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ベアーズロック-神々の晩餐-  作者: ゆる


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#77 後悔の芽が咲く時


「……ん?」

視界はボヤけ、俺は目を擦った。

「…やべっ!寝ちゃってた!」

焦って周囲を見るとアンナが目を覚ましていた。

「大丈夫よ。あんたが寝るタイミングで起きたから。」

「…そうか…てか、隊長は?」

「…知らない。もう起きてそれなりに経つけど全然戻って来ない。」

俺は全身に変な汗をかき始めた。

何故なら、俺は一度眠ると中々目を覚まさない。俺が隊長を見送ってから現在まで相当な時間が経っているはずだ。それでもまだ戻って来ていないということは…

「…何かあったんだ。」

俺は眠る前の状況をアンナに話した。

「…マジ?」

アンナも焦った様子でミカナを叩き起した。

「ミカナ!起きて!」

ミカナは瞬時に目を覚まし、刃を持った。

「敵じゃない!落ち着いて聞いて!」

ミカナは刃を下ろし、アンナの話を聞いた。

ミカナはアンナと同じ表情をして、地上への入口へと向かった。それを見た俺とアンナも同時に走り出した。

移動中、余裕の無い俺達は会話を交わさなかった。

不安定な足場を乗り越える事に集中し、俺達はあっという間に地上へと出た。


俺達は空を見上げるも竜の姿は何処にもなく、鳴き声すら聴こえなかった。

「…ねぇ、どういうこと?竜は?竜はどこいったの?」

「…そんなのこっちが聞きてぇよ。」

「どう考えてもライラが何がしたんでしょ。」

焦るミカナ、余裕の無い俺に対し、アンナは冷静に返した。

「…よし、手分けして隊長を探そう。」

アンナとミカナは頷き、俺達は互いに違う方向へと走り出した。


「たいちょー!どこだぁー!」


「いたら返事してぇー!」


「ライラッ!死んでたらただじゃおかないぞッ!」


まだそれとなくミカナやアンナの声も聴こえる。

声だけで分かる。二人も相当焦っているのだろう。


「オナットッ!アンナァ!こっち来てぇっ!」

俺はミカナの声に反応し、直ぐ様聴こえた方向へ走り出した。

草木を掻き分け進み続けた。森を抜け出した先には広場があり、そこには何かを抱えるミカナの背中があった。

ゆっくり歩み寄るとミカナが鼻を啜っているのが聴こえた。この時点で俺は嫌な予感が過ぎった。恐る恐る覗き込むと、そこには下半身の無いライラの姿があった。

「………隊……長…?」

ミカナは何も言わず、ただただ泣き続けていた。

ライラ隊長の無惨な姿に俺は吐き気を催した。

少し遅れてアンナが到着し、アンナもライラに駆け寄った。

「ライラッ!しっかりしろッ!目開けろっ!」

アンナの声に反応するように、ライラ隊長は薄っすらと目を開けた。

「……何で…来たのよ……馬鹿ね。」

「馬鹿はお前だろっ!一人で行きやがってっ!」

顔面がぐちゃぐちゃになるほど泣き崩れるアンナを目の当たりにし、俺とミカナは釣られるように涙を流した。

そして、俺達三人がライラ隊長を囲んだ時、ライラ隊長は笑った。

「……ほんと…皆…馬鹿………でも……最後…は…独りじゃなくて……良かった。」

「最後じゃねぇよッ!目開けやがれッ!」

「そうだよっ!私達まだ何も教わってないよっ!」

すると、アンナが立ち上がり空を見上げた。

「神様ッ!お願いしますッ!ライラを助けてくださいッ!お願いしますッ!お願いしますッ!私達、心入れ替えるからッ!」


最後は情けなくも神頼り。

俺達はそれだけ未熟だったのだ。

いざという時、大切な人を助けられなくて何が戦闘部隊だ。


「……それで…良いの……素敵な…隊員になるのよ。」

ライラはゆっくりと目を閉じていった。

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!」

ミカナは血塗れになりながらもライラを抱え続け、アンナは空を見上げたまま両手で顔を隠していた。俺は二人の間で歯を食いしばりながら跪いていた。俺達が唯一共通していたのは、顔面がぐちゃぐちゃになるほどに涙を流し続けていた事くらいだ。

「……こんなに…後悔した事ねぇよ。」

「私達…最低だ…隊長に迷惑ばっかり…」

すると、アンナは何も言わずその場にしゃがみ込み、両手で穴を掘り始めた。

「…ミカナは隊長と待ってて。」

俺はアンナに近付き、一緒に穴を掘った。

隊長が埋まる程の穴を掘り終え、ミカナはゆっくりと立ち上がった。そして、隊長をゆっくり降ろし、俺達は敬礼した。

隊長の顔や上半身に土を被せていくのを見ていると、俺達がこれまでやってきた事が如何に低俗だったのかが分かった。誰かを汚して良い事なんて無いし、そんな事をしても誰も得をしない。今土を被せる事は最低限の礼儀、唯一普段の無礼が感謝に変わる時だ。俺達の涙が隊長の芽を出して、新たな生命に繋がる事を願った。

隊長が見えなくなるまで、そう時間は掛からなかった。

俺達は暫くその場に滞在し、隊長の埋まっている所を眺め続けていた。


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