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ベアーズロック-神々の晩餐-  作者: ゆる


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#57 【第二部隊イケ班 テイワ村編】実力差


この村に来てから十日が経過した。

今日まで何も起きず、僕達は気楽な日々を過ごしていた。

調査の時間は周囲の森を捜索。何事もなければ各自が自由に過ごしている。

そんな中僕は、最近書いたメモを見返していた。そのメモにはベアーズロック戦闘部隊隊員達の性格や知る限りの情報が書かれている。

新生ベアーズロック戦闘部隊は、元ベアーズロックの隊員が六名いる。そして、新たな隊員が二十名。

新生ベアーズロック戦闘部隊は参加希望者を募った集団である。つまり右も左も分からない奴がほとんどという訳だ。

そんな状態の中、サマー軍団長はある提案をした。



・・・半年前。


「試験をしよう。」


現段階での体力や実力を確認し、結果次第で配属先が決まるというシステムを設けたのだ。


「私達が避難民だった時を思い出すわ。」

キリの言葉に全員が頷きで反応を見せた。

隊員候補生達が苦しんでいる姿は、過去の自分と重ねて見ていた。


「では、次に羽根をどれだけ扱えるか見せてもらう。各隊長によって円形に囲まれた中に入り、隙を見て抜け出してみろ。」

僕を含めた各隊長達は第一部隊から順に円形になるよう配置に着いた。

「くぅ〜懐かしいぃ!」

「あの時はこれをやる意味も分からなかったからな。」

キリとルイが避難民時代の過去を懐かしんでいると、ライラが間に入った。

「そろそろ試験が始まりますよ。」

「私はあの時シロ軍団長に反抗したんだっけ。」

ライラが止めに入った直後、今度はセンリが空を見上げていた。

「皆、気抜いてると抜かれちゃうよ?」

「「「「抜かれねぇわッ!」」」」


僕の言葉に全員が反論した。

…どうやら相性は抜群に良いらしい。

そして、試験は始まった。


「結果は後日宿舎前の掲示板に張り出しておくので確認しておくように。」

結局羽根の試験では、誰も僕達隊長から抜け出す事は出来なかった。

そして、サマー軍団長の言うように、翌日の朝には結果が張り出された。


一位 ヤマガ

二位 ホウ

三位 タイセイ

四位 リョウ

五位 ジャズ

六位 ミカナ

七位 キム

八位 カノン

九位 ミーナ

十位 ビーナ

十一位 ナオ

十二位 フォミ

十三位 オナット

十四位 シモ

十五位 シマヌ

十六位 エト

十七位 ユイ

十八位 フナノ

十九位 アンナ

二十位 ラテ


この順位は後に配属される戦闘部隊に影響する。

成績の良い者、可能性のある者は上位部隊に配属される事となる。

それは各隊員にも知らされている。


「何で三位の俺が二番隊配属なんだよッ!」

この頃からだ、タイセイの素行が悪くなったのは。

しかし、実力がある事も確かだ。二番隊に配属された本当の理由は、タイセイにチームをまとめて欲しいと思ったからだ。これは隊長会議で満場一致となった結果だった。

同時に二番隊隊長である僕の事も気に入らないのだろう。僕自身も何故二番隊隊長なのかは分からない。僕なんかがルイ達より強い訳が無いのに。




メモ帳を読んでいると、半年前の記憶が断片的に蘇った。

溜息を吐くと同時に、村の鐘が鳴り響いた。


カァンッカァンッカァンッカァンッ!


村の見張り番が何かの存在に気が付き、手動で鐘を何度も鳴らしているのだ。


「ベアだぁぁッ!ベアが現れたぞぉぉッ!!!」


僕は急いで装備を整え、窓から飛び出した。

見張り塔の男が僕の存在に気付き、ベアのいる方角へ指を向けた。

「あそこだッ!まだ身を隠していないッ!」

方向転換すると森の入口付近にベアはいた。

大きさは一メートル程だろうか、これまで見てきたベアに比べると然程の大きさではない。

ベアに向かって高速移動すると、左斜め下の視界にタイセイが現れたのだ。


「タイセイッ!ここは僕が引き受けるッ!下がるんだッ!」

「だからてめぇの命令は聞かねぇって言ってんだろぉぉッ!!!!!」

タイセイは目も合わせずに怒鳴った。

スピードのあるタイセイに追い付くにはどうやっても距離が足りなかった。

「迂闊に攻撃するなッ!変異種かもしれないんだぞッ!」

タイセイは無視を続け、速度を上げた。

そして、上空へと上がった後、急降下しながらベアへ刃を向けた。

「こんな小せえ雑魚にビビってるから気に入らねぇんだよッ!俺はこんな雑魚には負けねぇよッ!死ねやあぁぁぁッ!!!」


タイセイが刃を振り落とした瞬間、なんと刃が真っ二つに割れたのだ。それはまるで、金属や大きな石を斬ろうとしたように破壊された。

そして、ベアに目を向けた時、ベアは緑色の生物へと化し、背中には甲羅のようなものを背負っていた。


「なっ!?」

「タイセイッ!下がれッ!変異種だッ!」

タイセイに斬られそうになったベアは怒りの雄叫びを上げた。

それを間近で見たタイセイは身動きが取れなくなっていた。刃を両手に持ったまま震えていた。

「タイセイッ!頼むッ!言う事を聞いてくれッ!下がるんだッ!」

ベアが大きな口を開けた瞬間、タイセイはこちらへ手を伸ばしながら何かを呟いた。その瞳は涙ぐみ、今にも助けを求めている表情をしていた。

僕もすかさず手を伸ばした。


しかし、間に合わなかった。

一メートル級のベアは、捕食の瞬間に顔面が肥大したのだ。

目の前にいたのは胸部より下が残された、血だらけの死体だった。見ていなければタイセイとは分からない程に、それは無惨な姿であった。

ベアがタイセイを噛み砕く度、血飛沫が飛び散る。

「貴様あぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッッ!!!!!」

僕が斬り掛かった瞬間、そのベアはその場から姿を消した。

空を斬った刃を下に向けたまま、僕は周囲を見渡した。しかし、ベアの姿はなかった。


そして、ゆっくりと降下し、僕は残されたタイセイの死体の元へと向かった

鎖骨の辺りから噛み痕がはっきりと残っており、肋骨や心臓も半分だけ残されていた。

それを見た瞬間、嗚咽が襲った。

グロテスクで無惨な姿を見ただけでなく、一人の隊員の命も守れなかった不甲斐なさに吐気を催したのだ。


「…隊長のくせに誰も助けられないのかよ。」

僕は涙が止まらず、タイセイの死体に縋り付いた。


遅れてやって来たリョウ、ユイ、エトはゆっくりと近付きタイセイの死体に気が付いた。

「…タイセイ…なのか。」

「…嘘でしょ。」

「…隊長…一体何が。」

三人の問い掛けは、僕には聞こえなかった。

僕の涙が流れると、タイセイは身体から赤い涙を流していた。互いの涙は土へと落ち、どちらも黒く染まったのだった。


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