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ベアーズロック-神々の晩餐-  作者: ゆる


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#60 旅立ち


隊長さんが居なくなって、二日が経過した。

私が目を覚ました時、隊長さんは既に姿を消していた。

後に村長さんが教えてくれた。それは、隊長さんが私達の仇に向かったという事だった。

私はすぐにでも追い掛けようとした。

しかし、村長さんに止められた。


「彼は覚悟を決めて向かったんじゃ。今すぐ行っても足手まといになるじゃろ。心配なのは分かるが、まずは回復を優先させなはれ。」


言っている事はもっともだと思うし、それ以外に正しい事ははっきり言って無い。

でも…それでも私は…。


「目覚ましてからずっと同じ顔してる。」

エトが私の顔を覗き込んできた。

「…顔を覗き込むのって趣味悪いと思う。」

私は顔を埋めるように椅子の上で膝を腕で丸く収めた。

「ハハッごめんごめん。でも飯くらい食べなよ。」

私はテーブルに置かれたパンやスープに目を向ける。

「…食欲無いのよ。」

「隊長なら大丈夫だよ。だってあの人、強いじゃん。」

エトは何気にイケ隊長の事をよく見ている。

「エトはさ、何でイケ隊長の前ではあんな挙動不審なの?私と話す時は全然普通じゃん。」

「尊敬してるからかな。覚えてる?ベアーズロックがナウチー村に来た時の事。新聞に出ていた人達だって歓喜して、そしたら戦闘部隊募集ってなってさ。気付いたらイケ隊長を目で追ってた。あの人に着いて行けば何か見えなかったものが見えるようになる気がしたんだよね。」

思っていた以上に深い話で私はやや冷や汗をかいた。

何故なら私の志望動機は、何か楽しそうだからだったからだ。

「尊敬しているなら、迎えに行きたいとは思わないの?」

「思うさ。力になりたい。でも、今の俺じゃ足手まといだ。」

エトは、村長と同じ考え方をしていた。

もしかすると私は、人よりも感情的で子供なのかもしれない。

そう考えると、私は少し虚しくなった。

「あと三日も休めば完治する。」

エトはカップの水を飲み干し、勢いよく立ち上がった。

「…あいつは俺達で絶対倒そうな。タイセイとリョウの仇は俺達で討つんだ。」

私は深く頷いた。

話を終えると、エトは部屋を出て行った。

先程まで此処を抜け出してやると思っていた事を思い出し、私は急激に恥ずかしくなった。

「…なんて幼稚だったのかしら。」

窓越しに光る月が雲の中から現れた。

全てを照らす月は、私の心までも綺麗にした。


そして、三日後の朝、私とエトは村を出た。

村長に別れを告げて、深い森の中へと入って行った。

「一先ず、奴のいた場所まで行ってみるか。」

「そうね。同じ所にいる可能性は極めて低いだろうけど。」

手掛かりが無い現状、今ある情報に縋り付くしかないのだ。

「ところで、お前イケ隊長の事好きなの?」

「すすすすすすすす好きって!?どどどどういう!?」

「…まあ、恋愛として。てか動揺しすぎ。」

「動揺なんてしてないわよッ!」

私は思い切りエトの背中を叩いた。

すると、エトは地面にめり込んだ。

「あ、ごめん。」

「…お前さ…怪力なんだから考えろって。」

今更だが、私達ナウチー村のホウジンゾクは必ず特殊な力を持っている。

例えば私は怪力を持っている。他のホウジンゾクの十倍までの力を出す事が出来る。

そして、エトは嗅覚が優れている。こうして道に迷わず歩み続けられるのも彼のお陰だ。私が鬼に攫われた時もエトを村へ帰らせたのはそう言った理由があったからだ。

ちなみにタイセイは速度強化、リョウは芳しい香りを放つ事が出来る。

「…リョウ、無事かしら。」

「これだけ待っていても帰って来なかったということはそういう事だろう。俺達はそういうのが当たり前の環境にいるんだ。変な期待は身も心も削るぞ。」

エトの言う通りだ。私達はいつ死んでもおかしくない。今この時だって、森の陰から私達を狙っているのかもしれないのだ。


その時だった。

目の前を歩いていたエトが姿を消した。


「…えっ……エト…?」


「あああああッ!!!離せッ!離せよッ!」

声がしたのは木の上部からだった。

木々の周辺を見渡し、何者かにエトが連れ去られていたのだ。

「エトッ!!!」

「ユイッ!お前は先に行けッ!」

彼は必死に声を上げた。

しかし、私にそんな選択は出来なかった。

私は何も言わず、全力で羽根を動かした。

立ち並ぶ木々を交わし、エト攫った何者かを追い掛けた。

徐々に近付くと、奴の正体が明らかになった。


【鬼】だった。


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