#83 【第五部隊 キリ班 クシマ村編】南西へ
「…今、なんと?」
耳を疑う発言、語るはクシマ村の三騎士の血縁者ーーベコ。
クシマ村に入って早々、第五部隊の私達はベコの家へと案内された。
そこで聞かされたのは、思いも寄らない話であった。
「東北の各地に現れているベアの正体…それは全て変異種なのです。そして、発生元はホッカイ島ではなく、ワッカサン村のシラハマ岬かと思われます。そこには初代ベアーズロックの本拠地と真実が記された記録書があると言われています。」
「…何故それを私達に?」
「ギーミャ村の血縁者である、ずんださんから手紙が届きました。竜の祠が開かれたと。何でも封印を解いたのは、あなた方の仲間と記されています。そこの隊長さんが責任もって連れ戻すと魔の三角地帯に入ってからもう随分経つそうです。」
淡々と進む話に第五部隊である私達は、誰も着いていく事が出来ずにいた。
まず私達は、【三騎士】【血縁者】【竜の祠】【魔の三角地帯】について問い掛けた。
「…なるほど。恐らくそれは、第三部隊のライラ班です。安否確認が出来ていないとなると、封印されていた竜が原因の可能性が高いですね。」
この東北の地で一体何が起きているのか。
私の投げた問いに、ベコさんは真剣な眼差しを向けた。
「…全ての始まりは、ベアーズロックの過去。私が言えるのはそれまでです。」
ベコさんは、椅子から立ち上がり、窓の外を眺めた。
寂しげなその背中は、何かを抱えているようにも感じられた。
「…ベコさん。貴方は一体。」
「私は単なる三騎士の血縁者。それ以上でも以下でもありません。キリ隊長、貴方は私には無いものを持っている。これからまだまだ強くなるでしょう。失礼を承知で言うと、ベアーズロックは本来あってはいけない組織なのです。この惨劇をあなた方の手で終わらせるのです。そして、この残酷な時代を終わらせてください。」
ベコさんの語るベアーズロックの過去。
私達にはまだ分からない事が多々ある。
全ての鎖を外すには、それぞれがやるべき事を成し遂げる必要がある。
今の私に出来る事は何か。
「すぐにこの村を立ちます。」
この決断に反対する者はいなかった。
「申し訳ありません。血縁者として、力を貸したい所ですが、この老耄はお荷物になりかねます。それに私達三騎士の血縁者は、二度と揃う事は無い。即ち、力を使う事も出来ないのです。」
血縁者が揃う事は二度と無い。
この言葉の意味、それはサンケイ村に住んでいた血縁者ーーランボが原因だと言う。
「…彼に何があったのかは分かりません。しかし、私とずんださんが最後に見た時の彼は、ホウジンゾクではありませんでした。黒い毛皮を纏い、紅に染まる鋭い眼。あれはまさに、ベアそのものでした。」
ランボの行方は、未だに分からないまま。
ベアに落ちたとなれば、今も近くの森でホウジンゾクの命を狙っている可能性がある。
「…叶うなら…私達の手で彼を。」
皺だらけの震える手。
私は両手で彼の手を包み込んだ。
「その意思、私達が。」
それだけを告げ、私達は家を出た。
「ワッカサン村は、ここから南西にある。かなりの距離だが、鍛えられたあなた方の羽根なら、十日程で行けるだろう。」
「ありがとうございました。」
その言葉を最後に私達、ベアーズロック第五部隊はクシマ村を立った。
「…隊長。余計なお世話かもですが、言っても良いですか?」
「何?」
「…軍団長の命令を無視して大丈夫なのですか?」
「シモ。それに、ミーナ、ビーナ、フナノも聞いて。」
隊員達は飛行中でありながら、私の声が聴こえる後方で整列した。
「ベコさんの話を聴いた以上、今やるべきことは、私達が今出来ることをやる。命令を全部聞いていたら、大事な事を落とす可能性だってある。私は第五部隊隊長として、即刻ワッカサン村に行くべきと判断した。東北の件は、他の部隊に任せましょう。どの道私達が合流しなければ、全滅したと判断して先に進む。それがベアーズロックなの。」
それ以上は何も言わなかった。
しかし、隊員達は「はいっ!」とだけ返し、黙って私に着いてきてくれた。
────まったく…隊員に恵まれすぎだっての…。
列を崩さず、五つの星は南西へと進み続けた。




