表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

108/148

至急の連絡

※本日複数更新です。本日分は展開の都合上、少し重たい話が続きますが、翌日更新以降で物語は大きく動いていきます。

監査用会議室は、静かだった。

紙をめくる音と、ペンの擦れる音だけが続いている。


(……もう、会合場所に着いている頃だ)


考えないようにしていた思考が、ふと浮かぶ。


その時。


扉が、控えめに叩かれた。


「……失礼します」


入ってきたのは、調整局の若い職員だった。

監査局の人間ではない。


――それだけで、嫌な予感がした。


「統括官。業務連絡です」


監査官が、ちらりと視線をやる。


「短く済ませてください」


「はい」


職員は、ルーカスにだけ聞こえる声で続けた。


「港湾管理局から、航路履歴の自動照合で異常が出ました」


その瞬間。


ルーカスの指が、止まる。


「……異常?」


「はい。“照会案件”に紐づく人物移動です」


紙を一枚、差し出される。


船籍番号。

出航時刻。

積載名目。


(……船?)


(照会で?)


ルーカスは、目を落とした。


――数秒。


それで、十分だった。


「……アルディアの船」


低く、確認するような声だった。


「照会案件で?」


職員が、困ったように頷く。


「本来、該当しないはずなのですが……」


(そりゃそうだ)


照会は、確認だ。

移送じゃない。

ましてや、船を使う理由はない。


「……出航先は」


「まだ確定前ですが、連邦外航路に接続可能な申請が出ています」


ルーカスは、静かに目を閉じた。


(……やられた)


怒りじゃない。

驚きでもない。


「分かってたことが、起きた」だけだ。


目を開く。


「“確認”で船を動かす国は」


低く、吐き捨てる。


「もう、交渉する気がない」


監査官が、怪訝そうにこちらを見る。


「……何か問題でも?」


ルーカスは、書類から顔を上げない。


「いいえ」


嘘だ。


だが、今はそれでいい。


「業務です」


(……アルディア)


(やっぱり、踏み越えたな)


制度。

記録。

正当性。


全部、守ってきた。


――だからこそ。


(……ここからは)

(制度の外だ)


その続きを、口には出さない。


まだ、ここは監査室だ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ