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ベアーズロック-神々の晩餐-  作者: ゆる


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#88 蠢く影、再来


彼の様子は明らかに【可笑しい】の一言で収まるモノであった。

ふと見た彼の姿、それは惨憺たる容姿であった。

彼の眼、口、耳など、穴という穴から黒色の液体が流れ、蠢かしい何かが姿を現したのだ。


「…陽の光が無いって、最高だよねぇ。」

開口一番放たれた声質は、彼のモノではなかった。


次第に蠢く黒色は、一点に集中し、一つの人型を精製した。

全ての蠢く黒色がアキの身体から抜けた時、アキはその場に倒れ込んだ。


黒色に染まる人型から現れたのは、黒髪のロングヘアーに色黒の男。奇抜な色のタキシードを身に纏い、両手には短剣を握り締めていた。


「あぁ…懐かしい。やっぱりホウジンゾクの身体って良いよねぇ。」


男は両手の短剣で自身の両頬に傷を付けた。


「あはっ!血だっ!血だよっ!真っ赤な血だっ!冷たくて汚い黒い血じゃないっ!」


男は不気味な声、不気味な口調で声を荒らげた。

複数の視線に気が付いたのか、男は舐め回すように凝視していた。

すると突然、奇声を上げたのだ。


「いたよ、いた!俺様の復讐の肉塊が!探したよぉっ!」


短剣の先端を辿ると、行き着いたのは

ーーイマ。


「…すまないが、俺は君に会った記憶が無い。誰かと勘違いしていないか?」

「あぁ…仕方ないよねぇ。あの時と見た目違うもんねぇ。だからってはいそうですかとはならないよねぇえ。」

男は鋭い眼光を放ち、睨み付けた。


「…どちらにせよ、このまま立ち去る事は出来なさそうだな。」

イマが刃を抜く姿を見た瞬間、男は華奢な身体を跳ね上げ、高揚した。


「あぁぁぁっ!高まる高まる高まる高まる高まる高まる高まる高まる高まる高まるぅぅぅぅっ!!!」


「…狂人め。」


男は右手に握る短剣を一直線に放った。


イマは、それを刃で跳ね返す。


しかし、一瞬目を逸らすと、男は姿を消した。


すると、左の脇腹に痛みが走った。

ゆっくり視線を降下させると、一本の刃物が突き刺さっていた。手元を辿れば、握る手の主は先程の狂い笑う男ではないか。


「血ぃ血ぃ血ぃ血ぃ血ぃ血ぃ血ぃっ!!!!!」

困惑の最中、何度も短剣を小刻みに動かされ、激痛と同時に流血が止まらない。

勢いに身を任せ、腕ずくで刃を振るう。

しかし、男は身軽に飛び上がり、元いた位置へと戻った。


「イマッ!!」

誰の声も届く事は無い。イマは脇腹を押さえながら、痛みに耐えるので精一杯だ。深く、強く押さえても血が止まる事は無かった。


「……クソッ…視界が…」


血が不足し、意識が朦朧とする。

遂には、その場で跪いてしまったのだ。


「やったやったやったやったぁ!憎き肉塊をこの手でぇ!」

男は短剣に付着した血液を舐めまわし、頬を赤らめて興奮している。


サマー軍団長やイケは、イマに駆け寄ろうとする。しかし、イマはこちらに真っ赤に染った手のひらを向ける。それは恐らく、「来るな」と言いたいのだ。


「…なぁ…やっぱり…どうも思い出せなくてな…俺はお前に……何をしたんだ…?」


興奮していた男は不自然な方向に首を傾げ、イマを睨み付けた。


「…そうか…俺様のことは、眼中に無い…そういうことか…。」


「…ははっ……会話にならねぇか…」


「…いいさ…いいよ…嫌でもその脳みそに刻んでやる…。俺が負けたのは、影のベアだったって後悔するまで切り刻んでやるっ!!」


男は短剣を向け、再び走り出した。


「……あぁ…そうか…影のベア…ね。」

すると、イマの身体が全身を覆うように発光し始めた。光が放たれ、その場にいた全員の目が眩んだ。


次に目を開けた時、その場にいた全員が驚愕した。


「……イマ…なのか?」


そこいたのは、もう今までのイマの姿ではなかった。


全身が濃い橙色で、臀部の辺りには、黒い輪の模様がある。よく見ると、臀部の先には、大きな針のようなものが付いている。

額には触角が二本、眼は黒く、口元には牙がある。

首には白い毛のようなものが巻かれ、腹部の辺りからは新たな手が二本生えているのだ。そして、他の者とは比べ物にならない程の大きな羽根。


「…な、何だ…何だその姿…。」


流石の狂い魔も呆然としていた。


「…何だと聞いているっ!」


影のベアを名乗る男の声に全く反応しない。

しかし、イマは物凄い速度で、影のベアへと襲い掛かった。

ブンブンッと羽根を大きく鳴らし、何度も影のベアの周囲を交差する。

影のベアの抵抗も虚しく、短剣は宙を斬り続けていた。


「何だっ!何だってんだっ!」


すると、イマは影のベアの背後に回り、手足で影のベアをガッチリと掴む。そして、背部から針を貫通させたのだ。


「……カッ……ガハッ……。」

影のベアは血を吐き出し、針が抜かれるとその場に倒れ込んだ。


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