第6話・弱音
「…言う…な…言うな…言うな、言うな、言うな、言うな…!!!」
「…ぐっ…かっ…あっ…や・・め、わ、…わかっ…た……っ…―――。」
相手の血のひいた本当に蒼白な顔が目に入った時はっと我に返る。
「…ケホッ…ケホ…ゴホッゴホッ…」
後5秒もしめていたらきっと死んでた…。自分の手が震えてペタンッと腰が抜けてしまった。
「…すまない。すまない…っ…!!」
初めてじゃない。
相手を殴るのも、一発いれるのも、首をしめるのも。
怖い と思うのは 悪い事をした と
自分で自分を責めるのはきっと
優しさを知ってしまったからだ。
「…綾…っ…く…。」
俺の頬にはまた涙が流れ出てきて、まるで子供みたいだった。何時の間に泣き虫になったんだ…。
「…ゴホッ…な、何、泣いてるんだ。お前…!時限爆弾の…犯人だろ…」
「…がぅ…違う…本当は、やりたくねぇ…っ。」
「…。」
相手も吃驚したのか、あきれたのか、トイレのドアを閉めて俺の肩をポンポンと叩いた。
「…やらせか?…詳しく聞かせてくれ。」
「…時限爆弾の…犯人だぜ…。お前、警官だろ…。話せねぇよ…。」
途中で他の警官が入ってきたりした。・・・けど、何故かそいつが
『今、ちょっと相談中なんだ、悪いけど他を当ってくれ』とか言って、追い払ってくれた。
だから俺はありのままを話した。
薬を運んでお金を稼いでいた事。 親元から離れて生活してキャルミ―にお金を継ぎこんでいた事。
昨夜、警察署を爆破しろと言われた事。 今、それをしようとしている事。
すぐ外に凶悪犯がいる事。 7時にその凶悪犯が出てくる事。 そして
ストレスで耳が聞えなくて声も出せない人に会いたい事。
「…お前って不運なガキだな。」
「うるさい。…もうコレで全部だ。」
相手が立ちあがろうとした、きっと上に報告するんだろうか。
「…さて、それを話せば間に合うか。まぁ、お前の事は上に放しといてやっ…」
はたまた一発。多分、相当入ったと思う。悪いけど…悪い事してるけど…。
「…悪いけど、ココに居てもらう。告げ口する事は許さないから。」
鞄からヒモとガムテープを取り出した。
「…なっ何すっ、ん゛―――。ん゛―――!!!」
便器にしっかりと括り付けて時計を見た。思ったより結構たってて7時まで後2分だ。
「…警官サン、俺は行くよ。爆破する前に運良くそのヒモが外れるといいな。」
「…ん゛ー!!!…ん゛――!!」
もがく警官。もう、俺は大丈夫。弱音なんか吐いてたまるか。鞄をよっといわせて持ち上げた。
「ん゛――!!ん゛、ん―!!」
「…何言ってるかサッパリ…。なぁ…俺さっき言ったよな。」
後1分。といったトコロだったか、急に外が騒ぎ始めた。良かった、順調に進んでるみたいだ。んじゃ、そろそろこの
警官ともお別れしないとな…。
「…。…………会いたい人がいるって…。」
「大変だ!!この警察署の前に凶悪犯が現われたらしい!!すぐにかけつけろとのことだ!!トイレなんか後にしろ」
「分った。すぐ行く」
「ん゛――!!」
確かに、トイレの外を見たらスッカラカンだった。今いくしかない。
「んじゃ幸運を祈るぜ。…聞いて貰って軽くなったよ。警官も悪くないな、それじゃ。」
もうすぐだ もうすぐ…。
俺はところどころに爆薬を仕掛けた。ベンチの下や、机の中、警報の中…ざっと20個ぐらいしただろうか。外の様子が静まりかえっていったのが分った。
時計を見ると大体7時11分、イメージ通り。そして爆薬も後10分というところ。
俺は急いで、階段を駆け足で降り、出口へと向かった。
やっと 会える。…コレが終われば…
「出てきたぞー!!!!!!!」
ふいに暗い空から眩しい光が照らされる。