龍太朗40歳介護士になる!
プロローグ
2011年春、介護職員としてとある社会福祉法人に正式採用された。
それまで2年間、臨時的採用という形で 介護のシゴトに携わっていたが、そこの法人では、全職員に毎年、年間の個人目標を立てさせ、目標が達成出来たかどうかをチェックしているのだ。
「今年度の目標は~?」と施設長。 「どうしましょう」と返答に詰まっていると「社員試験を受けて合格するってのはどう?」 「やっぱりきたか」と即座に思ったが、何も答えずにいた。 うちの法人の社員試験、何の根拠もなくべらぼうに難しいってことを先輩職員から聞いていたし、正直その時は、社員になろうなんてあまり考えてなかった。ただ、カミサンも子供もいる身なので、社員になって給料が上がるは魅力だったが…。
「はぁ」と生返事をしてしまったのが運のツキ。以降、シゴトが始まる前や終わってから、時間を見付けては、自主勉強の毎日だった。
マジメな話、これ程勉強したのは…大学入試以来か?いやいや卒論制作以来だ。そもそも今まで介護の「か」の字もかじったことのない人間に、にわか勉強やれっていうのが間違っている。俺はもう40 なんやで!頭の中の脳ミソ鈍りつつあるんやで!
東京の大学を卒業して郷里に帰ってきたが、これといった就職先があった訳ではなく、半ば行き当たりばったりだった。 大学は出たけれど、特に資格を持っていた訳でもなく「まぁ何とかなるさ~」って安易な考えしかなかった。
親戚の紹介である会社に就職したが、25歳の時に、一歳年下の女性の所に婿入りするという理由で退職。俺の両親は婿入りに大反対だったが別に俺が実家の家取りだった訳ではないし、婿入り先の義父が小さいながらも、 アパレル関係のショップの経営者だったので、ゆくゆくは跡を継いでという思いが婿入り結婚の最大の決め手だった。