表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ベアーズロック-神々の晩餐-  作者: ゆる


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

82/94

#80 判決の刻


「…審判の泉って…何を言っているんですか?」

青髪の女性は、再び微笑みながら背を向けた。

「水面に映る彼女は、泉の水を飲んでしまいました。泉の水を飲むと、泉の中の世界に行ってしまうんです。一度入ると二度と出られない。それに彼女は呼吸も出来ない。」

青髪の女性の言葉で私はハッとした。水面を見ると、ミカナは明らかに苦しみ始めていた。踠き苦しみ、向こう側から水面を叩いているのだ。

「ミカナッ!ミカナッ!待ってっ!待っててっ!」

私は何度も水を掻き分けた。

「無駄ですよ。こちらから行くには、泉の水を飲むしか無い。しかし、向こうに行けばそれで終いです。さぁ判決の刻です!貴方は彼女を救いに水を飲むか、飲まないか!」

私は水に浸った状態で青髪の女性を見た。

「……お願いします…助けてください。」

まただ。私はまた何も出来ない。

命を賭けてミカナを助ける選択が出来なかったのだ。

しかし、私が向こうに言ったところで何が出来る。ミカナが苦しい事には変わりない。

「貴方は彼女を助けたく無いのですか?」

「助けたいに決まってるっ!でも…」

青髪の女性は溜息を吐いた。表情を見るに呆れ果てている様子だった。

「一つ言い忘れていた事があります。彼女がこのまま死ねば、貴方はこの先の村へ進む事が出来ます。つまり、生贄です。もっと簡単に言いましょうか?二人死ぬか、一人見殺しにするかです。」

私は駄々をこねる子供のように、泣き叫ぶ事しか出来なかった。


『……アンナ……行って。』


「…へっ?」

突然、誰かの声が聴こえた。

脳に直接話し掛けてきているようだ。

「…もしかして。」

私は水面を見た。ミカナは頷きで合図を送っていた。


『……アンナ……話は聴いてた。私の事は良いから、先に進んで。』

「嫌っ!そんな事出来るわけないっ!」

『…落ち着いて…私はこの後ここから出て一人で旅をする。今は苦しいけど、すぐに息継ぎも出来るから大丈夫なの。だから安心して。生贄なんてその女の出任せなのよ。』

「…本当に?」

『ええ。だから安心して村へ行って。いつかまた会えるって信じてる。』

ミカナの言葉で私は決心した。

ミカナは苦しい中、私の背中を押してくれた。

「…彼女を生贄に…私は村に行く。」

私の決断に青髪の女性は、少し戸惑っていた。

そこからは何も言わず、奥の泉の扉を開いてくれた。

再び水面を見ると、ミカナは優しく微笑みながら頷いた。

「…先、行ってるね。」

私は泉の扉の先へと足を進めた。




『…………アンナ……必ず生きて……ごめんね…私はもう……耐えられない。』

視界は段々と靄がかかったように見えにくくなり、意識が遠のきながらも頭痛が襲う。

すると、私の目の前に何かが現れたのが分かった。

『……誰?』

「…素敵な友情ごっこでしたよ。ですが、死を望む貴方を見殺しにしてもなんの罰にもならない。貴方には生きてもらう事にしました。絶望の地で。」

何を言ってるのかも正直分からなかった。

そして、私は意識を失った。




………ブェッホッ!ゲヘッ!ゴホッゴホッ!


口から水を吐き出し、私は意識を取り戻した。

私は仰向けで横たわっており、目の前には満点の星空が広がっている。

顔を左右に動かし、周囲を見渡す。

全体的に広がる湖と森。その中視界に入ったのは、古城と月だった。

私はゆっくりと身体を起こした。

僅かに身体が重く、寒気を感じた。よく見ると全身が濡れている。

「…そうか…私、溺れて。」

私は漸くこれまでの事を思い返した。しかし、何故此処に倒れていたのかは分からなかった。

ゆっくりと立ち上がり、私は古城へと向かった。

古城の壁は古く、隙間には苔が生え始めていた。

汚れの目立つ木製の扉を開くと、ギィィィッと音を立てる。

中に入り、警戒しながら階段を上る。

古城はそれほど大きくはない。階段の先には、一つだけ扉があった。私は再び、木製の扉を開けた。

室内はボロボロでかつて使用されていたであろう、暖炉や椅子がそのままになっている。埃が被っており、近日で使用された形跡は無い。

木製テーブルを見ると、そこには何枚も重ねられた紙があった。私はそれを手に取ると、乗っかっていた埃が宙を舞う。埃を払い、私は一枚ずつ紙を読んだ。

「……何これ。」

そこにはベアーズロックやベアの事も書かれていたが、それだけでは無かった。


「…それがこの世界の真実だよ。」


突如聴こえた声に私は驚きのあまりその場に転び、腰を抜かした。

「…貴方は…何者ですか?」

その男は、全身黒の衣類を身に付けていた。腰元には見覚えのある刃があった。

「…!?」

私は驚きのあまり声が出なかった。

「…君も知ると良い…この世界の真実を。」

男は私の頭に手を置いた。

すると、脳内に私の知らない映像が無数に流れた。

しかし、これが本当であれば…

私は再び男を見た。

男は寂しげな表情を浮かべていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ