#67 通りゃんせ
アキト村から少し離れた森の中。
私達は焚き火を囲み、非常食のパンを頬張っていた。
「隊長、このままソウモリ村に行きますか?」
ヤマガはもぐもぐとパンを頬張りながら話をする。
「あぁ、イナが居なくなったとはいえ、村人達も私達を追っているはずだからね。一刻も早くこの村から離れるべきだ。」
三人は頷き、最後の一切れのパンを口へ放り込んだ。
「さぁ、もうひと踏ん張り!必ずここに居る全員でソウモリ村に行くよ!」
ホウの一言にヤマガとナオは「おー!」と声を上げた。
───知らない間に随分と成長していたんだな。全く、頼もしい限りだよ。…それにしても、やけに静かだな。
森を歩いて帰ってどれだけ経ったのだろうか。
月の位置はやや動いたように見える。
「…隊長…随分歩きましたよね。」
「…ホウ…もう無理。」
ナオとホウはその場に座り込んだ。
「何だ何だ!だらしないぞ!」
「まあまあ。少し休憩にしよう。随分村からは離れたし、追って来ていたとしてもそう近くにはいないだろう。」
私はヤマガを宥めながら、近くの木に腰掛けた。
───しかし、相当歩いた気がするが。アキト村からソウモリ村までそんなに距離があるのか?
「皆さん、ゆっくり休めましたか?」
「あぁ、大分休め……え?」
聞き覚えの無い声にヤマガは唖然とした。
驚き、振り返ると、そこには赤とベージュのローブを被った女性が立っていた。
その女性を見た途端、隊員達は戦闘態勢に入った。
私は隊員達に手を向け、攻撃をしないよう止めた。
「…急に無礼をすまない。すまないが名を名乗ってもらっても?」
「あらあらまあ。私こそご紹介が遅れて申し訳ないですわ。私はアキト村から他の村へ向かう為の道案内を担当しています、アヤと申します。アキト村の住人ではありますが、皆様の事を報告したりはしません。それが規則ですので。」
私や隊員達は警戒の念を解き、アヤの話を聞く体勢となった。
「この先に森で作られた洞窟があります。そこはソウモリ村とテイワ村に繋がっております。全ての道を必ず左へ曲がってください。万が一にも右に曲がってしまうとギーミャ村やサンケイ村へと行ってしまうので注意してください。」
「そうか。ありがとう。」
私達がアヤを横切ろうとしたその時、アヤは私の腕を強く掴んだ。
「通りゃんせ 通りゃんせ
ここはどこの 細道じゃ
天神さまの 細道じゃ
ちっと通して 下しゃんせ
御用のないもの 通しゃせぬ
この子の七つの お祝いに
お札を納めに まいります
行きはよいよい 帰りはこわい
こわいながらも
通りゃんせ 通りゃんせ」
アヤは私達を凝視しながら、不気味な笑みを浮かべてリズム良く口遊んでいた。
その不気味さに、私達は声も出なくなってしまった。
歌が終わると、アヤはゆっくりと手を離した。
最後にニコッと微笑み、アヤは私達の元から去って行った。
「…何だったんでしょう。」
ナオは身体を震わせ、私に話し掛ける。
「…何であっても怖すぎでしょ。」
そんなナオの言葉に思わずホウがすぐにツッコミを入れた。
「た、隊長さん!う、う、腕!」
ヤマガの焦った声で私はアヤに握られた腕の部分を見た。
そこには手形がついており、赤い痕が消えずにいた。
…いや、むしろ濃くなっていたのだ。
「なんだこれは…それにやけに腕が痛む…。」
私は左手で右腕を支えあ。謎の痛みに耐えながら、更に先へと足を進めた。
しばらくすると木で作られた洞窟が姿を現した。
「…森のトンネル?」
入口には【森のトンネル】と殴り書きで表記されていた。
周囲に警戒の目を向け、私達は歩みを進めた。




