時間に行ったらかえって教師たちに、学校を舐めていると思われかねない」
「そういうものなのか?」
「そういうものだ」
「ふーん、なら、私が代わりに……」
「絶対ダメだ!」
私とノヴァの視線が絡まる。
「なんでだ?」
「なんでもだ!どうせ、お前のことだ……昨日の話を聞く限り、いろんな奴に声をかけたんだろう?」
「……」
視線をそらすノヴァ。
「お前のために、友人を作ろうとしてだな……」
「……私は、あのクラスで浮いてるんだ!そんな奴が、いきなり話しかけてきたら驚くだろう!?」
「自分で浮いてるとか言うものか?」
「ふん、自分の立場くらいわかっているつもりだ。だからといって治すつもりもないがな」
ベッドに座り直しながら腕を組んで頷く私を見つめるノヴァ。ノヴァは、少しの間考えながら、何かを思い出したかのように、深いため息をついて顔をうつむける。私は、ノヴァを見つめながら首をかしげる。
「どうした?」
「……お前を見ていると、自分を見ているようでたまに凹むな」
私は、そこで彼女もまた自分の世界では同じようなことをしていたんだろうな……ということに気が付いた。私は、そんなノヴァを見つめながら静かに笑う。ノヴァもまた私にと顔を上げると同じように笑った。
「……折角だ、どこか行こうか?」
リアル・ファンタジー
Episode4 私達の休日
Side 綾菜乃羽
他人の気がしなかった。
一緒にいたかった。
たったそれだけの気持ちが……私の心の塊を溶かし始めていた。それに、私は気が付いている。孤独であることは強いこと、孤独でなくなることは弱くなること……。そのことを私は知っているのに。私はノヴァと一緒にいたかった。ただ、それだけ。ただそれだけだった。私の問いかけに、ノヴァは少し考えながら、顔を上げて私を見つめる。知ってるよ……お前も私だから。私もお前だから……。同じような気持ちを抱いていることを。ノヴァ、お前も、抵抗できないだろう?自分の気持ちに……。本当はダメだってこと知っているのに。
「……ああ、行こう」
ノヴァの言葉に、私は立ち上がり、ノヴァも立ち上がった。
誰かと一緒に出掛けることなんてほとんどなかった私には、まともな私服がなかった。でもだからといって授業の真っただ中で制服を着て買い物なんかできるはずもなくて。だから、私達は、それなりの衣服を着る羽目になる。
「ふーん、学校に行くとき以外は、こういった服を着るのか?」
「文句言うなよ?だいたい、ほとんど私服で外に出るなんてことないんだからな」
「制服で行けばいいだろう?」
「学生がこんな時間に制服着て街に遊びに出かけていたら、警察に捕まる」
「警察?」
「ああ、街の治安を守る連中だ」
「なるほどな、確かに学校にしっかりと行かない奴は、悪い奴だな」
「悪かったな?悪い奴で」
私の言葉に、ノヴァは視線をそらしながら私の私服に身を包みながら、楽しそうにしている。普段、こんな姿など見せないのだろう。私は、ノヴァを見つめながらそう感じることができた。私もまた、ノヴァ同様に私服に身を包む。鏡に映り込むのは、ジーパン姿の二人の私の姿。本当に、びっくりする。
「こうしてみると、本当に、区別がつかないな?」
「それは私の台詞だ……まったく、区別がつかない」
鏡に映った私達は、無意識に互いにと身を寄せ合う。鏡に映る二人の少女の表情が砕け、頬を赤く染めている。私達はその顔を見て慌てて、鏡から視線をそらす。
「さ、さっさと行くぞ?」
「あ、うん……」
私達は、部屋から外にと出る。そこにあるのは青い空……。ついこの間まで、いつもと変わらない空だったというのに、なんだかその空は久しぶりに見たような気がした。私達は、アパートの階段を下りていく。
「乃羽、帽子は深く被ったほうがいいのか?」
「そうだな……同じ顔の人間が二人並んで歩いているわけにはいかないだろう?」
「そういうものか……何とも面倒だな」
「面倒……そうだな、私のことなど、放っておいてくれれば……」
ノヴァの言葉に私が答える。
誰も私など放っておいてくれれば、こんなことをしなくて済むというのに……。そうすれば、私とノヴァは、お互いをしっかりと見つめ合いながら、歩き出せるのに。私は、そんなことを想いながら、駅前にと向かって歩いていく。駅前に近づくにつれて、人ごみが増えていく。ノヴァの片手は、こんなときでも、使命を忘れないためか。剣道袋を貸してやり、剣を収めてある。開いている手が私の手とぶつかった。
「まるで私の世界の市場のようだな?」
「似たようなものだ……離れるなよ?探すのが大変だ」
そういった私の手を掴むノヴァ。私は一瞬、握られたことが何かわからなかった。私は、隣にいるノヴァを見る。ノヴァは、私をいつもの表情で見つめながら
「こうしていれば離れないだろう?」
「あ、ああ……」
「どうした?」
「いや、なんでもない」
たまにこいつは……人との距離を何とも思わないときがあるな。それがわざとかどうかは知らないが……。人の心をかき乱すようなことを平気でしてきて。お前はいいかもしれない。でも、私はお前がそんなことをしてきたとき、どうしていいかわからなくなる。お前の行動に……私の胸は熱くなる。それは……私にとっては初めての感覚で。
「凄いな!あれはなんだ?」
「あれは、化粧品だ」
「ほぉ!あんなにたくさんの種類があるのか!?」
「そうだ。私はあんまりしないけどな」
「乃羽!あれはなんだ!?」
「あれはPC用品だ。インターネットという世界規模の情報網をそれで検索したりすることができる。私にはあまり興味のないものだけどな」
「乃羽!あれはなんだ?!」
「あれは、カフェだ。飲み物などを売っている店で、人がいつも集まっている。私は友人がいないから、いったことはないがな」
「あれはなんだ?乃羽?」
「あれはキャバクラといって、男性が女性と話をして淫らな遊びを繰り返す場所であって……って何を言わせるんだ!このバカ!」
思わず答えてしまった私が、ノヴァにと突っ込みを入れる。そのまま足を進めていた私達だったが、前にいたものにとぶつかる。私は不注意であったことを察知し、顔を上げて、その場で謝った。
「すまない」
そこで、目の前の人間が、自分の手荷物に手を通していることがわかった。乃羽は咄嗟に、それがひったくり犯であることがわかった。追いかけるべく、走り出そうとした乃羽が、片方の手が引っ張られる。
「ノヴァ!窃盗犯だ!追いかけるぞ!」
「おい!乃羽!あれはなんだ?凄いな!」
「人の話を聞けっ!!」
結果
私の手荷物を奪った犯人を取り逃がす羽目となった。といっても、財布等はポケットにいれていたため、大した被害はなかった。私は大きくため息をつきながら、肩を落とす。
「すまない。私が浮かれていたばかりに……」
「やめろ。私の不注意だ。お前のせいじゃない」
「「まったく、いつもはこんなんじゃないんだけどな」」
私達が声を重ね合う。その言葉に互いにと視線を向ける私達。その視線はお互いに向けて、嘘だろう?と告げているようなものであった。その視線に言い返してやろうと口をあける私達だが……、途中で言葉を止める。
「不毛だ」
「まったくだ、自分たちの喧嘩ほど……無意味なものはない」
「仕方がない、アイスでも買って帰るか?」
「アイス?ここにもアイスがあるのか?」
「知っているんだな、それは」
「私の大好物だ」
「……私も」
私とノヴァは、お互いを見つめながら告げ合う。やっぱり、私達は……同じか。こういった好みとか。私はそう思いながら、売店でアイスを買う。お互いそれぞれ別のものを買って分け合うようにするため。私はチョコ、ノヴァはバニラ。私達は、自分のものを舐める。
「ひんやりして美味しい」
「ああ、美味しい……」
私は、アイスを舐めながら、ノヴァを見る。ノヴァもまた嬉しそうにアイスを舐めていた。私達は、お互いを見つめ合いながら、相手の舐めているものを欲しいと思う。それを私もノヴァも察してか、互いのアイスを互いにと向けあう。私達は、一瞬躊躇したものも……舌を伸ばして、互いの舐めかけのアイスを舐めあう。
「「美味しい……」」
私達は、お互いに向けて、笑顔を見せた。
ノヴァの笑顔は……私と同じ顔とは思えないほど、可愛らしくて……、ずっと見ていたくなってしまいそうな、そんな気持ちにさせられた。そういえば、今日はずっと私、ノヴァの顔ばかり見ていたな……それに、繋いだこの手は、互いの指にからめ合うような恋人繋ぎで……あれから離してなくて。
「本当に……私は、何をしているんだろう」
「……まったくだ。本当に、どうしてしまったんだろう、私は」
アイスを間に挟みながら、私を見つめるノヴァが口を言う。
そう言いながら私達の繋がれた手はさらに強くお互いを求める。
「……楽しいな」
「ああ……楽しい」
「「お前と一緒にいると……」」
わかっている。
これがいけないことだっていうことは。
私自身が、私自身でなくなってしまうことだってわかっているはずなのに。
ノヴァ、私は……止めることができない。
Side ノヴァ・インフィニティ
おかしくなっているのは……乃羽、お前だけじゃない。
私もだ。
お前といたい。
お前と……一緒に。
私は、首を横にと振り、自分の想いを振り払おうとする。いけない。こんな想いを持ってはいけない。こんな気持ちは間違っている。私は戦士だ。私は一人で今まで戦ってきた。それは、誰かに想いを寄せること……それは弱点につながるから。私は強くならなくてはいけない。だから、弱さをつくってはいけない。知ってる。そんなことは元の世界で散々言われてきた。それこそ、ずっと……だから、私は、家族との縁を切り、今まで友人など作ったことなどなかった。だから、誰かが目の前で死んでも、それは仕方のないことだと思って、割り切ることができた。
それが私の強さだ。
でも。
……乃羽。
「そろそろ……帰ろうか」
「ああ……そうだな」
私達がつないだ手が微かに強くなる。
それが何を示しているのか……私は考えないようにした。それは乃羽だってそうだろう。私達は、どうしてこんなにも……お互いを。ダメだ。考えるな。私は、今日、乃羽と一緒に遊んだ。楽しかった。それだけでいいじゃないか。それだけで十分だ。それ以外の何があるというんだ。私達は、一緒に遊べて楽しかった。それだけで……いいだろう。
「!」
そんな物思いにふけっていた私の頭に痛みが走る。それは、近くに魔物がいることを示すものだ。私は、乃羽の手を握ったまま走り出す。
「お、おい!乃羽!」
「近くに魔物がいる!」
乃羽を引っ張りながら、私は魔物の気配を追いかける。
どうして乃羽と一緒に走り出したのか、彼女を巻き込むつもりはなかったのに。私は無意識に乃羽の手を掴んで走っていた。私の手にもしっかりと乃羽の手が掴まれている。私達は一緒に走りながら、狭い路地裏にと足を踏み入れる。
「こっちだ!」
狭い路地裏の中は、市場と違い夕方でも既に薄暗い。
私達の視界に入ったのは、一人のニット帽をかぶった男の姿。私達は、その場所に立ちながら、男を見る。男の顔を見て乃羽が声を上げる。
「あ!こいつ、私のバッグを盗んだ奴だ!」
男は、私達を見ると目をぎらつかせる。とてもじゃないが人間とは思えないような顔だ。まず、人間は、そんな長い舌を持ってはいない。
「シャアアアアアアアアア!!!!」
咆哮を上げながら、男の身体が変化する。男の身体は紫色にとなり、巨大な蛇の姿にと変化した。巨大な蛇となった男は、そのまま私達にと襲い掛かる。狭い路地の中では、私と乃羽の連携攻撃は難しい。
「乃羽!こいつは……」
私に任せろ!そう言いたかった。
でも、乃羽は、私の握っている剣を同じように持った。
「これだけの巨体だ!お前だけじゃ叩ききれないだろう!」
「乃羽……」
私達目がけ突っ込んでくる大蛇。
私と乃羽は同じように剣を握りながら、突っ込んできた蛇の頭を二人で握った剣で叩き斬る。だが、蛇の皮膚は強固であり、私達の攻撃でも、蛇を切り裂くことはできない。だが、怯ませることはできた。大蛇は、私達から距離を取る。
「さあ、次はどうする」
「……随分と楽しそうだな」
乃羽を見た私が問いかける。
普通であるならば、こんなバケモノを見れば驚くものだというのに、乃羽はどこか楽しそうだ。
「お前こそ、随分と余裕だな?」
乃羽の問いかけに、私もまた乃羽と同様に笑っていることに気が付いた。こんな魔物との戦いで、楽しくなるなんてこと今までなかったのに……。これも、乃羽と一緒にいるのせいなのか。私はそう思う。
「シャアアアアアアアアア!!!!」
大蛇が今度は飛び上がり私達にと飛びついてくる。私達はその攻撃を避けるために、大蛇が飛んできた方向にと走る。大蛇が振り返ると同時に、私達の身体にと尾を巻きつける。
「乃羽!!」「ノヴァ!!」
同じ声が重なり合う中で、私たち二人の身体が、大蛇の身体にと巻きつけられる。私は剣を握り、大蛇の身体を切り裂こうとするが、そんな私の前にと乃羽の身体が重なる。私達は蛇の身体にまきつけられて、その体を二人同時にまきつけられたものだから、全身を密着させるようになってしまったのである。
「「……」」
私達はお互いを見る。
こんなに近くでお互いを見たことなんて当然ない。
「き、きつい……もう少しそっちに行け」
「く、くう……それはこっちの台詞だ」
「お前の胸が私のものにあたっているんだ」
「お前こそ、顔に息がかかって……」
私は身体が一気に熱くなるのを感じた。
顔が赤くなり、体が熱くなる。
私が前を見ると、同じように顔を真っ赤にした乃羽の姿があった。乃羽は、なんとか脱出をしようとするが、力が強くどうすることもできない。それよりも、私達、お互いの身体を密着させてしまっていて……。私の目の前で、私と同じ顔の乃羽が、口をあけて、息を漏らす。私はそんな乃羽の顔を見ることができず、視線をそらそうとするが、それでもできぬまま、私の胸に押し付けられる乃羽の胸の柔らかさをイヤでも感じてしまう。
「は、はやくなんとかしろ」
「私に、それをいうのか?」
「くふっ」
「あんっ」
「へ、変な声をだすな」
「お前だ、お前」
私達は顔をさらに真っ赤にさせてお互いに言う。
額が辺り汗でお互いの髪の毛がお互いの額にと張り付いて、鼻のてっぺんがくっついて……口から漏れる息を交換してしまう。私達は涙目になりながら、お互いを見つめ合う。赤く染まった乃羽の顔を見つめてしまい、その唇を見つめてしまう。目が……離せない。心臓の音が高鳴り、それは、目の前の乃羽の心臓の音までも聞けてしまう。同じ心臓の音が、互いに伝え合う。私達の身体に互いの体温を教え合う。目が、お互いの欲しているものを伝え合う。
だ……ダメだ。
これ以上は、ダメだ!!!
「「はああああああああああ!!!!!」」
私は握っていた剣を振るい、蛇の身体を切り裂いた。
「はああ!!だああああああ!!!!」
顔を赤くなったまま、何度も切り裂いていく。自分の雑念を振り払うようにして……。
「ノヴァ!」
乃羽の言葉を聞いて、私は無意識のうちに彼女に、剣を渡していた。彼女もまた、私同様に、体内の熱を発散するかのように切り裂いていく。
「うわあああああああ!!!!!」
気が付けば……あたりは蛇の死骸があった。
「「はあ……はあ……はあ……」」
私達は大きく息を吐きながら、お互いを見る。そこには、疲れ果てた私の姿があった。同じ姿の私達は、小さく笑いながら、その場所から立ち去った。駅前から帰る中、私達は汚れた服を拭いながら、歩いていく。隣同士、どこか寄り添い合うように……。私の肩に乃羽の肩が当たる。
「いろいろあったけど楽しかったな」
乃羽の言葉に、私は頷いた。
「ああ」
私は乃羽の言葉に素直に答える。
本当はいけないこと。
お互いわかっている。
私達は誰かと一緒にいて、気持ちを通わせ合ったら駄目なんだ。
それは結果的に私達を弱くしてしまう。
だから、本当はこんなことをしてしまってはいけないんだ。
でも
お願いだ。
今日だけは……。
「帰ったらすぐシャワーだな……」
「待て、私が先だ」
「なんでだ!?私が先に言っただろう!?」
「部屋主は私だ、決定権は私にある」
「誰のおかけで勝ったと思っている」
「私だ」
「ほぉ、昨日とは打って変わっての強気っぷりだな?」
「ふん、いつまでもお前の足を引っ張るつもりはない」
私達はいつの間にか、また手を繋いで歩いていく。
私は、心が満たされている感覚を始めて覚えた。これが……きっと幸せというものなのかもしれない。私は、それをもう一人の自分と出逢えたことで知った。それが何を示すのか、私は理解できなかった。いや、理解したくなかった。
「……ノヴァ」
乃羽が私を呼ぶ声に、私は振り返った。
短い髪の毛が風で靡く中で、乃羽は私を見つめている。私もまた、同じように乃羽を見つめていた。彼女は、私に近づいてそっと、身体を抱きしめる。私はその瞬間、体が熱くなるのを感じて、そして胸が痛くなった。乃羽は、私を見つめながら、小さく笑みを浮かべて、顔を近づける。私は、そんな乃羽に対して、同じように顔を近づけ、乃羽の背中にと手を回していた。そしてゆっくりと目を閉じて……。
「って、うわああああああ!!!!」
私は、ベッドの上で起き上がり、大きく息を吐く。
「びっくりするからやめろ!!朝から……」
隣では、私のことを見ていた乃羽が、驚きの表情で声を上げている。私は、隣にいる乃羽を見て、それが夢であることを知る。額を抑えながら私は自分の先ほどまでの夢に、苛立ちを覚える。ダメだ。あんなことを想ってしまうなんて……。私は何をやっている。
やっぱりダメだ。
私は。
「……あー、昨日の今日だっていうのに、まったくゆっくり眠れもしない」
「誰のせいだ!誰の!!」
私は思わず乃羽にと告げながら、顔を赤くしていう。誰のせいで、こうなったと思って……。私は勝手に怒りながら、乃羽を見つめる。そんな時だった、部屋にチャイムが鳴る。
「ん?こんな朝から誰だ?」
私の問いかけに、寝癖の乃羽がベッドからたちあがる。
乃羽はあわてた表情でジェスチャーで静かにするように私に告げる。元々、ここは乃羽の家。同じ乃羽とはいえ、こんなにも瓜二つの女がいたとなっては、知人なら驚きだろう。
『乃羽~~!いるんでしょう?私、蓮華!』
レンゲ?
私はその名前を聞いて、頭に浮かぶ女……それは、私の世界を破壊し、この世界にと放り込み、乃羽を傷つけようとした相手。
私は立ち上がる。




