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One Sheep  作者: 相原 陸
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最終話・記憶

 急に照らされる光に思わず目を細めた。

「…っ何だ…?」

「構えよーい!!」

目がクラクラして声だけが聞える。眩しい中をめいっぱい目を見開いて

見えたのは俺の周りを囲む警官の姿。盾をかまえ銃を持って…。一体、どういう事だ…?

「あいつだ!!!あいつがこの警察署を爆破しようとしてたんだ!!」

右端から聞えてくる声。振り向いたら、あの凶悪犯が見事に捕まっていて、キャルミーの奴らが居た。

「…なっ…ハメたのか…!?」

信じられない光景に心底からグツグツと怒りが込み上げてくるのが分った。共にエレベーターの会話が思い出された。


“実は今から始る会議はある男からの緊急連絡で始ってね。”


「…お前ら…っ…!!!!!」

嘲笑ってる、『何、騙されているんだ。』って。けど、一刻も早く彼女に会いたかった。爆破まで少ししかない…。

逃げるしか…。  頭をひねって考えた。もう30秒もない。どうする…どうするんだ…。玄関に居たら爆風で吹っ飛ばされるどころか運悪けりゃぺしゃんこじゃん。

その時だった。一人の警官が謝って発砲。俺の右足に命中して、バランスを崩し倒れてしまった。

「だ、誰だ!?発砲した奴は!!まだ何も言っていないぞ!!」

倒れる時、公園の中央に立つ時計が見えた。7時24分。…とっくに過ぎてる…。…そうか、爆薬も・・嘘か…!!!

「っ…やろ…っ!!!!」

「危ないぞ!!あいつは武器をたくさん隠し持ってるんだ!!今の内にやってくれ!!」

会話が聞える…。キャルミーの奴と…エレベーターで話した声の主。

「そうか…。…ならば次動き出した時は…」

…死ぬのか…俺…。彼女に会えずに…。…。


空中に『発砲用意!!』というのが響き渡った。  


「青年よ、大人しく持っている武器を捨て立ちあがり両手を上げなさい!!」

スピーカーから伝わる言葉、けれどそんな言葉も足の痛み手前では無意味だった。

「るせぇよ…」

…このまま死ぬのだろうか。と思うと恐ろしい恐怖が込み上げてきた。手の震えが止まらなくなり全身で死にたくないと叫ぶ声が聞える。


「震えんな…。俺は死んでもいいんだ…。」

震えは止まる事なく目だけを閉じてそのままうつ伏せになる、その時だった。



「っ…しゅうー!!!!!!!!!!!!!!!」

足音が聞える。コッチに走ってくる、聞き覚えのある息遣いと…初めて聞く声。


「…ぁ…ゃ…?」

俺は重たい体を無理に起こした。彼女だ。コッチに走ってくる。その後ろに警官が発砲しようとしているのが見えた。


「綾!!!」

トラックから引張る様に彼女の細い腕を引張って。俺の中へと沈み込ませ、ほっとした瞬間


背中に鈍い音がした。


そして その音は続いて2発、3発と、続いた。

「…しゅ…しゅう…!!!」

彼女がいる。目の前に…。

「…綾…な…んだ…話せる…じゃねー…か。」

「…あ…血…が…。…っゃめて!!!…っめて!!!あめて!!!」

目の前がクラクラしてきた。けど、力はぬけない。彼女が中でもがいてる。はなせない。

はなしたくない。やっと掴めたんだ。

「あめて!!しゅうがひんぢゃう!!!…ひゃ…っめて…」

泣いてる。…泣かせてばっかだ…。声が出ない。力が入らない。俺は彼女の上へと倒れそうになった。

「…ぁっ…ゃっ…。紙…。」

後ろで『発砲中止!!!やめろ!!』という声が微かに聞える。

「っ…ひゃみ…?」

目も…かすんできた…。綾が…見えない…。

「…昨日…ぁ、げた…ろ…。」

「ひゃって、ひなないで!!」

下手糞な日本語。…音も聞えなくなって…あんなに高鳴っていた心臓がゆっくり動き、止まりはじめるのが分る。

「…ひゃみ…っひゃみっ…。…ぁ…。」

見ただろうか、昨日書いた紙。悲しいってこういう気持ちか。

折角手話覚えようとしたんだけどな…。全部無駄だったな…。



「あんた、の…事…好き…だっ、た…。綾…―――――」

…本当…に…――――。




「…しゅう…?しゅう、目、あひぇて…。ねぇ…衆…衆――!!!!」




***

3年後



「で、彼は悪くない。と?」

コクリと頷き、ニッコリ笑った。

「はい。」

警官はフゥッと一息つき腹を抑えながら飽きれたように見てペンを動かす。

「…ったく、美人になってよ。言い返せねぇじゃん…。」

ふふっと笑って最後は何やら手帳を取り出してそれから更にひとつ紙を取り出した。

「…それは?」

「彼が最後に私にくれた紙です。」

警官に今にも破れそうに2つ折りになった紙を渡し、コーヒーを一杯、口にいれた。

「…“好き”…。か…。」

「可笑しいでしょう?たった2文字に明日の夜、とか言ってたんです。」

警官は

「まぁ、トイレで俺に話した時も言ってたけど。」

と呟けば微笑して改めて彼女を見た。

「…それで、神沢綾サン、あんたはこれから恋でもするの?」

「…いいえ、でも。衆のために幸せになってみせます。」



「私、衆を愛していましたから。」


***


訳もわからないのに苦しくて、悲しくて心はとうに冷えきっていた。

        

        そこへ彼女が現われた。恐れず、一瞬で目を奪われたんだ。


   たった3日間っていう時間一生にしたら瞬きに近い短い 短い一瞬。けど、僕らは恋をした。愛も知った。 

  

  いつかは忘れてしまっても、きっと 心の中で甘い色に輝き続ける



心の支えとなって



     * End *


短く終わらせました。読んでくださった方本当ありがとう御座いました。

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