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ベアーズロック-神々の晩餐-  作者: ゆる


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92/93

#90 アキ


肩で背負うように抱えていたアキがゆっくりと意識を取り戻す。


「…ここは」


これまでの状況と展開を説明し、アキはイケの肩から腕を離した。


「…そうか、イマさんが。」


「イマ隊長のあの姿…見た事もない怪物になってたよ。アキは、何か知ってる?」


アキは息を飲み、「知ってる」と呟いた。

そして、 海上機関車の停車位置の方向を見て指を向けた。


「実は紹介したい人がいる。」

アキは突然言い出した。よく見ると停車位置には、誰かが立っていた。

駆け寄った先にいたのは、隊員のミカナだった。


「ミカナッ!」

彼女の顔が見えた瞬間に誰よりも早く駆け寄り、そして密着したのはアンナだった。

「良かった…良かった…」

アンナが泣き崩れる中、ミカナはアンナの頭を撫でる。

「…ありがとう。」

ミカナはそれだけを告げ、アキに向かって頭を下げた。

「アキさん、改めてお礼を言わせてください。助けて頂いてありがとうございます。」


アンナとミカナの話を聞くと、どうやらミカナは泉の中で死を覚悟する状況だったらしい。しかし、その泉はアキのいた古城の湖に直結していたらしく、ミカナは一命を取り留めたのだ。

彼女達が遭遇した審判の泉は、大昔から存在している泉らしく、撤去されないまま放置されているらしい。


そして、ミカナにはこれまでの状況を説明した。サマー軍団長やイマの死を知り、暗い表情で俯いた。


「…皆、もう此処にいる必要はないよ。直に迎えが来る。それに乗ってアリスランドという外国に向かうんだ。話はそれからだよ。」


話を切り出したのはアキだった。

しかし、彼はそれだけ告げ、地平線の彼方を見つめていた。

言われるがまま、ベアーズロックの隊員達はその場に立ち尽くす。



・・・時刻は、三を指す。



数分間待機していると、地平線の向こうから、再び海上機関車が現れたのだ。


「何で!?」


アンナが声を荒らげ、海上機関車はあっという間に目の前に停車した。


「何でぇい!もう用は済んだんか?」

「ネブタさんじゃないですか!」


ナオの歓喜の声にネブタも微笑みを隠しきれなかった。


「いやなぁ、一度帰ったんだけんど、何か戻った方が良い気がしてよぉ。戻ってきたら案の定兄ちゃん達が見えたんで驚いたべぇ。所で知らん顔もいるが、軍団長様はどうしたべぇ?」


その言葉に全員が顔を逸らした。

その様子を見たネブタさんは全てを察したようで


「…そうか。ならせめて、全てが終わった時は良い結果を報告せんといけんべぇ。」


ネブタさんの言葉で、再びその場にいた全員が顔を見合せた。そして、それぞれが海上機関車に乗り込んだ。


「ネブタさん」

イケは懐中時計を取り出し、ネブタの前に差し出した。

「本当に助かりました。ありがとうございます。」

しかし、ネブタは懐中時計を受け取らなかった。

「やるべぇ。それはもうお前さんのもんだ。それに欲しい欲しいって顔に書いてるべぇ。」


その言葉を聞いた後、イケは焦りながら頬や口元を触った。

その様子を見たネブタは笑っていた。


「んで?次の目的地はどこだべぇ。」

「アリスランドって行けますか?」

アキは様子を伺うように問い掛けた。


「アリスランド?聞いた事ないべぇ、外国だべか?」

「そうです。アウストラリアン地区の中心にある土地なんですが、そこに伝説の一枚岩と呼ばれるものがあります。それこそがベアーズロックの始まりとも言われる場所なんです。」

アキの言葉にベアーズロック隊員達は、驚きを隠せずにいた。


「ちょっと待ってもらっても良いですか?」

手を挙げて話を中断させたのはナオだった。

「すみません、アキさんの言うベアーズロックの真実…勿論知りたいです。ですけど、それよりも聞きたいことがあるんです。アキさん…貴方は何者なんですか?」

凝視するその目は、不安を表しているようだった。


「…あのさ、それは僕から説明するよ。」


「…何でイケ隊長がアキさんの事を話せるんですか。」


ナオの目は、不安から警戒へと変わる。


「それも含めて話すよ。僕自身、これを知ったのは気を失っている時の話で…」

「それって、夢の話って事ですか?」

「いや、そういう訳じゃないんだけど。何かがきっかけでその光景を見せたんだと思うんだ。そして、そのきっかけをくれたのがアキだった。」


ナオは首を傾げていた。

「言っている意味がわかりません。」


「じゃあ今から話す事をまずは信じて欲しい。」

イケは勢いよく席から立ち上がり言った。

「アキは…元ベアーズロック隊員で僕の同期。そして、今は、変異種王のベア…そうだよね?」


するとアキは突然苦しみ始めた。

胸を押さえたり、頭を押さえたりと。

次第には呻き声をあげて、その場に跪いた。


しかし、王のベアと聞いた後にその姿を見た為、ナオやアンナは刃を向けていた。


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