#68 地獄の花園
洞窟内は木々で囲われており、天井だけでなく足場まで様々な木で形成されている。
真っ直ぐな木もあれば、曲がりに曲がった木も存在する。
不安定な足場を軽く飛ぶように移動している。
雨や湿気により滑りやすくなっている箇所もある為、私達は時々躓いてしまう。
「怪我しないようにな!ゆっくりで良いぞ!」
三人はしっかり返事をするも、自身の足場をキープするので精一杯の様子だ。
荒れ狂った木の道を抜けると、広大な草原が広がっていた。
「…ねぇ、もう無理ー。疲れたー。」
いつものようにホウが嘆き始めた。
「ホウ、あと少しだから。」
「あと少しが永遠に続いてる!いくらホウでも気付く!こう見えてホウは賢いんだから!」
「じゃあ、ホウはここに居なよ。私達は先を急ぐから。」
無視して歩みを再開するナオに私とヤマガは、ホウの顔を伺いながら後を追った。
「……ま………待ってよぉー!」
ホウは心が折れ、再び歩み始めた。
草原の道には、次第に花が見られるようになった。
赤、白、黄色、青、桃の花が無数に広がっていた。
そして、薄暗かったこの空間を抜けると天井は無くなり、青い空が広がっていた。
「……綺麗。」
「もしかして、ここも洞窟?」
「いやいやまさか。てか夜だったじゃん。」
隊員達は説明の出来ない景色や状況に圧倒されていた。
しかし、私はその光景を見た瞬間、全身に冷や汗をかいた。
「…私達…どうやって此処に来たっけ。」
私の言葉に隊員達は首を傾げた。
「どうって、普通に木を渡って、それが草原になって…」
三人を代表してホウが答えた。
「…アヤの言っていた言葉覚えてるか?」
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「この先に森で作られた洞窟があります。そこはソウモリ村とテイワ村に繋がっております。全ての道を必ず左へ曲がってください。万が一にも右に曲がってしまうとギーミャ村やサンケイ村へと行ってしまうので注意してください。」
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アヤの言葉を思い出した三人は、漸く事の重大さに気が付いた。
「…私達歩くのに必死だった…私達はその時どっちに行ったんだっけ。」
ナオの言葉に誰も返答出来なかった。
「…てことは、ここはギーミャ村かサンケイ村って事の可能性もあるよね?それならまた戻れば良いんじゃ。」
ホウが話すと同時に、私達は背後に気配を感じた。
恐る恐る振り返ると、そこにはアキト村の村人達が武器を持って立っていたのだ。
「いやあぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!」
ナオの悲鳴同時に、私とホウ、ヤマガは戦闘態勢を取った。
「ははっ…こんな所まで追ってくるとか。悪趣味にも程があるっすよ。」
村人達は、ヤマガの言葉には一切反応しない。それどころか、常に大きな口で不敵な笑みを浮かべていた。
「…この人達、様子が変じゃない?」
ホウの言う通り、村にいた時の様子とは明らかに違った。
すると…
通りゃんせ……通りゃんせ……
「…この歌。」
こーこはどーこのほそみちじゃー
「…いや、もう嫌っ!」
てんじんさーまーのほそみちじゃー
ちっととおして くだしゃんせ
ごよぉのないもの とおしゃせぬー
「やはり此処へ来てしまったのですね♪歓迎しますよ♪ようこそ!地獄の花園へ!」
アキト村の村人達の間から歩いて来たのは、赤とベージュのローブを纏った女性。彼女は森のトンネルに入る前に出会った道案内のアヤだった。
「…アヤさん…どうして。」
ナオが涙目状態でアヤへ話し掛けた。
「どうしてって、私言いましたよね?必ず左に曲がってくださいって。なのにそれを無視して真っ直ぐ進むなんて。まだ右を曲がっていれば助かったでしょうに。」
「だったら今から戻れば良いじゃねぇか。あんた達が避けてくれれば済む話だろ?」
ヤマガの言葉にアヤはクスクスと笑った。
「皆さんはもうここから出られません。どうしても出たいなら私達を殺してから行ってください。補足として、これまで此処に迷い込んだ者は何人もいました。ですが、ここを生きて出られた者は一人もいません。」
アヤは全身で刻むようにリズムを取り始めた。
「この子の七つの お祝いにー♪
お札を納めに まいります♪
行きはよいよい 帰りはこわいよ♪
こわいながらも♪
通りゃんせ 通りゃんせ♪」
歌い終わるとアヤの目は大きく見開き、村人達と同じく、不敵な笑みを浮かべていた。
この時、私はようやく気が付いた。
私達が戻れない理由、それは彼女の歌っていた歌詞にあったことに。




