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ベアーズロック-神々の晩餐-  作者: ゆる


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#76 弔い


竜との交戦後、私達は森を彷徨い続けた。

竜が出現してから、正確な天候や時間を推測する事は難しくなった。

逃げている途中に大樹があり、大樹の根元には深そうな穴があった。

私達はそこへ逃げ込み、現在穴の内部を進行中だ。

変わり映えの無い光景が続くも、最終的には広い空間へと出た。

そこには光もなく、大樹の根が無数に張っている。

根の間で広い場所を探し回り、私達は漸く安堵の息を吐いた。


「…ねぇ。」

「何?」

「…何で私達の居場所分かったの?」

アンナは目を合わせず、暗い表情で私に話を振った。

「必死に探した。それだけよ。」

「…そっか。」

この子達は感謝や謝罪を伝える事が出来ない性格だ。それは重々承知の上だ。しかし、この子達はこの子達なりに何かを伝えたいのは見て分かる。

「何か言いたいことがあるならちゃんと伝えた方が良いわよ。私達はいつ死ぬか分からない境遇なんだからね。」

「わかってるよ!わかってる…けどさ…。」

死よりもプライドが邪魔をしている。一文で表すならそんな所だろう。

そんな三人の様子を見て、私は溜息を吐いた。

「貴方達にもプライドはあるだろうし、感謝も謝罪も要求はしない。でも、思った事はちゃんと伝えないと、必ず後悔するわよ。それだけは頭に入れて置いて。」

いつもならここでオナットから怒号が飛び交う所だが、今日は流石に静かであった。

独断行動、指示無視、それだけでも罪は重い。

しかし、命を賭けた闘いを目の当たりにし、考え方が変わる事は珍しくない。現に私達も最初はそうだった。

「安心しなさい。今回の問題行動は伏せておくから。以前から軍団長と隊長間でも貴方達の事は問題視してたのよ。仮に今回の事を皆に話したら貴方達どうなるか分からないわよ。」

三人の反応からして、あまり自覚は無かったのだろう。

三人は顔を見合せた後、私の前に並び、そして跪いた。


「「「ありがとうございます。」」」


なんと三人は声を揃えて私に頭を下げたのだ。

この子達をそうさせたのは何か。

それは言わなくても、何度もこの世界を経験した私には分かっていた。


「聞かせてくれる?私、貴方達の事何も知らないのよ。当然、ジャズの事もね。」


三人は「はいっ!」と返事をした後に涙を流した。


────サマー。私達、少し前に進めた気がする。


私達は夜通し話をした。初めはぎこちなかったが、徐々に打ち解けていった。次第に睡魔に襲われ、私達は交代で睡眠を取る事とした。

私とオナットが見張りをしていると、地上からは時々竜の鳴き声が聞こえてくる。

「…真上にいるのか?」

「かもしれないわね。」

かなりの時間が経過したが、一向に何も起こらない。

私はぐーんっと腕を伸ばして立ち上がった。

「何も起こらないし、私少し外の様子を見てくるわね。」

「…大丈夫かよ…ですか。」

「下手くそな敬語はいらないわよ。行ってくるわね。」

私は地上へ繋がる穴へと向かい、来た道を戻って行った。


「…ごめんね…ありがとう。」

私はもう、あの子達の元へ戻るつもりは無かった。

ジャズの事を守れなかった。

今でもジャズの最後の顔が頭から離れない。

貴方が許してくれるかは分からない。

だけど、せめてあの竜だけは私の手で葬りたい。

それが、唯一私に出来る弔いだ。


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