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幕間 祝祭

その日は、すべてが上手くいっていた。


「第一王女殿下、本日は夜会のご開催、おめでとうございます」


そう言われた瞬間、

セラフィーナは、心の中で小さく鼻を鳴らした。


(ほらね)


結局、こうなるのだ。


閉じ込められていた?

慎重に?

自室待機?


――全部、過剰反応。


第一王女を、いつまでも奥に引っ込めておくなんて、無理に決まっている。


「当然よ」


笑って答え、差し出された杯を受け取る。


「私が出なければ、場が回らないもの」


周囲の貴族たちが、曖昧に微笑む。

だが、それで十分だった。



夜会用の広間は、久々に“華やいで”いた。


燭台は増やされ、香は甘く、酒は惜しみなく振る舞われる。


音楽隊の演奏は少し慌ただしいが、気にしない。

今日は雰囲気が大事だ。


「もっと明るくして」


「その花、色が沈んでるわ。替えて」


命令は軽やかに飛び、

人は走る。


それを見て、セラフィーナは満足そうに頷いた。


(やっぱり、こうでなくちゃ)


長椅子に身を沈め、左右に人を侍らせる。

若い貴族たち。

機嫌取りの得意な連中。


「殿下、お久しぶりで」


「お変わりなくて何よりです」


挨拶が続く。


どれも似たような言葉。

だが、量がある。


(ちゃんと、戻ってきてる)


それが、重要だった。


「心配してたのよ」


そう言われれば、軽く肩をすくめる。


「少し休んでいただけ」


それ以上は、説明しない。



夜は、自然と長引いた。


踊り。

酒。

囁き。


セラフィーナは、広間の中心にいた。


視線が集まる。

笑い声が向けられる。

話題が、自分を起点に回る。


(ああ、これ)


閉じ込められていた時間が、嘘みたいだ。


「明日は、南庭でも何かできるわね」


「昼の集まりもいいわ」


予定を口にする。


誰も、止めない。

否定もしない。


だから、確信する。


(もう、制限は解けたのよ)



翌日。


南庭は、明るかった。


白い天幕。

新しい花。

整えられた席。


昨日よりも、人が多い。


「第一王女殿下」


「お顔を拝見できて光栄です」


頭を下げる者。

微笑む者。


以前ほどの熱気ではないが、

“戻った”と言うには、十分な光景だった。


「……外は、いいわね」


椅子に腰掛け、そう呟く。


閉じ込められていた部屋の空気とは、まるで違う。


(やっぱり、エルフリーデが戻ったから)


当然の結論。


あの子が裏で調整すれば、

こういう場は、自然と回る。


自分は、何も変えなくていい。


「……本当に、助かるわ」


感謝ではない。

評価でもない。


ただの事実確認。



夕方。


私室に戻ったセラフィーナは、鏡の前で髪を解いた。


今日はよく笑った。

よく話した。

よく飲んだ。


「……疲れたけど、悪くないわ」


椅子に腰を下ろし、息を吐く。


(この調子なら)


夜会は続けられる。

社交も戻る。


そのうち、完全に元通り。


「……やっぱり、私がいないと駄目ね」


何の疑いもなく、そう思う。


この二日間が、

誰かの限界の上に成り立っていることも。


この“天国”に、

期限が設定されていることも。


考えない。


考える必要が、ないと思っている。


セラフィーナは、満足そうに目を閉じた。


明日も、

きっと同じ日が続く。


――そう、信じて。


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― 新着の感想 ―
申し訳ないm(_ _)m…………なんか無理…ツラい
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