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ベアーズロック-神々の晩餐-  作者: ゆる


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#74 魔の三角地帯


ジャングルの中を駆け、私とずんださんは何とかダテ兄に追い付く事が出来た。

すると、ダテ兄が振り返り、「見ろ。」と親指を立てた。

そこを見ると、複数のロープが切られ、板の上に書かれた注意書きも真っ二つに折られていた。

「…こんな野蛮なやり方。あの子達だと思います。」

私はずんださんとダテ兄に向けて深く頭を下げた。

「頭上げろ。今 あんたが謝ったって何もならねぇ。直接ガキ共見つけ出して謝らせるんだな。」

「…そうですよね。わかりました。」

ダテ兄は怒りながらも優しい言葉を掛けてくれた。

「…でもどうすんべ。このまま探しにも行けるけどよぉ、何の準備もしてねぇからなぁ。」

「ずんださん、準備なんていらねぇよ。この森には水も流れてるし、野生生物もいるから食にも困らねぇ。植物によっちゃあ、薬にもなる。問題は生きて森から出られるかだけなんだからな。」

ずんださんは暫く悩んでいた。ダテ兄ですら、少し渋っているようにも感じられた。

「…お二人は此処に残ってください。ここから先は私が探しに行きます。私の部下達が起こした問題ですから、隊長である私が責任を取ります。なので、生きて帰れたら隊員達を連れてダテ兄の家に行きますね。」

私の決死の覚悟に二人は何も言わなかった。正確に言えば止めようとしていたが、止められなくなったが正解だ。

私は二人に笑顔を向け、羽根を動かした。そして、勢いよく【魔の三角地帯】内へと飛び立った。

「必ず帰ってこいよっ!!」

「待ってるべぇっ!!」

二人の声は、しっかり私の元へと届いた。



「…ねぇ、あれ!」

ミカナの声で俺達は振り返った。

指差す方向には、石で出来た祠のような建造物が見えた。

「…あれは、まさか!」

俺達は顔を見合せ、その祠へと急いだ。

その祠の建造物の中には、大きな石の棺桶の上に、三本の剣が挿さっているものがあった。その剣は金、銀、銅で出来ており、金以外の二本は既に錆びてしまっていた。

「三本の剣…これ【竜の祠】じゃねぇか?おいおいっあっさり見つけ出しちまったぜ!」

ジャズの言葉で俺達は一斉に高らかに笑い合った。

「あのずんだとかダテ兄って人?一々大袈裟なのよ。帰りも私達の腕ならきっと迷わず帰れるよ。きっとこれまで迷い込んだ奴等は弱かったのね。ライラも馬鹿だけど、あの二人も中々よね。」

「ねっ!てかめっちゃジロジロ身体見てきて超キモかったぁ!」


シャキィィィンッ


談笑していると金属が擦れるような音が響いた。

自然と剣の方に目を向けると、ジャズが金の剣を持っていたのだ。

「お前っ!何やってんだっ!」

「は?何が?」

次の瞬間だった。

辺りに不吉な風が吹き荒れ、大地が揺れた。

「ちょ、ちょっと!これやばいんじゃないの!?」

アンナが何か言っていたようだが、風の音で何も聞こえない。次第に雨も降り、雷鳴が轟いた。

「…竜って天候を操るんじゃなかった?」

ミカナの言葉に俺達は一層焦りが増した。

「何で剣を抜いた!?お前話聞いてなかったのか!?これで死んだらジャズのせいだからなっ!」

「お前だって抜いてやるとか言ってただろうがっ!結局噂に惑わされてビビってんじゃねぇかっ!」

俺はジャズの胸ぐらを掴み、思い切り頬を殴った。

「何すんだこらぁっ!」

俺達は交互に殴る行為を繰り返し、アンナとミカナが止めに入った。


ギャアオォォォォォオォォォォォッ!!!!!


気が付けば空には暗雲が立ち込める。

雷鳴が轟く時、暗雲に光が放たれた。

その光の中に一つの影が現れていた。


「…逃げるぞ。」

姿は見せていないが、雲の中に居たのは恐らく竜と呼ばれる生物だ。

豪雨が襲う中、俺達は急いで立ち上がり、竜の祠から離れた。

俺達は来た道に目印を付けながら進んでいた為、どの道を辿ったかは見ればすぐに分かった。そうしてただひたすらに目印を見ながら走り続けた。


最後の目印に到達した時だった。

「…何よこれ。」

俺達が入った森の入口が無くなっていたのだ。

「おいっ間違いなく此処なんだろうな!」

ジャズがアンナの胸ぐらを掴んで責め立てた。

「目ん玉ついてないのかよっ!目印ここにあんだろっ!しかも私言ったよなっ!入口は分かりやすい目印にしておくって!ほんと何も聞いてねぇなっ!だから馬鹿と同じチームは嫌だったんだよ!」

「何だとっ!もういっぺん言ってみろっ!」

女性であろうと容赦なく首を締めるジャズに俺とミカナは焦って取り押さえた。

「いい加減にしろっ!少し冷静になれっ!」



ギャアオォォォォォオォォォォォッ!!!!!



「…またあの鳴き声。」

俺とミカナが鳴き声に驚いた時、ジャズの手の力も抜け、離されたアンナは首を押さえて咳込んでいた。

「…お前…ほんとに…殺す気かよ…。」

アンナの苦しむ声を聞き、その場は静寂した。

静かになるほど竜の声はより鮮明に聴こえる。

「…クソッ…どうしたら良いんだ!」

全身がずぶ濡れで、走り回ったせいかあちこち泥だらけの状態だ。


だがらその後も俺達は走り続けた。

生きたい、死にたくない、それだけの信念でただがむしゃらに走り続け、草をかき分け、泥道を駆けた。


しかし、竜の鳴き声は一向に遠くなる事は無かった。


「…もう…無理。」

アンナとミカナが息を切らしながら倒れ込んだ。

ジャズも手を膝に付き、俺は腰に手を当てて上を見上げた。


「…あ……あ。」

「…どうしたんだよ。」

俺は空を見上げて声を失った。

ジャズ、アンナ、ミカナは順に同じように空を見上げた。



ギャアオォォォォォオォォォォォッ!!!!!



暗雲からは所々黄土色の鱗が見えていた。

長い蛇の道を辿り、先頭である顔面はこちらを向いていた。

細めの長い身体に比べ、顔は大きく強面。顔の周囲を黒い毛が覆い、大きな鼻の穴の下には二本の髭が生えている。


「…ははっ…こりゃ終わったわ。」

竜は鳴き声を轟かせた後、ゆっくりと俺達に近付いて来た。

竜は数分間を置いた後、俺達に噛み掛かった。

その瞬間、全員が目を閉じてしまった。

一瞬の出来事だった。

薄く目を見開いていき、自分に被害は無かったことを確認する。そして、右を見るとジャズの姿が無かった。

アンナとミカナは震えて涙目状態で血を浴びていた。

視線を下に向けた時、そこにはジャズの二本の足が倒れていた。

次に竜へ目を向けると、竜の口からジャズが悲鳴を上げていたのだ。


「ウワアァァァォァァァァァァァァッ!!!!!」


ジャズは上半身のみ見えている。竜の歯によって噛み砕かれている為、竜の口からは血が溢れている。

ジャズは痛みに耐えながらも、両手で竜のはを押していた。体重を掛けて何度も抜けようとするが、ジャズはゆっくりゆっくりと身体を食われていった。

「痛い痛い痛いッ!イダアァァァァァイィィッ!オイッ!オナットォ!アンナァミカナァッ!タズゲデグレエエッ!!アダアァァァッ!!!!!」


アンナは腰が抜け、ミカナは泣きながら過呼吸状態になっていた。

すると、ジャズはとある木を黙って見ていた。

そして、何も言わずにジャズは竜に飲み込まれてしまった。

「…どっからだぁ…どっから…。」

ジャズを捕食した竜は、再び俺達を見下ろしていた。


「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッ!!!!!」


ミカナの悲鳴と共に、竜は俺達に牙を剥いた。




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