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ベアーズロック-神々の晩餐-  作者: ゆる


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#54 新章開幕


二〇一〇年 睦月中旬


ベアーズロック戦闘部隊とベアの戦争から三年の月日が経過した。

この三年間は何事も無く平和に過ごしていたのだが、丁度一年前に事件は起きた。

ホッカイ島のベアが再び暴れ始めているという噂を耳にしたのだが、今あの島には住民がいない。その為、誰も気にしてはいなかった。

しかし、三ヶ月程前から東北方面でベアの出現が相次いでいる。

ソウモリ村で一体、テイワ村で二体、アキト村で一体目撃されたそうだ。

そのベア達は森へ逃亡したのだが、村人達は猟銃を持ち念入りな捜索が行われた。


しかし、ベアは一体も見つからなかった。

諦めた村人達は怯えながら生活を続けているそうだが、いまだにそのベア達は現れていないとの事。


そこで元ベアーズロックの僕達は招集され、再び訓練に明け暮れた。約二年半のブランクは大きく、全員が苦悶の表情を浮かべた。

三ヶ月ハードスケジュールをこなした僕達は、当時の姿を取り戻した。

そして、数名で身体を仕上げるベアーズロックを見て、ナウチー村の住人二十名が手を挙げた。こうして、総員二十六名の新生ベアーズロック戦闘部隊が誕生したのだ。


「全員整列ッ!!」

「「「はっ!!!!!」」」

軍団長を正面に各部隊が一列五名で整列している。

「この度、ベアーズロック戦闘部隊を復活させる事になった。新軍団長のリトル・サマーだ。我々は新生ベアーズロック戦闘部隊として、東北地方で目撃情報のあるベアの討伐へと向かう。それではこれより、一番隊から五番隊までの隊長を発表する。」

軍団長は一枚の用紙を取り出した。

「まず一番隊隊長。一番隊隊長は、センリ!」

「はっ!」

センリは左から四番目の四列目にいた。人を掻き分け一番右の先頭へと足を運んだ。

「二番隊隊長、イケ!」

「は、はい!」

「三番隊隊長、ライラ!」

「はーい!」

「四番隊隊長、ルイ!」

「うっす!」

「五番隊隊長、キリ!」

「はいっ!」

それぞれが、センリのいる前へと足を運ぶ。そして、各自呼ばれた順に並んだ。

「以上が各部隊隊長だ。これから何番隊に所属するか名前を呼ぶ。呼ばれた者は隊長の後ろへと並んでいけ。」

一番隊から五番隊まで四名ずつ振り分けられた。

「一番隊!ナオ、ホウ、シマヌ、ヤマガ!」

「二番隊!タイセイ、リョウ、ユイ、エト!」

「三番隊!オナット、アンナ、ジャズ、ミカナ!」

「四番隊!ラテ、キム、カノン、フォミ!」

「五番隊!シモ、ミーナ、ビーナ、フナノ」

こうして、各部隊の配属が決まった。

「本日はこれで解散ッ!明日はオフで、明後日には東北地方へ向かう!充分身体を休め、準備に務めてくれ!」

「「「了解っ!」」」



そして、同日の夕暮れ時。

僕は小さな橋の上から川の流れを見ていた。

「どうした?」

後ろを振り返ると、そこにはサマー軍団長が立っていた。

「いえ…二番隊隊長、嬉しい半面不安も大きくあって。軍団長が二番隊になった時もこんな感じだったのかなって考えてました。」

「気持ち悪い奴だねぇ。まあ、私は特別だったからなぁ。ベアーズロック入って一年で二番隊隊長に抜擢されたからね。これ、軽い自慢だから!」

「その時から常人離れしてたんですね…てか、軍団長!それはいくつの時の話ですか!?」

サマー軍団長は、目を上に向け思い出そうとする仕草を見せた。

「確か…二十一だったかな?イケ達が避難民として来た二年前くらいだね。もう今は三十前半の叔母さん、悲しいもんですな。」

「もはや大先輩ですね。」

「誰がクソババアだッ!」

サマー軍団長は僕の頭を思い切り叩いた。そして、僕は橋から落ちた。川には顔面から突っ込み、腰から足だけが水から出ていた。

「なんでだぁ!誰がクソババアだッ!」


────言ってねぇよ。


僕は心の中で、サマー軍団長を何度も痛め付けた。


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