#75 女王の壁
「…!?」
低空飛行で移動中、私は暗雲の空に竜の姿を確認した。
「…急がないとっ!」
私は周囲を見渡しながら速度を上げた。
「オナットッ!ジャズ!アンナ!ミカナ!どこにいるのっ!返事をしてっ!」
大声で叫ぶも、返ってくるのは私の声だけ…
ギャアオォォォォォオォォォォォッッ!!!!!
だけではなかった。
竜は空を舞い続けているだけで、何か攻撃を仕掛けてくる訳では無かった。
凝視していると姿を見せなかった竜が突如暗雲から顔を覗かせた。
「…あれが竜。」
大きな強面はゆっくりと一つの場所へ近付いていた。
それを見た私はハッとした。
「まさかっ!」
そこにオナット達がいる、そう踏んだのだ。
竜のすぐ近くの森の中に身を潜めた私は、ジャズが捕食される瞬間を目の当たりにした。
死に際、彼と私は目が合った。
彼の目はこう語り掛けているようだった。
『…そんな所で何見てんだよ…はやく助けろよっ!』
しかし、彼の言葉を聞く前に、彼はこの世から消えてしまった。
「…!?」
吐き気を催した私は急いで手で口元を塞いだ。
少しでも音を立てて居場所がバレてしまえば、竜が攻撃を仕掛けてくるかもしれないからだ。
私は息を殺して潜めていると、竜の視線はオナット達へ向けられていた。今度はオナット達を捕食しようとしているのだ。
────そんな事…絶対許さないっ!
竜がオナット達に飛び掛かるタイミングに合わせて、私は思い切り刃を抜き、勢いよく繰り出した刃は竜の歯と衝突した。
────物凄い力ッ…
「舐めるなぁぁぁぁぁぁっ!!!」
私は辛うじて竜の力を受け止める事が出来たのだ。
受け止めた顔面を私は思い切り弾き返した。
ベアーズロックの訓練の総合評価。
私の総合評価は確かに九だ。
攻撃力、機動力、技術、思考…この四つは全て評価一だ。私が最も優れている評価、それは最大評価を頂いている。
『ライラ、あんたは正直弱い。でも誰よりも硬く、誰よりも皆を守れる。あんたは三番隊隊長として、チームの大きな壁として、引っ張っていってほしい。頼むよ女王様!』
────サマー、今あんたに言われた事を思い返すなんてね。私もそろそろ死ぬのかしら。でもね、せめて私の可愛い後輩達は…
「守り切ってから死んでやるっ!!!」
私は竜が仰け反っている内にオナット達の元へ駆け寄った。
「ほらっ!逃げるよっ!早くしなっ!」
「…な、何で…お前…」
「いいから早くしろって言ってんだろぉっ!!!」
私は思わず、オナットの頭を思い切り殴ってしまった。
それに驚いたのか、三人は急いで立ち上がり、竜とは真逆の方向へと飛んで行った。
私もその後を追い、一度戦線から離脱した。
後方を見ていると、竜は周囲を見渡していた。恐らく、私達を探しているのだろう。
────悪いけど、今は一旦逃げが勝ちよ。あんたは必ず、私が倒してあげるからね。
私と隊員三名は、再び深い深い森の中へと姿を消した。




