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チョコミント  作者: siro


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1/3

前編

昔思いついた走り書きを発見してそれに肉付けしてみました。

学生の頃に描いてた、ほわほわした恋愛漫画です。

”君はチョコミントみたいだね”


”・・・先輩どうゆう意味ですか?”


”そのまんまの意味だけど?”


”・・・はぁ”



それは熱い日差しも過ぎ、夏休みも終わり久しぶりの学校、久しぶりの部室。

他の美術部部員はまだ来ず、今日はこのままお開きかと思いながらも久しぶりの憧れの先輩と一緒に小腹を満たすために買ってきた大好きなチョコミントカップアイスをつつきながら

チョコミントが好きだと言った日、先輩に言われた。


まだ暑い日が続くドキドキした放課後だった。







*****


「・・・それってさ、くどいてるみたいじゃね?」

ふわっふわにパーマをかけ、綺麗にグロスをつけた唇はまるで天使みたいな可愛らしい小顔の少女エリカが口悪く言った。


「ぁーそういわれればそうなのかな?でも意味不明な会話だったけど」

先輩との出来事を嬉々として報告したが、エリカの言いように肘を突いて考えてしまった。


「絶対先輩気があるって!!」

熱が入って人の机をバンバン叩くノリカは既に人の話を聞かずに勝手に妄想の世界へと旅たっていた。

「だってだって、美術室で二人っきり、”誰もこないね(男声)”、”そうですね(女声)””誰も来ないから二人っきりで買い物にいっちゃおうっか?(男声)”でもでも~先輩は心の中では本当は君と二人っきりの時間を誰にも邪魔されたくないしなって思ってだね!!」

ヒートアップしていく友達を眺めながら、適当に相槌を打つ。

「ぁーはいはい」

私、沙耶花はありえない友達の妄想話を聞きながら先輩のことを思い出していた。

自分の容姿は可もなく不可もなく化粧っけがない17歳のめがね女子、成績も運動も並の並、高校デビューするつもりがあえなく挫折したタイプだ。

そんな私は美術部に入ったことで人気の先輩とお近づきになれた、それは部長でもある拓也先輩だ。


成績良し!顔良し!スタイル良し!おまけに優しくて女子にも人気!


これぞ 完 璧 人 間 !


そんな人間いてたまるかー!!と思いつつも、いました、そしてやっぱり何か違うんですね、惹かれちゃいます。

それにどう突っつこうが崩れませんでした。


それだったら、部室に女子がわんさか来そうなんだけど、うちの学校は部員以外の部室への立ち入りは禁止されてるおかげで誰も部室には入ってこない、しかも美術部の部室に来る前にオタク研究部や生物部、科学研究部と、それはそれは濃い部活があるおかげでバリケードのように綺麗な女子たちは来れない。

女子達がキャーキャー騒ぐようものなら、部室から得体の知れないものが飛んでくるのだ。

かえるを顔面で受け止めた女子はちょっとかわいそうだった。


だったら部員としてって入ってきそうだけど、そこは先輩が作った規則によって入って来れなかった。

それは


入部するために3作品作成する。

 1、自由に描いたもの

 2、基礎デッサン(円柱と球体)

 3、好きな画家やイラストレータの模写


まぁ、ちょっとした絵が上手いこやガッツのある子なら、簡単にクリアできる内容だったが、入部した後がまた大変だった。

それは月1で作品を提出、かつ半年に1回以上は美術コンペや、作品応募に応募すること、それができないと簡単に退部させられた。

そんな中、美術部員として生き残ったのは純真に絵を描きにきていた女子と男子だけとなった。

だが、絵好きとあって課題は毎回余裕で終わらせて、各自好きな作品を作っているような状態だ。



「あんたはニブチンなの!!!」

バンという音とともに現実に引き戻された沙耶花は、びっくりして目の前の友達を見返した。

「ちょっと人の話きいてんの?!」


「アハハッハハ。キイテルキイテルー」

ごめん、実はまったく聞いてなかったと心の中で謝罪しながら沙耶花はきになる先輩と進路のことでいっぱいだった。


沙耶花は未だに進路に迷っていたのだ、教師には遅いとせっつかれながら親は別に好きな所に行けというわりには、大学進学を快く思っていない様子だった。


教師陣は絶対に大学まで行けと言われたのだ、その言い分も沙耶花は分かっていた。今の時代高卒で雇ってくれる職場は少ない上安月給だ、友達のお兄さんが大学まで出ていればこんなんじゃなかったと嘆いていたのをよく聞いていた。


そのためにも沙耶花は大学に行きたかったが、美大はお金もかかれば将来が見えないと親にも教師にも言われてしまい行きたい大学を言えないでいた。

将来のことを考えて入れとまで言われれば、成績もそこそこで塾に通っていない沙耶花にはキツイ言葉だった。


悶々と悩んでいる間に、沙耶花の好きな時間が訪れた、それは放課後の部活の時間。


今日は人の集まりもよく先輩や後輩もきていたが、ある集団から皆一歩引いていた。


「私は、普通科に行くわ~。絵はデザインフェスタでそこそこ売れてるし、大学の課題で追われたくないからね。このままフリーでいくわ」


「お前な~そんなんじゃ稼げねーよ。」

「何よーちょっと絵がコンペで賞に入ったからって、あんたの絵がそんなに上手いの?今どき油絵なんて、今はCGよ」


「はぁ?!そんな機械に頼って基礎もなってないやつが何いってやがる、自分の腕でかけないから機械に頼るんだろ、はっ」


「なんですって!!」


うっはータイミング悪い時に入ったー!


沙耶花は入り口で立ち止まって言い争いをしている先輩達を眺めた、片方はCGを駆使して絵をかくのが上手い先輩、もう一人はアナログ人間と豪語し油絵やデッサンが上手い人なのだ、ちなみにどちらの先輩も自分以外の絵は下手だとこき下ろすので似たもの同士だと沙耶花の中では思っている。


「またやってるの?あいつら」


頭上から聞こえる声に沙耶花は見上げると先輩がこつりと沙耶花の頭の上に顎を乗せてきた。

「先輩・・・重いです、セクハラです」


「いやーちょうどいい位置にあるから」

そう言って拓也先輩は沙耶花の上からどいて、他の部員に挨拶し始めた。

それに気づいたほかの先輩達はホッとしたように先輩を呼んだ。


「拓也~うっす。」


「拓也、なんとかして」


「こいつら煩い、なんとかして」


口々に皆言うさまに、拓也先輩は苦笑しつつ言い争いを続ける先輩二人の目の前に割って入った。


「「じゃま!!拓也!!」」


「すげースピーカ」

両脇から怒鳴られた拓也先輩は苦笑しながら肩をすぼめた。


「うっさい!!この時代遅れの爺やろう、今日こそ許せない!!どいて」

どかない拓也先輩に痺れをきらしたミウ先輩が立ち上がるが、それを手で制した。


「はいはいはい、ミウちゃん落ち着いて。君達二人が自分の絵にプライドを持っているのは良く分かったから。

 ちょっと静かにしようか」


その言葉に二人は固まった。

部員は皆心の中であぁ~ぁとため息を着いている事間違いないと思いながら、沙耶花は自分の画材道具を棚から取り出して準備し始めた、お怒りモードの先輩には誰も逆らわないのだ、逆らおうものならノルマが課せられ最悪退部だ。

部員の先輩達はそんな拓也先輩を、独裁者、鬼、と言うがそこまで嫌っている様子はなく、むしろ仲がいい。


「沙耶花ちゃん、今回は何描くの?」

遠矢先輩が椅子を持ってきて沙耶花の隣に腰掛けながら聞いてきた。


「んーエッシャーの”徐々に小さく”にしようかと思ったんですが、途中で飽きそうなので有名な”滝”の模写をしようかと」

そう言って、鞄から沙耶花は一冊の画集を取り出し開いて見せた。

そこには水車小屋とレンガの水路が描かれ、水路はジグザグに上がっていき水が落ちてもとの水路に戻るという、非現実的な水の流れと不可思議な遠近法で描いた絵が描かれていた。


「へー相変わらず沙耶花ちゃんてキチガイなものを選ぶねー、こないだはウィリアム・モリスのステンドグラスだったよね?」


「はい、セント・スティーヴン教会のガタカーです」


「あれね、背景全部草の装飾とか。よく描ききったよな~」

沙耶花が得意とするのは模写だった、自身でオリジナルに描くこともあるがただ綺麗に描けただけで巨匠といわれる人たちのような目が奪われるような作品ができず、満足できないため提出するものは全て模写作品になっていた。

だが、キチガイといわれるゆえんは明らかにA型だろうと思うくらい細かい絵を描く画家ばかりの絵を模写するためだった。


「そう言うお前は、先月の課題がまだ出てないんだが?」

拓也先輩が二人のノルマを追加して戻ってきた。

沙耶花の前に座ると、にっこりと遠矢先輩に微笑だ。


「チャント出シマスヨ?タダ今日ハ忘レタので、今月ノ課題ヲヤリマスヨ。明日ダシマス!|拓也様(悪魔)」

そう言ってそそくさと遠矢先輩は席から離れて、今月の課題作成の準備をし始めた。


「すっごい棒読み」

「あはは、だね」

拓也先輩は笑いながら、先ほど机の上にだしたエッシャーの画集を手にとってページをめくった。

沙耶花は他の部員同様、作品を作るために紙の用意をした。


「今回も模写にするの?」


「はい」

A3と描かれたベニアパネルを取り出し、紙とパネルの位置を確認すると水刷毛で紙を濡らしていった。

慣れた手つきで進めていく様を拓也先輩は見つめながら言った。


「オリジナル描いてみたら?」

その言葉に驚きながらも、パネルを紙の上にそっと置きながら答えた。


「でも・・・オリジナルだとヘタですし。インパクトもないですし」

紙をパネルに沿って折り曲げ、邪道だがホッチキスで紙とパネルと止めてから水張りテープ濡らしながら張っていった。


「そうかな?俺は結構好きだけどな」

思わず言われた言葉に手元がぶれて綺麗に側面に貼り付けていた水張りテープがずれてしまった。

慌てて戻している間に拓也先輩は前から居なくなり、違う部員の場所に行って会話をしていた。


何どうようしてるのよ、私・・・お世辞に決まってるじゃない。


そう心の中で呟きながら、水張りした紙が乾くまで模写をする絵のコピーを取りにいった。


コピー機は職員室の横の用務室に置かれているものを借りるのだ、コピーを取って格子を描いていく、書いた格子と同じ数分紙にも描き模写の準備は整った。


その頃になると、もう部員は各自の作品作りに没頭して静かになっていた。

響くのはキャンバスに走る筆の音や、鉛筆の音、ペンタブの音。


先輩との距離は机三つ分。


沙耶花も同じように空間に溶け込みながら絵に没頭していった。



一応補足説明

【以下ウィキペディア参考】

エッシャー

 →建築不可能な構造物や、無限を有限のなかに閉じ込めたもの、平面を次々と変化するパターンで埋め尽くしたもの、など非常に独創的な作品を作り上げた画家。


ウィリアム・モリス

 →多方面で精力的に活動し、それぞれの分野で大きな業績を挙げた。「モダンデザインの父」と呼ばれる。

 ※この人は染物から家からステンドグラス、壁紙、印刷文字、政治活動といろいろしていて職種は本当に良くわからないです。



・沙耶花が模写した作品を見たい方は以下の方法で見れます。

セント・スティーヴン教会のガダカー

 →”「セント・スティーヴン教会」身廊西 ”で画像検索


 →”M・C・エッシャー 滝”と画像検索

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